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この世界に来てから随分と日が経った。
最初は今日で何日目とか律儀に数えていたが、途中から面倒になってやめたので、私がこの世界に来てどのくらい経ったのか正確日数は分からない。そのため、随分となんて曖昧な表現になってしまうのは仕方ないだろう。
冬島に近づけば寒くなり、春島に近づけば暖かく、夏島なら暑く、秋島なら少し涼しくといった具合で、四季もへったくれもないため、そろそろ1年経つな、なんていう憶測すら難しいのだ。
ついでに言えば、私は相変わらず素っ裸である。
なぜかと言えば、まず身一つこの世界に来た私はこの世界の金を持っていない。つまりは当然、服を買い求める事もできないのである。
それではと、ときどき漂っている船の帆を身に纏うことも考えたが、どこかしら破れていたり、身に付けるのも躊躇われるほど汚れているものがほとんどなのである。
そりゃ、最初こそ恥ずかしさで身を隠す方法を模索したが、葉っぱで服を作れるほど器用な手先も技術も持ち合わせていなかったので、人がいないという状況に甘んじて羞恥心を捨てた。
冬島に近づいて来て寒くなれば住んでいる動物達が回りに集まって暖をとらせてくれるので、寒さもとくに問題ではない。
幸か不幸かこの世界に来てから、船も人にも遭遇したことがなかったので、服の必要性を感じなくなったのだ。
と言うことで、今では立派な裸族である。
サバイバル生活は思ったより苦ではなく、仁の象徴である麒麟の特性なのか、木の実や果物しか体が受け付けなくなってしまっていた。
1度魚を食べたら、激しい後悔と気持ち悪さで何日も食べ物が喉を通らなかった。足元の植物や虫を踏むことを恐れるほど、殺生を嫌う動物と言われているだけのことはあると妙に関心した。
果物や木の実に関しては年中あるわけではないのだが、そこは問題ない。
トーマスさんや他の動物達と思念での会話をするようになってから、言葉を発しなくなった私は、このままでは声がでなくなるのでは、という不安から声を出す練習に歌を歌う事にした。
その時に近くにあった植物が、にょきにょきと成長して実をつける程までに大きくなった。
歌うたびに植物が生えて成長するような事になっては困るので、慌てて能力の制御方法をトーマスさんから教えてもらった。
この能力のおかげで、私は未だに飢え知らずである。
ちなみにさっきの”思念で会話をする“という技術はトーマスさんの背に住まわせてもらってから真っ先に覚えさせられた。
なにせトーマスさんが喋ると、あの間延びしたしゃべり方になるため、いくら日常の短い単語程度の会話なら問題ないといっても限度がある。
ここでの生活方法や、能力の説明をするにあたって、1つの事を説明するのに何時間もかけて伝えるという方法は非常に効率が悪かったのだ。
そうして能力の説明、コントロール方法のレクチャーを受けながら、悠々自適な全裸ライフをおくっていると、ふとあることを思い出す。
そう言えばここ、ワンピースの世界だった。
そんなことを忘れてしまうほど、人の世界との交流を断っていた私は少し焦った。
今は原作でどの辺りなんだろか。原作でエースが死んでしまう場面があったが、あれはもう終わったのだろうか。
コンビニでたまたま立ち読みした号でエースが死ぬ場面があって、すごく混乱した覚えがある。
いくらかじる程度にしか知らない漫画の世界でも、やっぱり好きなキャラクターはいるわけで、私はそれがエースなのだ。何とかして助けたいと思うのは当然だろう。
私は慌てて思念で会話をする技術と一緒に身につけた見聞色の覇気というやつでエースの気配を探る。
世界の裏側にいる虫の声を聞くことができる私にとって、人一人を探すのなんて簡単な事だ。
しばらく探ってようやく見つけた声は随分と小さいモノで、紙面上ではあるが、私の知っているエースとは思えなかった。
え!まさかもう既に死にかけとか?
私は急いで、トーマスさんに行ってきますと伝え、声のする方へ急いで駆けた。
彼のもとに行って、自分に何か出来るとは思わないが、それでもエースの側に行かなければと思った。