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気づけば病院のベッドの上にいた。
丁度こめかみのあたりが痛んで、そこを指で押さえようと手を当てれば、包帯を触る感覚がして、そう言えば、モンキー・D・ルフィとか言う夢追いのバカなルーキーにやられたのだと、思い出したくもないことを思い出した。
「……くそっ!なにが空島だ……!」
はらわたが煮えくり返るような思いが込み上げてきて、ポツリと独りごちれば、それは夜の静寂に吸い込まれていった。
一度目覚めてしまえばなかなか寝付けないもので、だからと言って起き上がる気力もなく、ベッドに横になったまま遠くで聞こえる喧騒に耳を傾けていると、ふと、隣から荒い息遣いが聞こえた。
一体誰だと思い、動かすことも億劫な体を起こし、薄いカーテンで仕切られ囲われただけのその場所から出て、同じようにカーテンで囲われた隣の空間に侵入すれば、そこには女が横たわっていた。
その女を見た瞬間、思わず息を飲んだ。
窓際のベッドのため、窓から射し込む月の明かりに照らされてうっすらと輝く白い髪の毛。瞼は閉じられているため確認するすべはないが、白い髪の毛の若い女なんてそうそういるわけもないので、これは最早そうだと判断してもいいだろう。
どういう経緯でここに来たかは分からないが、この女はドフラミンゴが自分の部下になった奴等に、見つけたら知らせるようにと言って探しまわっているという女で間違いはないだろう。
写真も何もなくて、髪が白くて緑の目という特徴だけで分かるわけがないと言う俺に、見れば分かる、と言ったドフラミンゴの顔が浮かび、その通りだと思った。
すぐにでもドフラミンゴに連絡をしようと思ったが、様子を診に来たらしい医者に、ひどい怪我だから安静にさせておいてほしいと言われて、動かして死んでしまっては元も子もないと思い、怪我が治ってからドフラミンゴに連絡を入れることにした。
数日後、突然島に現れたドフラミンゴに、どこかで女の事を聞いたのかと思ったが、どうやら違うらしく、現実主義を掲げた俺が夢追いのルーキーにあっさりと負け、そのルーキーをねじ伏せる事ができなかった俺を処刑するために島に来たらしい。
嫌がるサーキースを操り俺への処刑を行うドフラミンゴに、もう一度チャンスをくれるように頭を下げるが、己のシンボルに泥を塗った配下をドフラミンゴが許すはずもなく、必要がないと判断した俺を排除するつもりのドフラミンゴに、俺の意見など聞き入れてもらえるはずもなかった。
背を向け立ち去るドフラミンゴに追いすがろうと手を伸ばすが、いやだと泣くサーキースが後ろからククリ刀を降り下ろしてきた。
それをなんとか避けて、もう一度ドフラミンゴに頭を下げた。
「たのむ!もう一度チャンスをくれ!……チャンスをくれるなら、ずっとあんたが探してた白髪の居場所を教える!」
あの女がドフラミンゴにとってどういう存在なのか分からないが、尊敬するこの人の側に居続けるためならなんだってするつもりの俺には、最早これしか方法が思い浮かばなかった。