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宴も最高潮に盛り上がり、そういえばと苗字の姿を探すと、苗字は賑やかな場所から少し離れた所で、ジュースの入ったコップを片手に他のクルーを眺めて楽しそうにニコニコしていた。
「苗字!こっちに来いよ」
赤髪に呼ばれ不思議そうにしながらも素直に赤髪の元へ歩き出した苗字は、シャンクスの前でピタリと動きを止め、くるりと方向転換をすると一緒に飲んでいた俺とオヤジの方に来て腰を下ろした。
「……お?なんだ?もしかして警戒されてんのか?おかしいな、自分で言うのも何だが、女子供には好かれる男前だと思ってたんだがな」
「……はっ。自分でいってりゃ世話がねぇよい」
赤髪はずいっと体を倒し前のめりの状態で苗字をしげしげと眺めた。
「しかし面白いな。髪の色もそうだが、俺の覇気を食らってもけろりとしてやがるんだもんな。あ、これ食うか?美味いぞ」
「苗字、お前ェ"覇気"ってェのを知ってるか?」
苗字は赤髪から差し出された果物を受け取り、それを一口食べて少し考える素振りを見せたあとゆっくりと口を開き、オヤジの質問に答えた。
「覇気って、けんぶんしょくの覇気のことですか?」
「お、何だ覇気を知ってンのかよい」
苗字はこくりと頷き手に持っていたジュースを飲んだ。
「じゃあ、見聞色の覇気以外にも武装色と覇王色の覇気があるってのは?」
苗字は赤髪のその質問に頭をふると「しらないです」と答えた。
「ちょうどいいし、面白ェから覇気を教えてやるよ」
シャンクスはそう言うと覇気について説明し始めた。
「見聞色はもう知ってるみてぇだから説明はいらねぇな。武装色は体に纏わせて防御に使ったり攻撃に使ったりすることができる覇気だ。覇王色の覇気が相手を圧倒する覇気で、これを纏う事ができる人物は王になる資質を持っていると言われている。これは生まれ持っての才能みたいなもんで鍛えたりもできねぇし、修行で手に入れることもできないもんだ。まあ、色々言ってもわかんねぇだろうから、ものは試しだ。ちょっとまずは見聞色の覇気を見せてみろよ」
その言葉に反応してか苗字は立ち上がるが、その様子がどうもおかしい。注意して見てみると、顔は僅かに赤みを帯び、足がおぼつかないのかふらふらとしている。
「……フフ」
まさかと思い苗字が手に持っていたコップを奪い中の液体を口に含んでみれば、ジュースかと思っていたそれはアルコールだった。
「……誰だよい。苗字に酒を渡したやつは」
苗字を部屋で寝かそうと立ち上がりかけたところで、苗字がニコニコしながらぴんっと手を上げた。
「はいっ!ぱぱ、苗字うたいます!」
「なんだ苗字は随分と機嫌がいいみてェじゃねぇか。ちょうどいい、今夜は宴だ、何か楽しくなる歌を歌ってみろ」
どうやらオヤジも酔っているらしく、面白そうにそう言うと、赤髪もそれに同調して「良いぞ」といいだした。
「いますごぐふわふわしてたのしいきぶんなので、せかいがきらきらするうたをうたいらいとおもいますれす」
いよいよ呂律がまわらなくなってきた苗字に、そりゃ酔ってるせいだという俺の心をよそに苗字は歌いだした。
初めは鼻歌のような小さな声で歌っていたが、次第に声は大きくなり、船は苗字の歌声で包まれていった。