日記とサボテンとおやすみ
都大会で絡んだ人たちからお疲れ様連絡が大量に来ていたので、きちんと返信をしてから夜ご飯を食べ、お風呂に入り、時計を見るともう夜10時過ぎ。あっという間である。さっさと日記書いて寝ようと決め込みお風呂から上がると、携帯が新着を知らせていた。
誰だろ……? 今日会った青学や聖ルドルフや不動峰の人たちはさっき一通りやりとり終わったし……跡部さんからも電話きた後だし、宍戸さんも「今日は当たっちまって悪かったな」って連絡入ってたしなぁ……。
思いを巡らせながら携帯を開くと、なんと柳生さんとブン太さんから。どうやら神奈川県大会を順調に勝ち進んでるらしくその報告と、今度何処かへ出かけようというお誘いが二人ともから入っていた。驚いた。
『綺麗な植物に囲まれたレストランを見つけたので、今度ご一緒にどうですか?』と相変わらず紳士的なお誘いの柳生さん。
『上手いケーキ屋見つけたから一緒に行かね?』と相変わらず甘い物好きでマイペースなブン太さん。
二人ともに了解の返信を送りつつ、ふと笑みが零れた。そんなにしょっちゅう会うわけでも、同じ学校なわけでもないのに気にかけてくれるなんてとても嬉しい。たまにこういったお誘いを受けるのだが、その度に自分は幸せ者だな、と実感する。出逢って間もないというのに、会えば話が弾むし楽しくて仕方がない……なんて、すごく素敵なことだ。
嬉しさから止まらない笑みを一人でによによ浮かべていると、二人から早くも返信が来た。どちらも『楽しみにしてる』といった内容が書いてあって、いよいよ頬の緩みが収まらなくなってしまった。パッと見たらただの変態だと思う、私。
とにかく、連絡のやり取りに一区切りがついたので日記に向かう。一冊のうち気づけばもう半分くらいまで埋まっているそれに、今日の都大会についてをつらつらと書き連ねてみる。自殺防止トリップも残すところあと2週間程度。いつの間にか随分と時間がたったものだ。楽しい時間は過ぎるのが早いなんてことを、ここでこんなにも実感するなんて。本当に、こっちの『わたし』と支配人に、感謝しかない。
久々に1番初めに書いた日記を読んでみようとパラリとめくると、『テニスの王子様』という単語が目に入った。その、見慣れないのに何処か引っ掛かる単語を目にした瞬間――不意に、頭の奥がツキリと痛んだ。
あ、れ……? 何なんだろう『テニスの王子様』って…? こんな言葉聞いたこともないはずなのに……そもそもこんなこと書いたっけ……っていたたたた頭痛い!!!
何か変な感じがする。
何か忘れている気がする。
頭痛が気味が悪い。
あれだ、疲れているからだ。だからこんな変な気分なんだ。あまり気にしないことにして、やっぱりさっさと寝ようとパタンと日記を閉じた。電気を消して、月明かりでぼんやりと光る仙人掌(名前はサボちゃん)に日課となっている言葉をかけ、何となく今日の出来事を話してみる。
「やっほーサボちゃん今日も可愛いね。今日はね、君を買うきっかけになった不二さんに会ったよ。相変わらずさらっとしたイケメンだったよ〜。その内サボちゃんにも会わせてあげたいなぁ。あと都大会があって観に行ったんだよ。テニスって、やっぱり面白いね。……あと何回見れるかな?」
元の世界に戻るときが近づいてるのを漠然と感じて、少し表情が曇る。そんな私を心配するかの様にサボちゃんは月明かりをきらりと反射した。
「……なんて、ごめんねサボちゃん。しんみりなんてらしくないよね。そろそろ寝よっか! おやすみ」
たかが仙人掌、されど仙人掌。その場のテンションで不二さんとお揃いで買った仙人掌は、いつの間にか私の心を支えていたのかもしれないと思った。たとえ仙人掌でも、おやすみを言う相手がいるのはうれしいものだ。
でもふと携帯に目を向けると、またもや連絡が来ていて。それが観月さんや柳生さん、ブン太さんを始めとするテニス関係の皆さんと、守おじさんからの『おやすみ』連絡だと分かった私は、またほっこりと幸せを感じるのだった。
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