福富を引き、新開を引き、集団に飲まれてもなお、真波と小野田の二人を引き、そしてまたチームを引く。その間に広島の呉南を蹴散らして、もう、クタクタだ。 あぁ、でも、本当に、ラスステの先頭は、格別だ。 空の色も、風の匂いも、観客の声援さえ、特別に感じる。 あぁ、でも、もう、脚が、回らない。 今だかつて、こんなにペダルを、重く感じた事など、あっただろうか。 オレは、オレが、ここに居るって。 オレの、存在を、証明できただろうか。 (でも、なァ、福チャン、オレは、お前だけでも、認めてくれれば、それでいいンだ) (…そンで、アイツが、笑って迎えてくれたら、他はなンにもいらねぇンだよ…) 慌てたように前に出た新開が手を伸ばしている。視界の角に捉えた顔は驚愕に染まっていた。 (…バァーカ、なンてェ顔してやがる。まだお前の仕事は終わってネーだろ) 失速は止められない。 後続の総北にも追い越されて行く。 (あばよ、箱学…) 震える脚に最後の力を込め、クリートを外して地面に足を着く。汗と共に流れ落ちる涙もそのままに、靖友はスッと右手を上げるとハッキリと宣言した。 「箱根学園、2番、リタイアします」 係の人間に抱えられるように救護テントに運ばれる中、靖友は改めて実感していた。 (インハイが、俺の夏が、終わった) 悔しくないと言えば嘘になる。だが、やりきった。それは胸を張って言える。インハイでの俺の役割は理解していた。俺は、俺の仕事を全うした。 それでもやはり、何位でも良い、ゴールラインを走り抜ける姿を彼女に見せたかった。 |