女神と都大会11
「美里ちゃん……!」
心底ほっとしたように不二さんに呼び掛けられ、私はまた彼に心配をかけてしまったのだと気づいた。
ということで、やっと無事に帰ってこれた、青学集団。何だろう、別に自分の学校だとかいう訳でもないのに安心感がすごい。私がその集団に合流するより先に、不二さんが駆け寄ってきた。
「どこに行ってたのかな?」
「ちょっと聖ルドルフとか不動峰とか、色々です。すみません勝手に離れていってしまって。ご心配をおかけしました」
「本当に、急にいなくなるから驚いたよ……」
心配したよ、と困ったように微笑まれ、本当に今日はこの人に心配かけてばかりだなと反省する。しかもせっかく誘ってくれたのに、今日はあんまり一緒にいられなかった。よくよく考えるとすごく失礼な事ではないか。とりあえず目の前にあった不二さんの手をしっかり握って、きちんと目を見て謝った。
「今日、せっかく誘って頂いたのに、あまり一緒にいられなくてすみませんでした。心配かけてばかりで申し訳ないです」
「……うん、美里ちゃんは優しい子だから仕方ないかな」
「へ?」
「君のことだからきっと、色んな人を助けていたんじゃない?」
「え……、え?」
まるで見ていたかのような言い方に戸惑っていると、不二さんは綺麗な笑顔を向けて唐突に提案を切り出した。
「……美里ちゃん、よかったら一緒に帰ろう」
「と、突然ですね……。でも不二さん、ミーティングとか大丈夫なんですか?」
「さっき終わったし、今日はもう解散だから大丈夫だよ」
「そうなんですか」
「そう、それにもう暗いしね、家まで送るよ」
「え、いや駅までで大丈夫ですよ? 私の家って神奈川寄りだったりするんで遠回りになっちゃいますし」
「ダメだよ。ここから少し遠いなら余計に危ない。心配だから送らせてほしいな」
「え……でも……」
「それにね、美里ちゃんと長く一緒にいられるから、遠回りなんてむしろ嬉しいくらいだよ」
私の手はいつの間にか不二さんの手にすっぽりと収まっていて。不二さんはいっそう綺麗な微笑みで。そんな状態でこんなこと言われたら。
こ……断れない!!
そもそも私も帰り道独りぼっちは嫌だし、不二さんと話すのは楽しいから一緒に帰りたい。疲れてるかなと気を遣って断るつもりだったけど、本人も大丈夫そうだし素直にお言葉に甘えよう。ニコッと笑って了承することにした。
「それなら、お願いします」
「うん。それじゃあ行こう」
「はい!」
不二さんに手を引かれて歩き出したとき、目の前に突然背の高い人が現れた。
「一条、もう帰るのか?」
「っわ、乾さん! はい、不二さんに送っていただくんです」
「ほう、不二に……」
ちらっと乾さんが不二さんを見つめた。……気がした。何せ逆光眼鏡だからよく分からない。
「うん、だから乾は手を出さないでね」
「……そんな真似はしないさ。じゃあまたな、一条」
「あ、はい。今日は色々とありがとうございました!」
笑顔でお礼を言うと、乾さんは返事の代わりに、ぽんぽんと私の頭を軽く撫でた。乾さんもお兄ちゃんみたいだなと思いつつ、不二さんに並んで歩きだした。
*****
「いーぬい先輩っっ!」
「どうした、桃?」
「一条見ませんでした? 今日あんまり話してないから一緒に帰ろうと思って!」
「残念だが桃、一条は今さっき不二と一緒に帰ったぞ」
「そっかぁ〜 不二先輩と一緒に……って、えーーーーっ!? もう帰ったんすか!? しかも不二先輩と!?」
「あぁ」
「くっそーっ! 出遅れた! 次は負けないっすからね、不二先輩!」
「本人に言ってくれ。……ま、俺も次は負けないがな」
「え、乾先輩、それって……」
「何でもない。行くぞ、桃。もうすぐバスの時間だろう」
「あっ、ちょっと! 待ってくださいよ乾先輩ーーっ!」
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