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久々に降りた島でサッチさんと一緒の昼食を終え、ぼんやりとしていると、近づいてくる不穏な気配を感じてどうしようかと思考を巡らせた。
逃げるとしたらどのルートがいいかと考えるも、買い物をしながらあちこち歩き回っていたため、今自分がどこにいるのかさっぱり分からないので効率よく逃げる方法は諦めた。
戦うにしても非戦闘員の私がサッチさんの足手まといになるのは火を見るより明らかだ。助けを呼びに行くにしても地理が分からないことにはどうにもならない。最悪サッチさんを抱えて飛べば何とかなるかなと考えていると、サッチさんが食事の代金をテーブルに置いて席を立った。
気配に気付いているのだろうが、特に急いだ様子もなかったため、私ものんびりと席を立つと突然お腹に圧迫感を感じた。
どうやら抱えられているようだと思っていると、頭上からサッチさんが店員さんに向かってご馳走さまと挨拶をしたので、私もそれにならい挨拶をしようとしたが、サッチさんが走り出したため更にお腹を圧迫され、カエルのような声しか出なかった。
バタバタと追いかけてくる数人の足音を背後に聞きながら、私は顔を青くさせていた。
当然のように私を抱えて走るサッチさんの腕が私のお腹を圧迫して、さっき食べたものが逆流してきそうな感覚に必死に耐えているのだ。
軽く体が浮き上がり、次に来るのはお腹への圧迫感。サッチさんが地面を蹴る度に小刻みに繰り返されるそれは、さぁ出せと言わんばかりだ。
そろそろ限界が近付いてきた頃にようやく地面に下ろされ、その場で大人しくしているように言われたので、素直に頷いておいた。
追いかけてきた人達を伸してくるというサッチさんを見送り、立っているのも少し辛かったためその場にうずくまった。
しばらくそうしていると気持ち悪さも少しは治まってきて、サッチさんの心配も出来るくらいには心の余裕ができてきた頃、バサバサと、鳥の羽ばたきとはちょっと違うが、それに近い音が近くで聞こえた。何でもありなこの世界だ。鳥かと思ったら、実はキメラみたいな珍しい生き物でしたなんてことがよくあるため、どんな生き物だろうかと興味が湧いて顔を上げると、目の前には変なサングラスをかけた男性の顔があった。
サングラス越しに見える目と見つめ合うこと数秒。男の人は私を抱え上げると、ニッコリと言うよりもニタリと言う表現がぴったり合いそうな笑顔を浮かべた。
「フッフッフ……。面白ぇガキだな。そんなナリをしてるくらいだ。どうせ行くあてがねぇんだろ?俺のところに来い」
"そんなナリ"と言うのは、マルコさんからお借りしているサイズの合わないシャツのことだろう。別に行くあてが無いわけではないし、サッチさんに待っているように言われているので、お断りしますと頭を下げれば男性は何を勘違いしたのか「そうかそうか」と嬉しそうに言うと、私を糸のようなもので自分の体にくくりつけてしまった。
視界が彼の着ているピンクの羽の上着で埋め尽くされ、私はそのもふもふに埋もれてしまった。恐らく一見すると私の姿など確認できないのではないのだうか。
上着の手触りが動物達と触れ合っているような心地にさせてしまうため、うっとりとなってしまう寸前のところでサッチさんの言い付けを思いだし、このもふもふから抜け出そうと手を突っぱねてみるが、私をくくりつけた糸はいったいどれだけ丈夫なのか、いくらやっても彼から離れることはてきなかった。
そうこうしているうちに拘束を解かれ、どさりと地面に尻餅をついて落ちた。
辺りを見回せば知らない人間達ばかりで、船に乗せられているらしいということを把握した。
大きな体を折り曲げ私の前に屈みこんで私の顔を覗きこんできたのは、私をここまで拐ってきた人物だ。
「そう言やぁ、お前名前はあンのか?俺はドンキホーテ・ドフラミンゴだ」
そう問われていつものように名前を告げれば「フッフッフ…。そうか。じゃあシロだな」と名前と全く関係のないあだ名をつけられた。
この世界に来た影響か、悪魔の実の影響か、白くなってしまっていた髪の毛からつけたあだ名なのだろう。それにしてもシロとはまるでイヌネコに付けるようなあだ名だ。