そばにいるよ #10


「荒北!あれは何なのだ!」
「ハァ?」
「はぁ、ではない!彼女だ!折原律とはどのような関係なのだ!」
「ッセ!つーか、お前昼飯ンときの話聞いてなかったのかよ!」
「うむ、聞いてはいたが、この東堂尽八の頭脳が理解を拒否したようでな」
「ッゼー!」
「うざくはないな!」

午後の授業の間に立ち直ったらしい東堂が、いつものように靖友に絡んでいる。
昼休みの時には照れる様子もなかったのに、今こうして東堂の相手をしている靖友の頬は赤く染まっていた。

羞恥の紅潮か、はたまた怒りの紅潮か。

いや、そもそも3本ローラーを回している時点で、運動による血液循環の向上が主な理由なのかも知れない。

「…しかし、荒北さんがねぇ…」
「つか、彼女にもやってンのかな、あのニオイ嗅ぐヤツ」
「それカンペキセクハラじゃん!ヤベーって!」

「ソコ!聞こえてンぞ!」

好き勝手に言ってくれる2年の連中に一喝を入れた靖友の眉間には深い縦じわが刻まれていた。

全く失礼にも程がある。
小さい頃から一緒に居るのだ、ニオイを嗅いだことなど数知れずだが、靖友にとってその行為は決してセクハラなどでは無い。断じて無い。

「クッチャべってネーで練習しろよお前ら!福チャンに怒られンぞ!」

福富の名前を出されては仕方がないとばかりに、それぞれの練習メニューをこなすべく散々になる部
員達の背中に盛大な舌打ちを浴びせると、靖友は気を取り直したようにペダルを回す脚に力を込めた。

GWに実施されたインハイメンバー選抜レースにおいて、靖友は文句のつけようのない成績を納めた。
インハイメンバー、ゼッケン2番。靖友は宣言通り、歴史ある箱根学園自転車競技部で常識を覆したのであった。


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