予兆
この窮屈で退屈な毎日が変わればいいと思った。
都心の有名な私立進学校の特別進学クラスに押し込められ、つまらない授業を聞き流す日々とおさらばできたらどれ程良いのだろう、と。もっともっと一度しかない青春とやらを楽しめたらどれ程良いのだろう、と。なんて考えてみても仕方のないことだと分かっているけれど。
はぁ、とため息をついて私は目を開く。今は退屈な授業中、目を閉じていただけで寝ていると勘違いされて怒られたら不愉快だ。妄想にふけっていても問題が解ける訳じゃない。目の前には小難しい文字が並んだ問題集に筆記用具。うつむいて問題を解くふりをしながら目を閉じていたから、いつの間にか顔とそれらが接近していた。
ああ近いな……。
起きる気力もなくてコテンとそのまま机と問題集たちに顔をつけるとショートカットの癖っ毛が顔にかかる。はぁ……退屈、窮屈、息苦しい。三重苦だ。
何度目かわからないため息をつき窓の外を見上げると、綺麗な青空が見えた。外に行きたい。いっそ鳥になれれば空を飛べるのになぁ……なんてね。もうそんな夢を語るような歳でもない。いつまでも夢見る少女ではいられないのよ、と口角だけで薄く笑う。
ーー不意に、軽いめまいがした
目の前が少し歪む感覚に顔をしかめる。慣れないこと考えてたせいだろうか。それとも勉強しろっていう暗示だったりして。
軽くこめかみを揉んでシャーペンを握る。そろそろ問題集と真面目に向き合うべきだろう。次の次くらいに当てられそうだし、と周りを見渡しながら皮肉気に目を細める。
空を飛びたいだなんて素直に願ってた私は、どこへいったのか。
頭の片隅で考えつつ、目をつむって開き、さあやるかと深呼吸をした、その瞬間。
” そんな私は、もうどこかに置いてきてしまったわ ”
もうひとつの<声>と重なった。
……え? ちょっと待って、今誰かの声……聞こえたよね? は? まさかとうとう幻聴が聞こえるようになった!?
柄にもなく焦る私の手から、ジワリと汗が滲む。
シャーペンがことりと手から転げ落ちるのをどこか遠くで感じていた。
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