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久々に船を襲ってきた敵はどうやら能力者に対しての戦い方を心得ているらしく、用意周到にも海楼石の手錠を用意していた。
俺やジョズだけでなくオヤジの手錠まで用意していたことから、ずいぶん前から俺達は狙われていたようだ。
船を襲った奴等の会話の端々に"白い髪の女の子"という単語が聞こえてきて、狙いは苗字かと理解した。
「……なんだこいつら。人さらいかよい」
「人さらい?人聞きの悪いことを言ってもらっちゃ困る。俺達は若様のモンを返してもらいに来ただけだ」
俺の呟きに答えたそいつは俺を蹴りあげ、力が入らず床に転がった俺の上にどかりと座ると、手に持っていた短刀を首に当てた。
「シロさんはどこにいる?」
「……はっ……!…"シロさん"?誰だよいそいつは。うちの家族にそんな名前の奴はいねェよい。まあ、いたとしても手前ェらにはおしえねぇけどな」
一体どういう経緯で苗字のことを知ったのかわからないが、苗字がまた妙な趣味のやからの所に行くことだけは防がなければならない。
海楼石で力を封じられて満足に動かせない体に内心舌打ちしたいのをおさえてそう答えれば、首に当てられた短刀がわずかに首に食い込んだ。
「いない?よくもそんな白々しいことが言えたもんだな。まあ、いい。シロさんがここにいるのは調べがついてるんだ。アンタ等を倒した後で船を調べればわかるだろうさ」
そう言ったそいつは、短刀を首から離し、大きく振りかぶった。
「撤収!撤収だ!」
その声にそいつの動きがピタリと止まり、声のした方に一瞬視線を移動させるとまたこちらを見た。
「なんだ。やっぱりいたじゃねぇか」
ニヤリと笑ってそう言ったそいつの言葉に声のした方を見れば、部屋に隠れているように言った筈の苗字が走る男に抱えられていた。よく見れば僅かに顔色が悪い。もしかしたら苗字を抱えている男に何か酷いことをされたのかもしれない。
「……くそ!」
サッチが苗字の名前を呼ぶ声が聞こえた。力の入らない体を無理やり動かし上に乗ったままのそいつをどかし起き上がると、一瞬苗字と目が合った。
「待ってろ!今助けに行く!」
俺の気持ちを代弁するかのようにそう叫んだハルタが苗字に駆け寄ろうとするが、間に割って入る奴等が邪魔してなかなか近づけない。
当の俺はと言えば、またそいつに捕まり地面を這いつくばるはめになっていた。いざというときにこんな様では能力者なんて最早足手まといでしかない。
そうこうしているうちに、苗字を抱えた奴が船の縁にたどり着き、船の渡に足をかけたとき、海から大量の水しぶきをあげながらモビーよりも更に大きい姿の海王類が現れた。
冷静に海王類が船を見下ろす姿を見て、海王類と話が出来るらしい苗字が助けを読んだのだろうと思った。
これで苗字が拐われることはなくなったと思っていると、、苗字を抱えていた男が海王類に驚いた拍子に足を滑らせて、その勢いで抱えていた苗字を放り投げた。
抵抗も出来ずに海に落下する苗字を海王類はぱくりと口の中に入れると、海に潜ってしまった。
「……は?」
「……嘘……だろ?」
驚きで動きが止まった男を押し退け、同じように動きが止まっているビスタに走り寄った。
「ビスタ!手錠を切れ!」
「承知!」
ゴトリと音をたてて落ちた手錠もそのままに、急いで不死鳥の姿になると、もしかしたら船での戦いが終わるまで海王類が苗字を口の中にかくまっているのかも知れないと思い、船の上を旋回するが、それらしい姿の影を見つけることはできなかった。