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エースを助けるためにその力を封じて、カイロスさんの能力で子供になった男の人を地面に下ろせば、ぎろりと睨み付けられた。
小さな子供なのに怖いってどういうことなの。
「きさまはなにもんじゃあ」
彼のその質問に答えることはできないので、笑顔で誤魔化してみるが、私を睨み続けるその表情の怖さはかわらない。
カイロスさんが海軍をあらかた子供にし、白ひげ海賊団側の皆は引き上げ始めているとは言え、やっぱり広場はまだ危ないからと思って、安全そうな場所に彼を下ろしたのだが、どうやら余計なお世話だったらしく、小さな体で服を引きずりながら元の場所に戻ろうとしている。
怪我でもしないかと不安でたまらないが、今はパパを助ける事が最優先事項なので、彼を置いてパパの元に向かい走り出せば、突然目の前に黄色のストライプスーツを来た男の人が現れた。
すかさずカイロスさんが能力を発動させて、彼を子供の姿に変えた。
目の前に突然現れたと言うことは、彼も悪魔の実の能力者だよなと判断し、パパと逃げるときに邪魔をされては困るので、驚いて自分の体を見つめている間にその能力を封じさせてもらった。
「これはァ……。ふしぎだねェ。のうりょくがつかえないみたいだねェ」
自分の体を触って確認した彼が、「これがァ君のォのうりょくかい?」と質問してきたが、それが子供になったことを指すのか、悪魔の実の力が使えない事を指すのかわからず、とりあえず笑顔を浮かべてみれば、小さくなった彼も同じように笑顔を浮かべた。
その笑顔が怖かったので、風太さんの背に急いで飛び乗り逃げることにした。
そこから先はざっと見た感じだと、海軍の制服を来た人達ばかりだったので、カイロスさんに、あの白い服を着た人とあの白いコートを着た人は構わず子供にしても大丈夫だと伝えると、カイロスさんは私の肩から飛び立ち、人の間を縫うように器用に飛び回り始めた。
カイロスさんが生き生きとしているなと、どんどん子供が増えていくのをしばらく間呆然とみつめ、はっと我に返り、パパの元まで駆け寄った。
「パパ!」
「……おう、バカ娘め!今頃姿を表したのか。危ねェから、てめェもとっとと逃げろ……!」
「駄目。パパも」
そう言ってパパに一歩歩み寄れば、後ろから何かが迫ってくる気配を感じて、慌てて避ければ、さっきまで私がいた場所が凍っていた。
「あんた何者だ?どこから現れた?」
その声に振り向けば、背の高い細身のアフロの人がいて、別にこの場所は寒くないはずなのに、その人のはきだす息は白くなっていた。
(我らの王を傷つけようとするとは、不躾で、ちょこざいな人間め!)
風太さんは私が止める間もなく、素早くその人を能力を使って攻撃して、両腕を切り離してしまった。
何てことしたんだと慌てる私をよそに、その人は落ち着いた様子で「あらら、参ったね。もしかして、その鹿も悪魔の実を食べたの?」と尋ねてきた。
風太さんが切り離した腕の傷口を見ると、なぜか凍っていて、どうやら彼も悪魔の実の能力者らしいと理解した。
悪魔の実の能力者ならその能力を封じてしまえばいいのだろうが、腕が取れたこの状態でそんなことをしたらどうなるかなんて分かり切ったことで、想像すると気分が悪くなりそうだ。
(ふんっ!いいザマだな人間。我らの王に無礼を働くからこうなったのだ)
そう言って風太さんは男の人を見上げるが、それがその男の人に聞こえているはずもなく、「参った参った」と言って、地面に転がった腕を手繰り寄せ、ひっつけ始めた男の人は、私の方に視線を寄越した。
「飼い主ならペットの躾くらいちゃんとしなさいや」
どうしたものかと思案した私は、その男の人を遠巻きにしながらパパに近づき、間に植物を生やして壁を作った。
実を言えば、私と男の人の間どころか、勢い余って島全体を植物で覆ってしまい、軽く森の様な状態になってしまったが、見なかったことにしようと思う。
「パパ、逃げよう」
そう言って振り向いた先には、パパが胸を押さえて膝をついていた。
「パパ!?」
どうしたのかと思ってよく見れば、ちょうど押さえている胸の部分に怪我を負っていた。
「折角来てくれたのに悪ィが、俺はもう限界だ。………これ以上動けそうにねぇ。苗字だけで逃げろ」
「……ダメ。そんなの絶対にしない」
「我が儘な娘だ」
「パパに目一杯甘えたい年頃だから」
冗談めかしてそう言ってパパに触れると、自分の背中の傷を治した時の要領でどうにか出来ないかとやってみれば、パパの傷がゆっくりと塞がっていった。
どうやら上手くいっているらしい。
嬉しくて思わず歌を口ずさめば、なんだか力が安定した気がする。
パパが傷口だった場所に手を当てて驚いた表情をしていて、何かを私に言おうと口を開いた所で、私の意識は闇にのまれた。
どうやらこの力はずいぶんと体力を消耗するらしいと、遠のく意識の中で思った。


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