そばにいるよ #05


それからの過酷な日々は予想以上だった。

前を向け、脚を回せ。人の3倍の練習をしろ。

容赦のない練習メニューを言い渡され、自分を引き入れた福富ですらおよそ自分の味方とは思えない。

煙たがられても疎まれても、靖友は前を向き、脚を回し、人の3倍の練習を続けた。

それだけが、今の自分にできる事だったからだ。

それしか無かったからだ。

そんな靖友にも転機が訪れる。

訳もわからず走らされた二ノ宮ロードレース。結果こそリタイヤだったが、このレースにより靖友のメンタルは大きく成長を遂げたのだった。

そして迎えた真鶴周回ロードレースでは、福富のアシストを得て誰よりも速くゴールラインを駆け抜けたのである。

前を向け、脚を回せ、人の3倍の練習をしろ。

桜が咲き、2年に進級し、桜が散る。
新緑の淡い緑が濃い色に移り変わっても、靖友はひたすらペダルを踏み続けた。

ロードを始めて1年。福富とコンビを組んだ靖友は、晩秋を迎える頃にはエースアシストとしての地位を揺るぎないものとしていた。


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