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たまたま立ち寄った島にいた少女シロは、船に連れて帰ってから 未だに一言も言葉を話さない。連れて行くと言ったときは礼儀正しく頭を下げてきたのだから、警戒をしているということはないだろう。
綺麗な服や宝石、豪華な食事にも興味を示さないシロは今自分の膝の上で大人しくしている。なぜこうも喋らないのかと初めてシロと出会ったときの事を思い出してみる。

初めてシロを見たときは何かの動物かと思った。人の目から隠れるようにしていた白い姿に、物珍しさから近づいてみれば、細い人の腕があり、それが動物ではなく人なのだと認識できた。
しばらく間近で観察していると、それが顔を上げ、日の光を揺らめかせながらこちらを見る緑の目と目が合った。
人でありながら、まるで人ではないような雰囲気をかもす少女の目は、穢れを知らない無垢そのもので、持ち上げてその白い髪を光に透かしてみると随分美しかった。
欲しい。このキレイなモノが欲しい。
そう思った。
「フッフッフ……。面白ぇガキだな。そんなナリをしてるくらいだ。どうせ行くあてがねぇんだろ?俺のところに来い」
見れば、この少女が着るには随分と大きなサイズの服を着せられていることから、ろくな扱いを受けていないことは明白だった。
俺のその言葉に少女は了承の意を表すように頭を下げてきた。
「そうかそうか」
その答えに満足してイトイトの実の能力で少女を自分の体にくくりつけ船まで連れて帰った。
船に着き少女を下ろし、そう言えば名前を聞いていなかったと思い問えば、無言でこちらを見つめてくるだけで一向に答える気配がない。
どうやら、回りに人が多いのに緊張して喋れないらしいと察して、後ろで若の質問に答えろ、だの答えないのは失礼だのと喚いている部下を制して黙らせる。
それでも喋る様子のないソイツに、答えないのならじゃあいっそ俺が名前をつけてやろうと、ソレに新たな名前をつけてやった。
「フッフッフ…。そうか。じゃあシロだな」
白い髪の毛に白いシャツを着ていたそいつにそれ以上ぴったりな名前があるはずがないと思い、俺がそう言えば、どうやら不満らしくシロの眉間に僅かにシワが寄るが、俺のモノになったのだし、名乗らないからには何と名前をつけようが俺の自由だ。

短くて呼びやすい"シロ"という名前を気に入っているため、今更呼び方を変えてやるつもりなどないが、もしかしたら、俺の付けた名前が気に入らなくて喋らないのだろうか。
試しに「シロ」と名前を呼んでみれば、素直に反応してこちらを見上げてくる目と視線が合う。
名前が気に入らないのなら無視をすればいいのに、こうして素直に反応するということは、別に俺が付けた名前が気に入らないわけではないらしい。
しかし、よくよく思い出してみれば、最初の出会い頭からシロは喋っていなかったように思う。
ここまで意固地に喋らない理由も見当たらないため、矢張これは喋れないと言うことなんだろう。
どんな声で話して、どんな風に話すのか気になっていたが、喋れないのなら諦めるしかない。
「若、シャボンティ諸島に着きました」
そう思ってシロとの会話を諦めたちょうどその時、以前から続けていたビジネスがどれくらい基軸に乗ってきているか確認するために向かっていた島に着いたようだ。
これから行く場所はいわゆる社会の裏側の世界だ。そんな場所ににシロを一緒に連れていくこともためらわれ、しばらくどうしようかと考える。
船に残して行くことも考えたが、まだ船の上での生活しかさせていないシロに色々と見せてみたいとも思う。
水の都と称されるほど美しく、観光地としても有名な島だ。人拐い、海賊、賞金稼ぎもいるが、それを狙う海軍もいるため治安は比較的いいほうなので、1人で島をうろうろさせるのも問題ないだろう。だが、離れがたいと思う程度には自分はシロを気に入っているし、珍しいナリをしたシロが人拐いに捕まらないとも限らない。
どうしようかとしばらく考えた結果、自分のモノだと分かりやすく主張させるための首輪をつけて、シャボンティを散歩させてみることにした。
そこそこ名の通った海賊であり、天竜人であるドンキホーテ・ドフラミンゴのモノに手を出してくるような馬鹿な輩はいないだろう。
奴隷に着けるようなモノではなく、自分のモノだと主張させるための首輪を着け、首からお金の入ったがま口をさげさせると、しばらくこの島の散策をしてこいと言って船から送り出した。



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