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しばらくの間はルルさんとお喋りをしていたが、だんだんと話す内容もなくなり無言になった。青い空と青い海にも見飽きて来てうつらうつらとしてきた頃、島に着いたと言われたのではっと我にかえる。
私素っ裸だ!
そう慌てたのもつかの間、そこはどうやら無人島のようで、もっと正しく言うならば、草木の生い茂ったその島は巨大な亀の背中だった。
名前はトーマスと言うらしい。
果たしてトーマスさんを”島“と呼んでいいのか疑問だが、ルルさんが人のいる島は私にとって危ないということでこの獣ばかりの島に連れてきてくれたらしい。
ここなら何かあれば獣達が私を守ってくれるし、そもそも生き物のトーマスさんにはログがないし移動しているので滅多なことでは人がやって来こないらしい。
どうやら私の身の安全は確保されるらしいが、無人島と言うことは私はこれからサバイバル生活をおくらなければならないらしい。
踏んだり蹴ったりの前途多難である。
『お久しぶりねトーマス』
そんな私の考えなど分かるわけもなく、ルルさんがトーマスさんに明るく話しかけていた。
岩かと思っていた部分がゆっくりと動き、パチリと瞬きをしたのをみて、どうやらこれは岩ではなくトーマスさんの頭であるらしいと理解した。
トーマスさんはその大きな目でルルさんと私確認すると、嬉しそうに目を細め。
『…………ルールーかー……久ーしーぶりーだーねー』
『ふふ、相変わらず元気そうね。
私達の王を連れてきたの。貴方の背中で生活してもらおうと思うのだけどいいかしら?』
そこでトーマスさんが私をちらりと見る。
『今ー度ーの王ーはー随分ーとーちいーさいーねぇー』
『あ、よろしくお願いします!名前苗字です!』
これからトーマスさんの背中でお世話になるのなら失礼があってはいけないと思い、なるべく印象が悪くならないように慌ててトーマスさんに頭を下げた。すると何がおかしかったのかトーマスさんが体を揺らして笑った。
『新ーしーいー王ーはー可愛ーいーねー。うんー、いいーよー』
『そうでしょう?でも、獸の姿はそれはもう優美で雄大で、私達の王にふさわしく堂々と威厳に満ちた姿でとても素晴らしいのよ』
突然ルルさんにそんな風に誉められ、どう反応すればいいのか分からず戸惑ってしまう。
そもそも私は、自分が動物の姿になったところをきちんと見たわけではないので、動物になった自分がどんな姿をしているのかよく分からないのだ。
神獸の麒麟と言うくらいだから、おそらくビールのラベルになっているようなあんな感じの姿なのだろうと推測するが、それが果たして優美と言えるかのか私にはわからないので、ルルさん達のような動物が持つ独自の感覚なんだろうなと思うことにした。
『それーはー。ボクーもーみーてーみたーいーねー』
トーマスさんに期待の目を向けられたが、残念ながら人の姿に戻れたのも偶然に近い私に、自分の意思でまたあの姿になるなんて不可能に近い。
『す、すみません。ついさっき悪魔の実を食べたばかりで、能力の使い方とか今一よく分からないんです』
『大ー丈ー夫ーボクーがー教ーえーるーからー』
『トーマスはとても長く生きているから博識なのよ。前獸の王にも何度か会ったこともあるの。だから能力の使い方や、ここでの生活の方法はトーマスに教えてもらうといいわ』
ルルさんの言葉に成る程と1人心の中で手を打つ。背中の甲羅にここまでの草木を生やせる程生きているわけだから、相当の年数を生きてきたに違いない。そりゃあ博識にもなる。
なんだか心強くなって、この世界でも何とかやっていけるかもしれないと安堵した私は改めてトーマスさんに挨拶をした。
こちらこそよろしくと返したトーマスさんの背中に乗ると、この世界での私の生活がスタートした。



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