※書籍に収録する書き下ろしサンプルです。
本部の一室。夏油が家族と呼ぶ幹部のみが立ち入ることが許されている
「なーんか、また増えてない?」
菜々子は積み上がった菓子の箱を数えては、呆れたように開封済みのものの中から大福を摘み上げて口の中に放り込んだ。
「お姉ちゃん、ずっと出払ったきりだし、多分その分だと思う」
「いつになったら帰ってくるわけ〜? 家に戻っても次の日にはいなくなってるし、流石に働きすぎっしょ」
「それもだけど、そろそろ夏油様が可哀想」
「ここ最近ほったらかされてるし、お姉ちゃん、もうちょっと構ってあげてもいいのにねぇ」
そうぼやきながらも「これ、美味しい!」と声を上げた菜々子は、美々子にも同じものを勧めた。
「前回の行き先のお土産だよね、これ。どこだったけな」
「確か宮城だったはず」
そう言いながら美々子は箱の裏を確認して、宮城の土産であることを示す。
「あっれ〜? 今、宮城にいるのかと思ってたわ。となると、お姉ちゃんどこにいんの?」
「特にどことも言ってなかったと思う」
「夏油様、知ってんのかな?」
「さあ……分かんない」
双子はずんだの滑らかな舌触りと、生クリームの甘さを舌の上で堪能しながら、それぞれ疑問を口にする。再び夏油が可哀想という結論に行き着いた二人は、あまりの進展のなさに頭を抱えた。
姉として慕う彼女には、どうにも噛み合わないというか鈍感な部分があるし、夏油も夏油で彼女だけには強引に出れない部分があった。二人には幸せなってもらいたいと思う双子だったが、このままでは一生進展のないまま年老いて死んでしまう可能性の方が高いと焦りさえ覚えていた。
菜々子は彼女の所在を問うべくスマホにメッセージを打ち込む。その時、タイミング良く会議室に入って来た菅田が、それまでの双子の会話を聞いていたのか「彼女なら今四国にいるわよ」と告げた。
「それに、夏油様もちゃんと把握してるはずよ。小まめに連絡を入れてるみたいだし」
「東北の次は四国ぅ?」
「もう少し出張のペース落とせないの?」
「無理よ。あの子自身が進んで行ってるんだからしょうがないじゃない」
「夏油様の役に立ちたいっていうお姉ちゃんの気持ちもわかるけどさ、流石に止めてあげてよ」
「止めてるに決まってるじゃない。それなのに、
家族のスケジュールは大方把握している菅田は、彼女から共有された予定を頭の中で思い浮かべる。最近は月の一週間も東京にいないのではないか。それに、自ら厄介な案件に首を突っ込んでは、新たな案件を拾ってくる。全て自力で解決しているから良いものの、そのやり方にいつか足元をすくわれそうで、危なっかしいと心配になる。それに加えオーバーワークなのは、誰の目から見ても明らかだった。
「夏油様も一度許可を出した以上、行くなとも言えないしって悩んでるみたいね。事あるごとに彼女に着いていこうするから、止めるこっちも大変よ」
「夏油様、お姉ちゃんのことになると頭の回転が鈍くなる……」
「そんなとこも好きだけど、それじゃ駄目なんだってばぁ!」
悩ましげなため息を吐いた菅田の言葉に、美々子は額に手を当て、菜々子は髪を掻きむしった。
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ミミナナが絶妙に噛み合わない夏油と夢主をくっつけるために家族達を巻き込んで奔走する話を書き下ろしとして6500字程度収録してます。
本編の暗め(?)な雰囲気を払拭するための明るい平和な内容です。
文庫サイズ/カバーあり/全232P
通販は8月上旬に BOOTH を開ける予定です〜
ここまでお付き合いいただきありがとうございました!
死ぬ未来が確定している夏油傑とどうしても幸せになりたい願望を無事救済することができました……南無
同じような方も一緒に救済できていたら嬉しいです。
来たる12/24、百鬼夜行(映画)を乗り越えましょう……!!