心入れ換えます


※モブと言うか人拐い屋視点です。
夢主の夢みたいな訳のわからない感じになってます。









心入れ換えます


フラフラと一人で歩き回るその姿はどうしたって目立っていた。
白い髪の毛の幼い少女の首には普通の首輪。
その首輪が天竜人や貴族の奴隷であることを示す、爆弾つきの首輪ではないことから、ただの飾りであるらしいと判断した。
そっと気付かれないように後をつけ、今だとばかりに襲いかかれば、するりと避けられ、俺は地面へ倒れこんでしまった。
「……くっそ!」
地面に打ち付けた顔を押さえながら体を起こせば、心配そうな表情で俺を見下ろす少女と目が合った。
自分がどんな目に会わせられようとしていたのかをまるで理解いないのか、とっと逃げてしまえば良いものを、俺を写す緑の目はまるで警戒した様子がない。
無垢なその瞳に見つめ続けられ、多少は良心の呵責があったものの、俺だって日々の生活がかかっている。その少女がまるで鴨がネギを背負っているかのように見えたって、誰も俺を攻められないはずだ。
「なあ、お嬢ちゃん。おじさん顔を打っちまってすごく痛いんだ。真っ直ぐ歩けそうにないから、病院まで一緒に付き添ってくれないか?」
こくりと頷いた少女は、俺の手を取ると俺を見上げて、行こうと促してきた。
「……へへ。悪いな」
どうやら地元の子供と言うわけではないらしく、俺の指示に素直に従いながら歩くその姿に、笑みが抑えきれない。
白い髪の毛というのも十分珍しいため、それなりに高値で売れるだろうが、まるで宝石の様な輝きを放つその瞳は、くりぬいてホルマリンに浸けて瓶詰めにすれば、そっちの趣味のコレクターに高く売れそうだ。
勿論、幼女趣味の輩もいるから、そう言う趣味の奴にも高く売る事ができるだろう。
怪しまれない様に、時々よろめく演技をして歩くが、これから懐に入る金のことを思うと、足取りも自然と軽くなるというものだ。
そこでどこに売りに行くのが良いか思案した。1番グローブに最近出来たヒューマンショップに売りに行ってもよかったが、ここからだと20番街グローブのヒューマンショップの方が近いし、なにより昔馴染みの店だ。多少は高く買い取ってくれるかも知れない。
そう考えた俺は、薬品を染み込ませてあった布で少女の口と鼻を覆い、それを吸い込んで気絶したところを見計らって布を外し、首にしてあった首輪を外すとその辺りに放り投げた。
少女を抱えあげ、20番グローブにあるヒューマンショップへ着くと、店回りの掃除をしていたらしいクロウがこちらに気付き、笑顔で近づいて来た。
「よう!ミラー久しぶりだな」
「おう、久しぶりだな。どうだ?景気の方は」
「最近は1番グローブに出来たヒューマンショップに客も奴隷もほとんど持ってかれちまってて、あんまり良いとは言えねぇな。うちに来る客なんて妙にマニアックな客ばっかりだ」
「へぇ……例えば?」
「ん?そうだな……。例えばそうだな、児童趣味の輩とか、せっかく高い金を出して買った奴隷の手足を切り離して可愛がったり、野郎に女の格好をさせて喜ぶ奴もいるし、まあ、上げれば切りがねェな。
こっちも商売だし、これからはそういうマニアックな趣味の輩向けに、商売していくしかねぇと思ってんだ。
……で?その小脇に抱えてるのは?」
俺が小脇に抱えた少女を目にいれたそいつは、少女の顔を覗きこむとニヤリと嫌らしい笑みを浮かべた。
「へぇ……これはなかなか……。短いのが惜しいが珍しい髪の人間は高く売れるし、顔も悪くないな。肌も綺麗で薄汚れた所もない」
「いくらになる」
「そうだな……55万でどうだ?」
成人した人間の買い取りの相場がだいたい50万で、子供はだいたい30〜40万だから、ただ髪の毛の色が珍しいだけの子供なんてそんなものだろうが、欲を言えばもう少し欲しいところだ。
「交渉は決裂だな。1番グローブのヒューマンショップでは60万出すと言われた」
見せに行ってもいないのにしれっと、怪しまれない程度の額を吹っ掛けてみれば、クロウは一瞬驚いた表情になり、「このガキにそこまで……」と言ってうんうん唸りだした。
「どうする?それ以上出せないって言うなら、俺は向こうへ売りに行くのが?」
「いや、ちょっと待て!分かった!うちは63万出す!!」
これ以上は無理だと言うクロウに、まあ、そんなものだろうとその値段で手を打つことにした。
少女に首輪をかけ、格子の付けられた小さな部屋に入れられるのを見届けると、約束の金を受け取り、温かくなった懐に笑みを浮かべて、近くの酒場に一杯引っかけに行くことにした。

