そばにいるよ #13


福富を引き、新開を引き、集団に飲まれてもなお、真波と小野田の二人を引き、そしてまたチームを引く。その間に広島の呉南を蹴散らして、もう、クタクタだ。

あぁ、でも、本当に、ラスステの先頭は、格別だ。
空の色も、風の匂いも、観客の声援さえ、特別に感じる。

あぁ、でも、もう、脚が、回らない。
今だかつて、こんなにペダルを、重く感じた事など、あっただろうか。

オレは、オレが、ここに居るって。
オレの、存在を、証明できただろうか。

(でも、なァ、福チャン、オレは、お前だけでも、認めてくれれば、それでいいンだ)

(…そンで、アイツが、笑って迎えてくれたら、他はなンにもいらねぇンだよ…)

慌てたように前に出た新開が手を伸ばしている。視界の角に捉えた顔は驚愕に染まっていた。

(…バァーカ、なンてェ顔してやがる。まだお前の仕事は終わってネーだろ)

失速は止められない。
後続の総北にも追い越されて行く。

(あばよ、箱学…)

震える脚に最後の力を込め、クリートを外して地面に足を着く。汗と共に流れ落ちる涙もそのままに、靖友はスッと右手を上げるとハッキリと宣言した。

「箱根学園、2番、リタイアします」

係の人間に抱えられるように救護テントに運ばれる中、靖友は改めて実感していた。

(インハイが、俺の夏が、終わった)

悔しくないと言えば嘘になる。だが、やりきった。それは胸を張って言える。インハイでの俺の役割は理解していた。俺は、俺の仕事を全うした。

それでもやはり、何位でも良い、ゴールラインを走り抜ける姿を彼女に見せたかった。


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