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ようやく仕事が片付きシロを探しに出ればどういうわけかシロの姿が見当たらない。
辺りを歩いて探し回るが見当たらず、部下を使って探しに行かせるがそれでも見つからない。
髪の白いガキなんてそうそういるはずがないし、首輪をつけた姿はそれなりに目立つはずだ。なのにその目撃情報は途中からパタリと途絶えてしまっている。
「手前ェらちゃんと探したんだろうな!」
シロが見付からないことにイライラしながら部下に八つ当たりぎみにそう問えば、怯えた表情でこちらを見上げてくる目と視線が合った。
「……はっはい!未だシロ様の行方は分からず、シャボンティ諸島周辺の島をアジトにしている人拐い屋や奴隷商までしらみ潰しに当たっているのですが、心当たりのあるモノはな…く………。ひっ…!他を当たってきます!」
俺のイラつきが伝わったらしく、そいつは慌てた様子で足をもつれさせながら俺から離れて行った。
どさりとイスの背もたれに体重を預けると、横から香りのいい紅茶が差し出された。
「落ち着いてください若。シロはきっと見つかりますよ」
「ああ、そうだな」
そうは言うもののやはり心配で落ち着かない。もし、他の天竜人に見つかった場合物珍しさから問答無用で奴隷にされてしまうだろうし、人拐い屋や奴隷商に捕まってしまっている場合もやはりろくな扱いは受けないだろう。
海賊に捕まっている場合は最悪としか言いようがない。粗野で礼儀の1つもなっていない無法者の集まりである海賊たちの事だ。シロに乱暴を働いているかもしれないし、その珍しいナリから慰みものにしていることだって考えられる。
心配事が増えて気持ちばかりが急くが、シロを見つけたというような知らせは入らず、それが益々イライラを募らせる。
「一体シロはどこに行っちまったんだ?」
誰に言うでもなく呟かれた言葉は人のいなくなった船内に消えていった。気持ちを落ち着かせるために横にあるテーブルに置かれた紅茶をごくりと飲み干し、椅子から立ち上がり甲板に出ると、上から何かがぼたりと落ちてきた。
上を見上げると鳥が1羽遠くに飛んで行くところで、下を見れば何やら見覚えのあるものが転がっていた。
屈んでそれを持ち上げてみれば、それは俺がシロの首に下げたがま口の財布で、中の金はあまり使われなかったらしく重さはさほど変わっていなかった。
シロが戻ってきたのかとあたりを見回すがその姿は見つからず、代わりに目の前に現れたのは小さな鳥だった。
その鳥は俺の姿を確認すると首をくいっと傾げ、逃げるでもなく一歩俺の方に近づくと嘴にくわえていた紙を下に置くと飛んでいってしまった。
一体なんだったのだろうかと思いつつ鳥が置いていった紙を拾い上げると、それはシャボンティ諸島の土産物屋のレシートで、裏返してみればそこには震えた文字で『面倒 ありがとう 探さないで』と書かれていた。
何かの暗号かと思って首を傾げたが、どうやらスペースが足りなくなったらしく、下の方に小さく『シロ』と書かれているのを見つけて、ようやくこれがシロからの手紙だと気付いた。
字が細かく震えていることから、これが無理やり書かされたものであることは明白だ。しかし、シロを拐ったと思われる人物から何も要求が無いのは一体どういうことだ。
俺を挑発するためにシロを拐ったどこかの怖いもの知らずの馬鹿が、自分の力と手腕を見せつけるために怯えて泣くシロに無理やりこれを書かせたのだろうか?
その考えにいたって、思わず手に持っていた紙を握り潰してしまった。
「フッフッフッ……。この俺からシロを奪うなんざァそいつは余程死にてェらしいな。いいぜ、必ず見つけ出してこの世に生まれた事を後悔するほど痛め付けてやる!」
待ってろよシロ。こんな酷い奴のところから絶対に助けてやるからな。


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