最初は店内のカウンターで酒を飲んでいたが、だんだんと店内が蒸し暑く感じてきたため、外に出て酒を飲み直すことにした。
何本か酒を買い、店を出てすぐ近くの広場のベンチで、気持ちよく酒を飲み直していると、すぐ近くの木陰で、焦った様子で話している二人組の話し声が耳に届いた。
「おい、シロさんは見つかったか?」
「いや、見つからねぇ。でも、これなら見つけた」
「……こりゃあ、お前……。ジョーカーには?」
「いや、まだだ。取りあえず確認してから知らせようと思ってる」
二人の会話の中に出てきた"シロさん"という単語に、あの少女の姿を思い浮かべ、まさかなとその姿を頭のすみへ追いやった。
それでも、やはり気になりちらりと二人組の方へ視線をやれば、一人の男の手には見覚えのあるものが握られていた。
それはよく見ればそれは首輪で、俺があのとき少女の首から外して、辺りに放り投げた代物だった。
おまけにさっき一人が"ジョーカー"と言っていなかったか?それは、最近1番グローブでヒューマンショップを始めたオーナーの名前で、どこぞの海賊の船長をやっているらしいと、漏れ聞いたことがある。
どっと身体中から嫌な汗がふきだした。
さっきまでのほろ酔い気分なんてどこかに行ってしまって、今ではもうすっかり酔いもさめて、耳に集中された神経は、二人組の会話を聞き逃すまいとしている。
しかし、声を落として話し出した二人の会話は、少し離れた場所にいる俺のには聞こえなくなってしまい、しばらくすると、その二人組はそれぞれ違う方向へ向かって走っていった。
ベンチから立ち上がった俺は、少女を売ったヒューマンショップへ足を進めた。
近づく程に大きくなる嫌な予感を抱え、着いた先のヒューマンショップの回りには何故か人だかりができていて、中から怒声となにかが割れる音が聞こえた。
人混みに紛れて近づき中の様子を伺えば、数人の男とクロウと他の店員の言い争う声が聞こえた。
更に何人かの柄の悪そうな男が店に入り、言い争いは更に激しさを増して行くようだった。
「山下は俺たちの家族だ。家族を返せって言ってるのがわかんねェのか!」
「だから、何度も言ってるが、こっちだって商売だ。どうしても欲しけりゃ金を用意しろっていってるんだ」
「"家族"?何言ってるんだ。シロさんはうちのボスのもんだ。だいたい首にはこれがはめてあったはずだ」
「ちょっと待てよい。うちの家族にそんなもんはめてやがったのか?それはどこのどいつだよい!」
「おいおい。喧嘩なら他所でやってくれよ。ただてさえ妙な言いがかりをつけられて、こっちは迷惑してるんだ」
「おまえはさっさと山下をその牢から出せばいいんだ!」
「そうだ。早くシロさんをそこから出せ!」
「だから、あの嬢ちゃんが欲しけりゃそれなりの金を用意しろって言ってるんだ」
話が堂々巡りを始めた頃、ふと男たちから視線を反らしたクロウと目があった。
「ほら、あそこにこれを売りに来た奴がいる。首輪の話は俺は知らねぇ。あいつに聞け」
くるりと同時に振り向いた男達の顔はどこか見覚えのあるあるものばかりで、思わず後退りした先は何故か壁があり、振り向けば妙なサングラスをかけた金髪の男が俺を見下ろしていた。
「……フッフッフッフッ……。うちのシロを売ったってェのはてめえか?」
笑顔なのにちっとも笑っているように見えないそいつに、俺の中の何かがこいつはヤバイ、と警笛を鳴らした。
「いや、知らねぇな」
そう返事をするのが精一杯で、次の瞬間、俺は逃げるために足を必死に動かしていた。
「おい、あいつを逃がすな!」
「どうやら仕置きが必要みてェだな」
そんな言葉を背に受けながら、いったいあの少女は何者だと考えると同時に、もし、ここを生き延びることができたら、人拐い屋からは足を洗って、実家の農業でも手伝おうと心にかたく誓った。




end



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