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汚れていた苗字にシャワーを浴びさせ、身なりを綺麗にしてからオヤジの所に挨拶に行かせようとシャワールームの前まで案内したはいいものの、その時間が妙に長いなと思い様子を伺えば、体を濡らしたままの苗字が脱衣所で眠りこけていた。
その後の世話をサッチに頼み、俺はオヤジに報告するためにオヤジの部屋へ向かうことにした。
この船のどこの扉よりも大きな扉の前で足を止めノックする。しばらくすると中から眠そうな声で何だと返事が返ってきた。
「オヤジ、俺だよい。寝てるところすまねぇが、ちょっと報告があるんだ。入ってもいいか?」
「おう、構わねぇぜ」
その言葉を聞いてからゆっくりと扉を開けると、ベッドから体を起こしたオヤジがこちらを見ていた。
「寝てるところ起こしちまって悪い。さっき船に乗り込んできたガキがいるんだが、どうも色々訳ありみてぇで、船がなくなっちまって自分の島に帰れねぇみたいなんだよい。
海に放り出すのも可哀想だし、ソイツの島にまで送り届けてやりたいんだが、かまわねぇかよい?」
「そりゃあかまわねぇが、そのガキの島はどこかわかってんのか?」
「ワノ国だよい」
「グラララ。そりゃあ丁度いいじゃねぇか。俺達が今向かってるのはワノ国だ。ついでだ乗せてってやりな」
「おう、ありがとよい。ソイツ疲れてたみたいでもう寝ちまってるから、オヤジへの挨拶は明日行かせるよい」
オヤジはまたグラララと笑い、海賊船でそんなに堂々と寝るたぁ中々肝のすわったガギだと言った。


翌朝、俺の部屋のソファーで寝かせていたはずの苗字が、なぜか俺に寄り添うようにして丸くなり同じベッドで眠っていた。
どうりで暑かったはずだと思いながら苗字を起こすと、まだ寝足りないとばかりに不満そうな唸り声をあげたあと更に丸くなった。
「おい、起きろ。朝飯食いっぱくれるよい」
"朝飯"という単語に反応したらしく苗字の瞼がゆっくりと開かれる。むくりと起き上がるとぼんやりとした表情で俺を見つめるその目は緑色だ。昨日の夜は暗かったせいもあり気づかなかったが、ずいぶんと綺麗な色をしていて、あっちこっちに好きな方に跳ねている白く長い髪の毛と相まって、まるで人ではない他の野性動物かなにかのような雰囲気をかもしていた。
「……おはようございます……」
目をこすりながら挨拶してきた苗字に俺は「おう、おはよう」と挨拶を返すとベッドから抜け出した。
「子供服なんてねぇから、ちとデカイが俺の服で我慢しろよい」
昨日の夜からずっと裸の苗字に俺のシャツを投げて寄越し、自分も苗字に背を向けて着替えをはじめた。
「着替え終わったか?」
簡単に着替えを済まし振り向くと、まだ寝ぼけているらしい苗字は、こくりこりくと船をこいでいて、ボタンを見事にかけ間違えて俺のシャツを着こなしていた。
「…………お前」
そのままの姿でまた寝に入ろうとする苗字を起こし、かけ間違えたボタンを直してやる。
このままだとまた寝てしまいそうな苗字に顔を洗わせると、ようやく目が覚めたらしく、スッキリした顔で「おはようございます」と2度目の挨拶をした。
「おう、おはよう。それじゃあ、朝飯食いに行くよい」
俺はそれに苦笑いで返すと苗字の手を引いて食堂に向かった。


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