そんな小さな変化:聖ルドルフの場合(side:赤澤)




「赤澤部長! 何回言ったら解るんですか! そこは相手の得意コースです、何をボケッと打っているんです!?」
「わ、ワリー」
「裕太くん!」
「はっ、はい!」
「君はもう少し肩の力を抜いてですね、と、この間も言いましたよね!?」
「はいっ、すみません!」
「柳沢!! あなたはその弱点を克服しろと何度言ったら……」


最近、観月のスパルタに磨きがかかった。

ちなみに被害者は聖ルドルフのレギュラー陣である。都大会を終えてからここ数日、練習が厳しくて仕方ない。

勝つためなんだけどよ……中々キツイな、これは。

というかやる気満々の観月が少し怖いのだ。都大会でまさかの敗退を経験して落ち込むかと思いきや、それは所詮思い込みに過ぎなかった。試合後は少し荒れていたが、気づけば次に当たる氷帝を倒す気満々な状態になっていたのである。そしてそのテンションのまま今に至る。

まぁ、観月がそんな復活を遂げたのはやっぱりあの子のお陰なんだろうな。

ふと、都大会の時に会った少女を思い出した。パッと目を引くような容姿ではないが、綺麗になびく髪と、真っ直ぐな目が印象的な彼女はよくよく見ると顔立ちは整っていて、可愛い部類に入るんだろうなと漠然と思ったのは記憶に新しい。

そしてそんな彼女は、多分、物凄く観月のお気に入りだ。

何つーか普通に可愛いし気も利くし良い子だなとは思ったけど……。

ちなみにそんな観月が怖いのでもっと知りたいと思う自分は何となく押し込めた。自分に素直な裕太や木更津、恐らく柳沢辺りは彼女にひたすら絡んでいたが。彼女の存在は、いつの間にか聖ルドルフの中で大きなものとなっている気がする。中心人物の観月がまず彼女に執着している時点でそうなのだが、それ以上に、彼女によって前向きになった観月に影響されるかのように部活全体の雰囲気も良い感じがするのだ。事実俺も、最近テニスが楽しい。

観月もスパルタになりつつも楽しそうだ。部員たちも活き活きとしている。そういえば裕太もどこかしら垢抜けた感じがする。不二兄や越前のお蔭もあるだろうが、きっと彼女も一役買っているのだろう。何となくそんな気がする。

……そう思うとすげぇな、あの子。

ほんわかと笑う姿は本当に可愛いかったなと思い出しつつ、俺はラケットを手にした。見据えるのは勝利。次の氷帝戦に勝ち、関東大会に出場するのだ。

勝ったらあの子は笑ってくれるだろうかと思うと、どことなくやる気が湧いた。



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