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目が覚めたら、真っ暗な場所にいた。
丸まって寝ていたためこわばった体を起こし、辺りに注意を向ければ波の音が聞こえる。パパの気配を探ると上のほうからマルコ隊長やジョズやサッチ、ビスタ隊長達の気配も一緒に感じとる事ができたので、どうやら一応は白ひげ海賊団の船に乗っているらしい。
マルコ隊長に傷をつけてしまったあたりから気分が悪くなり、横になろうと船内に入ったのは覚えているのだが、そこから先の記憶がない。
ためしに腕を前に伸ばしてみると、すぐに壁に触れることが出来た。ペタペタと触って確認してみると、小さな箱の中にいるようだ。なぜこんなところにいるのかわからないが、朦朧とした意識の中でたぶんここが落ち着く場所であると判断したのだろう。
しかし、今はもうあのときのような気分の悪さはない。変わりに激しい空腹があるだけで、ここから出てご飯を食べたい。
箱の中という事以外なにもわからないので、額から麒麟の角を生やすと、その角がわずかに発光し辺りをぼんやりと照らした。
どうやら箱ではなくなにかを一時保管する場所か何かのようで、目の前の壁かと思った物はここの扉らしく、引き戸の扉をスライドさせる窪みがあった。
(王よお目覚めになりましたか?ご気分が優れないとの事だったのでここにお連れしたのですが、お加減はもうよろしいのですか?)
扉を開けようとして手をのばせば声をかけられ、その声に辺りを見回せば、小さなネズミが私を見上げていた。
(ご心配をおかけしました。私ならもう大丈夫です)
私がそう答えれば、そのネズミは嬉しそうに良かったと言った。
(人のいるところまでご案内したしますので、私についてきてください)
恐らく自分で開けたのだろう小さな穴の出入り口からネズミは出ていったので、私も扉を開けその場所から這い出てネズミの後についていくことにした。
白ひげの船は大きく広いので、まだ見ていないところがいくつもある。こんなところもあったのかとキョロキョロし階段に差し掛かった頃、ネズミに声をかけられた。
(ここから先は窓からの明かりもありますし、人も行き交いしております。王が王であると人に知れたらどんな目に合わせられるか分かったものではないので、その額のものをしまわれるのがよろしいかと)
白ひげ海賊団がそんな酷い事をするとは思えなかったが、私が麒麟だとばれるのはどうやら不味いようなので、大人しく額の角をしまった。
ネズミにここまで連れてきてくれたお礼を言い、階段の上にある扉の隙間から漏れる明かりをたよりに階段を上り扉を開けた。
今まで暗い場所にいたため、眩しさに目がくらみ、数度まばたきを繰り返し明るさに目を慣れさせた。
なぜか船内には人の気配がまばらで、不思議に思い探ってみれば、ほとんどのクルー達が甲板に集まっていて、その中に知っているような知らないような気がする気配が船の甲板にあった。
エースの気配ではないよなと思いつつ食堂に行けば、やはり人はいなかった。冷蔵庫を開けてみたがどれなら食べてよくてどれなら食べては駄目なのかよくわからず、結局甲板にいるサッチの元へ行き食事を用意してもらうことにした。
甲板に出てみると、パパが椅子に座って日光浴をしていて、他のクルーの何人かが甲板に横になりお昼寝タイムに突入していた。気持ち良さそうだなと思いつつ、最早限界を超えそうな空きっ腹を抱えサッチの元へ行けば、驚いた顔をされた。
「え!苗字ちゃん?!今までどこにいたんだよ!みんな心配してたんだからな。て言うか、今の大丈夫なの?」
一体何の事か分からず首をかしげれば、腹は
空いてないかと聞かれ、喋るのも億劫で頷けば同時にお腹が大きな音をたてて鳴った。
「ハハ、そうか。おい……って、あちゃー……」
サッチはそう言って頭をかくと、もう少し待てるかと聞いてきたので、少しくらいならと思い頷いたのだが、それを否定するかのようにまたお腹が大きな音で鳴った。
少しも待てないとでも言うかのように私のお腹はグウグウとなり続け、その音は静かな甲板に響き渡った。
「なんだそのガキは。随分と腹を空かせてるみたいだな」
その声に振り向けば、流石に私でも知っている人物がこちらを興味深そうに見ていた。
「俺の覇気を受けても気を失わなかったのか?面白ェガキだな」
そう言って私に近づいて来たのはもう既に片腕を失っている赤髪のシャンクスだった。