イケメン副部長




「一条。ご苦労だったな」

副部長のいる方へと逃げれば、彼は労うかのように茶菓子を出してくれた。実にスマートな振る舞いである。部長はぜひとも見習ってほしい所存だと思いながら、ありがたくいただく。

「ありがとうございます。苦労……そうですね、まぁ苦労したといえばしたというか」
「ああなった彼奴を止めるのは至難の技だからな。しばらく放置しておいても構わないだろう」
「了解です。ありがとうございます、柳川副部長」
「俺はただアドバイスを与えただけだ、礼には及ばん」

上が駄目だと下はしっかりする……そんな言葉がぴったりハマるようなうちの部は、部長がダメ男な分、副部長の柳川先輩が頼れる男だ。しかしそっけないというか、さらっとしているというか、態度は極めて淡白である。なのに計算高かったりするところもありどこかの参謀に似ていると思う。

まぁお礼をお礼として素直に受け取ってくれない辺り、柳川副部長の方が厄介な気がしないでもないけれども……。

礼には及ばんと言われたもののお礼はお礼だ。押し付けがましくはなりたくないが、きちんと伝えてはおきたいものである。

「いえ、そのアドバイスのお陰で私は助かったのでお礼を伝えたいのです。ありがとうございました」

誠意を示すためにもお辞儀をつけておいた。すると柳川副部長は少し困ったような顔をした後、ふっと優しげに笑いつつ私の頭をひと撫でした。

うわ、レアだ。

心の中でシャッターを切っておいた。

「では素直に礼を受け取ろう。どういたしまして」と返してくれたので私は少しだけ照れつつ微笑んで、部活動を再開した。




これが、私の日常。


窮屈で退屈な毎日の中で唯一ほっとできる瞬間。ひたすらな勉強尽くしの中の、安らぎ。

私は当たり前のように、この日常が続いていくものだと思っていた。



ところで部長と何話してたっけ……?

副部長のイケメンスマイルに部長の話がかき消されたのはいうまでもない。




fin.



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