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島に引きこもってばかりいたので、身体能力を試す機会もなかったが、私のいた海から彼のいるはずの島まで結構距離があったはずなのだが、流石は1日に千里かけると言われている神獣だけあって、ほんの数時間で彼のいる島に着いてしまった。
獣の姿でも人の姿で全裸でも、そのどちらの姿で彼に会っても、彼をびっくりさせてしまうかも知れないと思い、途中で遭遇した海賊船に干してあったシーツをお借りした。
勿論後で返すつもりでいるので、書き置きも残しておいてある。
エースの気配のする島が見えて来た時点で、目立たないようにシーツを被ろうとしたら、獣の姿だと大きすぎてシーツで体を覆えなかった。
シーツにしては結構大きめなサイズのものを選んだ筈なんだけどな、と思いつつ人の姿に戻り、シーツを羽織って体に巻き付けた。人に見つかりにくそうな場所を探してゆっくりと近付いた島には、海に面した場所に大きな町があり、周りを囲む連なる山々との間には高い壁がそびえていて、まるで何かを拒絶しているように見える。
この世界の野性動物は基本的に狂暴である。その野生動物達は人間に会った時のコマンドは"戦う"以外はないらしく、人を見つけると、取り敢えず攻撃してくるようなのが多くいる。その動物達から身を守るためにこんなに高い壁で町を囲っているのだろう。
それならば、この高い壁の存在もうなずける。
それにしても何か色々な物が焼け焦げた匂いが鼻につくのだが、火を使う大規模なお祭りでもあったのだろうか。
そんなことを考えながらエースの気配をたどると、山の中腹辺りにある川縁に、大きな体をした女の人と少年がいた。二人ともお祭りに参加していたらしく、服が所々焼け焦げていた。
しかし、エースの気配をたどって来たはずなのに、着いた先にはエースではなく、見慣れない少年がいるとはどういうことだろう?
ここに来る前は、この気配がエースで間違いないと思っていたのだが、そもそも会った事のない人物の気配なんて私に分かるわけがないので、もしかしたら、気配を間違えたのかと思ったのだが、私のなかの"麒麟"の部分があの少年で間違いないと言っている。
訳がわからず、とりあえず木の上で様子を見守る事にした。
(王、ここで何してる?)
(王、何しに来た?)
(王、遊びに来た?)
(王、我等と遊ぶ?)
方々から思念で話しかけられて辺りに目をやると、小さな動物や鳥達が不思議そうに私を見ていた。
(私はエースを探しにきたの)
(えーす、知ってる!)
(あそこにいる、小さい方の人間)
(るふぃー、と、さぼ、と強い獣を狩る、小さい人間)
(力、がある、人間)
この子達の言うことが確かなら、"さぼ"というのが誰なのか分からないが、"ルフィー"という単語が出てきたことからも、どうやらあそこにいる少年がエースで間違いないようだ。言われてみれば、私の知っている"エース"と面影が似ている気がする。
もしかしたら、私が知っている原作よりも、ずいぶん前の時間に私は向こうの世界からトリップしてきたのかもしれない。という考えが頭をよぎった。
それなら"エース"が私の知っている青年の姿ではなく、少年の姿であるのにもうなずける。






気配が私が思っているよりも小さかった理由もそのせいだと思えば納得できる。うん。多分そうに違いない。
私は、ゆっくりと木から降りエース達に近付いた。
しかし、二人は怪我をしているようで、風に乗って漂ってきた血の匂いに思わず足が止まる。
私が来たせいで動物が集まって来ていたのかと思い、特に気にも止めずにいたのだが、どうやら辺りに漂う血の匂いにつられて集まっていたらしい。
襲わないように動物達に言うと、残念そうに動物達がその場を去っていった。
二人の様子を伺いながらそっと近付くと、私に気付いたエースがこちらに顔を向けた。
「誰だお前!金ならブルージャムに獲られたからねぇぞ!どっか行きやがれ!」
なぜか警戒心むき出しのエースに睨まれ、足元にあった石を投げつけられた。
見たところ、エースはとても元気な様子なので、この漂う血の匂いの元は隣に横たわっている女性のものらしい。エースから投げられた石を避け更に様子を伺う。
見れば、服だけでなく皮膚にも焼けた後があることから、この女性は火祭りに積極的に参加していたらしい。この世界には男性よりも強い女性なんてごまんといるので、横たわる女性もその一人なのだろうが、少し自分の力を過信しすぎていたようだ。
勇ましいのはいいが、それであんな大怪我を負ってしまってはもとも子もない、と半ば呆れながら、二人に背を向け森に入っていった。
ちゃんとした薬が一番いいのだろうが、そんなものを買うお金は持っていないため、代用品の薬草を探すためだ。
ようやく見つけた木に、一言断りを入れて葉っぱを頂き、ついでに果物も頂いた。
女性の所に戻ってみるとエースの姿がなく、どこにいるのかと気配を探れば、周りに他にも沢山の人の気配がすることからどうやら町にいるらしい。
どうしたんだろうか?と思いつつ女性の様子を伺うと、火傷の状態はだいぶ酷いようで、気を失っているにも関わらずその息は荒い。
こんなひどい火傷に効くかは分からないが、なにもしないよりはマシだろうと、川の水で洗った葉っぱを火傷した部分に貼っていった。
最初にここに来た動物達以外の動物達が、この女性を襲わないとも限らないので、葉っぱと一緒に頂いてきた果物を食べて小腹を満たしつつ見張りをしていると、戻って来たエースにまた小石を投げられた。その手には包帯や瓶があることから、どうやらこの女性を治療するための道具を手に入れるために、この場を離れていたらしい。
相変わらず小石を投げてくるエースを見ながら私は首をひねる。私の今の格好は出会い頭に小石を投げつける程怪しいだろうかと。
そんなことを考えていると、エースが殴りかかってきたので、慌てて避けてその場を動くと、エースが女性を背にして庇う様にして私を睨み付けた。
エースが女性をちらりと見て、また私を睨み付ける。
「お前、ダダンに何しやがった!」
何をと聞かれても応急処置だ。あのまま放っておくよりはと思ってやったことだったのだが、余計なお世話だったらしく、エースは貼り付けた葉っぱを取ると、なれた手つきで薬を塗り包帯を巻いていった。、


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