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"町のごろつき" であるのベラミーが俺のシンボルに泥を塗った事を知り、処罰を与えに行けば、そいつはシロの居場所を知っていると言う。
チャンスを与える代わりにシロの居場所に案内させれば、なぜかそこは病院で、ベッドにはどう見たって顔色の悪いシロが横たわっていた。
「な?あんたの探してた奴で間違いないだろ?」
後ろでそう言ったベラミーの胸ぐらを掴み、自分の目線と同じ高さまで持ち上げて睨み付けた。
「おい、これは一体どう言うことだ?まさか、手前ェ……シロに手ェ出したんじゃねぇだろうな」
「しっ……知らねぇよ。俺はやってねぇ!俺が見つけた時にはもうこの状態だったんだ!嘘だと思うなら、ここの医者に聞いてみてくれ!」
息を乱しながらそう答えたベラミーから手を離し、医者の元に行き問いただせば、医者は、見慣れない大きな男がここに運んで来て、ここに来たときにはもう既にこの状態だったこと、自分は医者として治療をしただけで、その男が何者かのか、シロが怪我を負った理由も何も知らない、と声を震わせながら答えた。
「それで?シロはどうなんだ?」
なぜシロがこんな状態に陥っているのかわからなくて、イライラするのをどうにか抑えながら医者にそう問いかければ、最初にここに来た時に比べれば随分と状態はいいと言う返事が返ってきた。
俺の目には今でも十分酷い状態のように見えるが、それでも最初のときよりはとましだと言うのだから、ずいぶんと酷い怪我を負っていたのだろう。
シャボンティ諸島でシロの姿を見失ってから、どこかの人拐いにでも拐われたのかとシャボンティ諸島にあるヒューマンショップ、その回りを縄張りにしている人拐いや、もう既にどこかの貴族に買われている可能性も考えて、その日買われた奴隷と、とにかく八方手を尽くして探すが見つからず、最悪の可能性を考え始めたとき、グランドラインで漁をしていると言う男からシロを探す足掛かりになる情報がもたらされた。
男がシャボンティ諸島に魚を卸し終わり、たまたま50番街のグローブを歩いている時、白ひげ海賊団の船に白い姿の子供が乗り込むのを見たらしいのだ。
"白い姿の子供"だけではシロと断定は出来ないが、その時のシロの格好は、次に船に乗るときに着替えが必要だから、と言ってシュガーが俺のクローゼットに押し込んでいた白いワンピースだけだ。
最早その"白い姿の子供"はシロだと言っているようなものだが、白ひげとシロにどんな繋がりがあるのかわからず、とりあえず白ひげの航路を辿って調べさせれば、白ひげクルーと白い髪の毛の子供が一緒にいたと言う報告が寄せられた。
これは最早間違いないと部下にシロの保護をするように命令すれば、間もなく電々虫から寄越された部下からの報告は、シロが海王類に食べられたと言うものだった。
耳を疑うとは正にこの事で、いったいどういう経緯でそんなことになったのか改めて部下に問いただしてみるが、何度聞いてみても、己のミスを隠すためについた嘘としか思えず、信じてくれと言う部下の首を切り、改めてシロの捜索に取りかかるが、どうしてかそこからまたぱたりとシロの目撃情報は途絶えてしまっていた。
その、シロが今目の前にいるのだ。
「……こんな状態になっちまって、今までどこで何、してたんだ?」
ポツリとこぼれた呟きに気を失っているシロが答えてくれるはずもなく、背中に負っているという怪我を気遣ってか、横向きで寝かせられたシロの青白い顔を覗きこみ、顔にかかった髪の毛を指でどけてやれば、閉じられていた瞼が開かれ、緑の瞳がぼんやりと俺を見つめていた。
「……悪ぃな。目ェ覚まさせちまったか?」
シロはゆっくりと瞬きをすると、ゆるりと笑みを浮かべ、何と勘違いしているのか、小さく良かったと呟くその姿に眉間にしわがよる。
こんな怪我をしておいて、よかったもなにもあったものではないが、まず、シロが喋れたことに驚いていて、何のことだと尋ねる間もなく、シロはまた瞼を閉じてしまった。
そもそも、白ひげのところになんかいたのが間違いだったのだ。いくら四皇とはいえ、白ひげの命を狙う輩も敵も大勢いれば、海には海王類だっている。必ずしも白ひげのところは安全とは言えないのだ。
それに、もともと、シロはオレのものだ。ならば、こんな治安の悪い島の小さな病院にいつまでもシロを置いておく必要はないだろう。
俺の船に同行させている医者にだって、ここと同じレベルの治療は受けさせられるし、王宮に戻ればそれ以上の治療を受けさせることだってできる。
「……おい、医者。シロは俺の所で治療を受けさせる。連れて行っても問題はねェな」
屈めていた体を起こし医者にそう言えば、医者は体を震わせ汗を流しながら、頭を上下に振った。
なるべく傷に響かないようにシロを抱えあげ病院から出れば、ベラミーの野郎が待ち構えていた。
「なあ、ちゃんとあんたの探してた奴の所に案内したんだ。約束通りチャンスをくれるんだろう?」
別にベラミーがどうなろうが興味もない俺には、シロの怪我の手当てをさせるのが最優先されるべきことで、チャンスをくれとすがってくるベラミーを邪魔に思いつつ、一瞥し背を向ければ、「チャンスをくれれば、必ずあんたが気に入るようなもんを渡すと誓う!」と言い募ってきた。
「……勝手にしろ」
相手にするのも面倒でそう言えば、ベラミーが嬉しそうにありがとうと言って頭を下げる気配がした。
シロを船に運び込み、船医に治療をさせながら、いそいでドレスローザに向かい船を進めた。