(あ、靖くんだ) 視線の先、綺麗な空色のバイクに乗った靖友が外周に走り出る。 靖友に会わない宣言をされて一年が過ぎた。 事情を打ち明けた友達には心配を掛けているが、律の心は穏やかだった。靖友が戻ると言ったのならば、必ず戻って来てくれる。彼女の知る荒北靖友という男の子は約束を破ったことが無いのだ。 「律、また荒北くん見てるの?」 「相変わらず好きだねー」 「…だって、靖くんだし」 「…はいはい」 呆れたような友達の返答にヘラリと緩んだ笑みを返す。だって仕方がないじゃないか、好きなんだもの。 いかに靖友が格好良くて、優しくて、頼りになるか、ことあるごとに力説する彼女に向けられる友人達の視線は生温かい。 残念ながら、今年も靖友と同じクラスにはならなかった。でも結局それで良かったのかもしれないと律は思う。離れた今でさえ、靖友の姿をこうして目で追ってしまうのだから、一緒のクラスになってしまったらきっと触れずにはいられないだろう。 好きだと告げられたあの夜を思い出す。触れるだけの口付けを交わしたあの夜を思い出す。まだあの思い出は色鮮やかだし、靖友を信じる気持ちは変わらない。けれど、と律は思う。どうかこの思い出が色褪せないうちに迎えに来て欲しいと。 |