22

22

起きたら目の前に赤髪のシャンクスの寝顔があることになぜであろうかと首をかしげた。
赤髪のシャンクスが自分の船に戻らずに、白ひげ海賊団の船で1泊していることもそうだが、なぜ私は赤髪のシャンクスと仲良く眠っていたのか。
理由がさっぱり分からず、とりあえず昨日の事を思い出そうとしてみるが、途中から記憶がない。なぜだと思いながらもう一度順番に昨日の事を思い出してみる。
まず、サッチにご飯をもらい、ようやくお腹の虫も収まりぼんやりしていると、甲板が賑やかになり宴がはじまったのだとわかった。
食堂の窓から少し覗いてみれば、みんな楽しそうだったので、雰囲気だけでも共有しようと甲板に出れば、既にべろべろに酔ったクルー達からどんどん食えよと色々なご飯を勧められた。だが、あいにくともう既にお腹がいっぱいだったのでそれを断れば、じゃあ、とジュースの入ったコップを渡され、それを飲んでみるとすごく美味しくておかわりをもらった所までは覚えている。
しかし、そこから先の記憶がない。
いくら思い出そうとも何も思い出せない。
もしかしたらジュースかと思っていたあれはお酒だったのかも知れない。
色々と最悪の可能性が頭をよぎるが、とりあえず、昨日の夜のお酒が残っているらしく、酒臭い息を私にふきかけてすやすや眠っている赤髪のシャンクスを押し退け、ベッドから這い出て洗顔と歯ブラシを終え、お腹が空いたので食堂に向かうため部屋から出た。
ちなみにこの間に赤髪のシャンクスが目覚める気配はなく、女の人と幸せな時間を過ごしている夢でもみているらしく、緩みきった顔で腕を上に上げて手をワキワキさせていた。
途中何人かのクルーにすれ違ったのだが、べろべろに酔った飲み会の後の朝とは思えないほど爽やかに挨拶をされて少し驚いた。
みんなお酒に強いらしい。
白ひげ海賊団のクルーの顔を全員把握している訳ではないが、見慣れない顔があちらこちらにあることに、新しく家族が増えたのかと考えながら食堂に向かっているとハルタに遭遇した。
「おはよう」
「おはようございます」
「これから食堂に行くんだろ?」
「はい」
「俺もこれから食堂に向かうところだから、一緒に行くか」
そう言って差し出された手を握り一緒に歩いているとハルタが「そういえば」と口を開いた。
「苗字って歌うの上手いんだな」
ハルタから発せられた"歌"という単語で最悪の可能性が私の頭をよぎり、あ、私お酒飲んだなと悟った。
もともとお酒に弱い体質で、飲み会などのお酒の席ではなるべく飲まないようにしているのだが、それでも飲みすぎてしまう時だってある。そんなときはだいたいその時の記憶がなく、職場の同僚や上司、友人からあのときは凄かったね。というお言葉をいただいたのは1度や2度ではない。
そして、ハルタは私が歌ったと言った。船の甲板を植物だらけにしたかもしれない。
私はピタリと足を止め、甲板に向かって歩きだそうとするが、ハルタに手を捕まれているためそれは阻止され、「どうした?食堂に行くんならこっちだろ」と言われ食堂までつれてこられてしまった。
食堂に着けばなぜかサッチの姿が見当たらず、サッチ以外の4番隊クルーがキッチンで世話しなく動いていた。
サッチは寝坊かな?と思い気配を探れば甲板にいた。酔いつぶれてそのまま甲板で朝を迎えているのかも知れない。
ハルタがお皿に盛ってくれたコーンフレークを食べていると、廊下が騒がしくなり、骨付き食肉を片手にもった人とドレッドヘアの人と煙草をくわえた細身の男の人が食堂に入ってきた。
細身の人とドレッドヘアの人はともかく、骨付き肉の人は凄く見覚えがあった。
多分赤髪のシャンクスの船に乗ってた人だよな、と思いつつ食事を再開すれば、その人たちが真っ直ぐこちらに向かって歩いてきた。
「食事のところ悪いな。うちのお頭はどうした?」
「……多分まだ部屋で寝てます」
部屋を出る前に手をワキワキさせていた姿を思い出しながら答えれば、起こしてきてほしいと言われた。
なぜ自分達で行かないのかと疑問に思ったが、一応敵の船だしあまりうろうろするわけにはいかないのかも知れない。
「ご飯食べ終わってからで良いですか?」
「ああ、構わないぜ。どうせ海があんな状態じゃあ、しばらくは出航もできないだろうしな」
あんな状態とは一体どんな状態なのかと思って食堂の窓から海を見てみたが、空は綺麗に晴れていて波も穏やかだ。クジラが吹き出した潮に虹がかかり綺麗だなとぼんやり考えた。
そのまま食事を続けているとまた廊下の方が騒がしくなり、勢いよく食堂の扉が開け放たれた。
「苗字はいるか!」
そう言って扉を開け放ったのは、食事が終わってから呼びに行こうと思っていた赤髪のシャンクスで、彼は私の姿を見つけると嬉しそうに近づくと、私の隣の席に腰をおろした。


