つまりはそう言うこと
(仁王夢)
それは私の人生の汚点でしかなく、その汚点は今でも続いている。
全く不可解なことに、私はなぜか仁王雅治という男とお付き合いをしている。
彼は、我が立海大付属中を代表するイケメンで、最早アイドル並みの扱いを受けるテニス部のレギュラーだ。
片や私はと言えば、勉強だけが取り得の、他人になど全く興味のない地味ながり勉女。
そんな彼と私が付き合うようになったきっかけは、彼、仁王雅治からの告白と言うのだから、まったく、これ以上不可解な事はない。
そして、その場の流れでうっかりいいよなんて言った私もそうとうおかしかったのだ。
別に付き合って初めて知った事ではないが、矢張り彼はそうとうタラシの様で、自分から告白した私と言う彼女がありながら、毎日別の女の子と肩を組んだり、キスをしたり、時にそれは性行為にまでおよび、ペテン師と詐欺師に並ぶヤリチンというあだ名も伊達ではない。
普通、彼女ならきっとここで焼き餅を焼いたり、嫉妬したり、いじけてみせたりと可愛い反応を見せるのだろうが、他人にとんと興味のない私に独占欲などあるはずもなく、そんな話しを聞かされた所で私の反応などたかが知れている。
おまけに大変困った事に、仁王は一体なんと言って彼女達と別れるのか知らないが、仁王にフられた女の子が私をビンタしにくるのだ。
そんな私にお構いなしに彼は色んな女の子の間を行ったり来たりと言う具合にふらふらしている。
しかし、結局最後にはやっぱり私が良いと言って、彼は甘えた様子で終始私にべったりなのだ。
以前、同じクラスの丸井が、仁王が可哀想だと言っていたが、それは逆だろう。
将来有名な大学に通い、収入の安定した職場に就きたい私にとって、ヤリチンと噂される彼との交際は、私の思い描く将来に誤差を生じかねないのだ。
おまけにフられた女の子からのビンタだってある。
つまり、仁王と交際しているという事実は、完璧を求める私の唯一の人生の汚点とも言ってもよく、丸井の可哀想という台詞は私に向けられるべき言葉だ。
そんなことを考えつつも、彼といまだに別れないのは、私が彼にほだされているからに違いない。
そうでなければ、いつまでもこんな関係を続けているはずがないのだ。