「何で起こしてくれなかったんだよ。昨日はあんなに仲良く歌って騒いだ仲じゃないか」
そんなに私は赤髪のシャンクスと仲良く騒いでいたのかと思いながら、再度昨日のことを思い出そうとしてみたがやはり何も思い出せなかった。
「それで、物は試しで言ってみるんだが、俺の仲間にならないか?」
妙に親しげな様子から、よっぽど意気投合してたんだろうなと思っていると、突然赤髪のシャンクスからそんなことを言われて思わず食事の手が止まった。
静まり返った食堂に、私がコーンフレークを咀嚼する音が響く。
確か原作で、赤髪のシャンクスはルフィをまだ子供だからと一緒に船に乗ることを断っていたはずなのに、そのルフィとさほど年齢の変わらない私を仲間に誘うとは一体何を考えているのだろう?そもそも私は白ひげ海賊団のクルーだ。その私を堂々と他のクルーもいる前で誘うとは、よっぽど自分に自信があるんだろう。
「突然ウチのお頭が悪いな。気の迷いだと思って流してくれ」
くわえ煙草の人の言葉に、わかったと返事をし、食べ終わり空いた食器をキッチンまで持っていくとデザートだと言って、ボウルに盛った苺をくれた。常々思う事だが、白ひげ海賊団の人達は私を甘やかしすぎだと思う。
「ありがとうございます」
お礼を言いボウルを受けとると、後ろからやって来たハルタに「良かったな」と頭を撫でられた。
時計をふと見れば掃除や洗濯をするにもまだ少し早いようだ。天気も良いし、パパやマルコ隊長達もまだ甲板にいるようなので、皆でこの苺を食べようと思い付き甲板に向かう事にした。
「ここで食べないのか?」
「パパ達と食べます」
ハルタの問いに答えれば、赤髪のシャンクスに「どこにいるのか分かってんのか?」と聞かれた。
「……甲板にいます」
私がそう答えれば、赤髪のシャンクスは面白そうな表情になり、「見聞色の覇気を使って分かったのか?」と問われた。
それ以外にどうやって正確に居場所を把握するというのだろうか?なぜそんなことを聞くのか分からないが、そうだと頷けば、「やっぱり仲間に欲しいな」とぼそりと呟いた後に「俺も一緒に行く」と言いだした。
パパ達と一緒に苺を食べたいのだろうか?私が思っているよりもパパ達と仲が良いらしい赤髪のシャンクス達と甲板に出れば、振り返ったマルコ隊長が惑った表情で私をみた。
「……なっ苗字!……何で甲板に出てきてんだよい。危ないだろ!」
そう言って私にかけよってくるマルコ隊長の背後で恐竜のような顔をした海王類を見つけ、目が合った。
『我等の王がお目覚めであるぞ!』
その海王類がそう言うと、船の周りの海からざばざばと水しぶきを上げて他の海王類が現れた。
そこで、煙草をくわえた人が言っていた事が頭に甦った。確かにこれでは危なくて船は出せない。
(昨晩は素晴らしい歌声を聴かせていただきありがとうございます)
そう言いながら近付いてくる海王類から私を背に庇うように、マルコ隊長とサッチが間に割り込んできた。
「苗字、危ねェから下がってろよい 」
ニコニコと嬉しそうに近付いてくる海王類からはそんな危なさそうな雰囲気は感じられず、マルコ隊長の服の裾を引いて大丈夫だと伝えれば、「ああ、そうだ。そのまま隠れていろよい」と言われ、声を出していなかったことに気付きあわててマルコ隊長の名前を呼んだ。


- 22 -
*前次#
ページ:
うぇるかむ