女神と都大会17
「美里ちゃん…!会いたかった!」
その第一声を聞いた時、本当にもう私は何度この人に心配かけてるんだと反省しました。
ということで無事に不二さんに出会えた私は出会い頭のハグされてます。
(いつからそんな欧米スタイルになったんですか、不二さん…!?)
いや両手を広げられたからといって飛び込んだ私も私だけども。なんだかんだで心細かったのかもしれない。そして不二さんの腕の中の安心感果てしない。お母さんと呼びたい。
「美里ちゃん…いつからここに来てたの?(美里ちゃんが全力で抱きついてる…!かわいい……)」
「実は朝からいたんです……。」
「朝から!??」
半日いるのに今更出会えた事に対する驚きで、欧米スタイルのハグから一転して不二さんに肩を掴まれてしまった。朝からの行動を問われて経緯を答えると、不二さんはガクッと肩を落として私を覗き込む。
「美里ちゃん……知らない人にはついて行っちゃダメだよ…?」
「うぅ…でも……。(う、上目遣い…っ)」
「でもも何も、今回は千石だったし本当にテニスコートに向かったから良かったけど…。中には平気で嘘ついて連れ去る人だっているんだから、注意しないとダメ。わかった?」
「そうですよね…、千石さんが悪い人だったら私連れ去られてたかもしれないですもんね……。ごめんなさい、心配かけて。」
「分かってくれたならそれで良いよ。(これだから一人で行かせるの不安だったんだけどなぁ…)」
やっといつもの笑みに戻って頭を撫でてくれる不二さんにまたもや安心感をおぼえつつ、素直に今度から気をつけようと思った。
しばらく撫でられてると、ふと思い出したかのように不二さんがお弁当を掲げる。
「ところで美里ちゃんはもうお弁当食べた?」
「あ、まだです…すっかり忘れてました。」
「良かったら一緒に食べない?僕もまだなんだ。」
願ってもない申し出に「いいんですか!?」と食いつくと、美里ちゃんさえ良ければとにこやかに返してくださったので2人でお弁当を食べることになった。ちょうど小さいレジャーシートを持ってきてたので芝生に敷きつつ、2人でつめて座る。すると思ったよりレジャーシートが小さくて、少し不二さんとの距離が近くて申し訳ない感じになってしまった。(肩が不二さんに触れてしまっている…!)
「すみません、不二さん…レジャーシート、思ったより小さくて。」
「くす…そんなこと気にしなくていいのに。僕としては美里ちゃんが近い方が嬉しいから、大丈夫だよ?」
「ふ、普通に照れます……!(逆に気を遣わせてしまった!?)」
「ふふ、それはよかった。」
不二さんがものすごく嬉しそうににこやかにそう言うから、私はもうそれ以上何も言えなくなってしまった。これ以上墓穴掘ると余計に照れてしまう。
そんなこんなで和やかにお弁当のおかず交換をしながら、青学のこれまでの勝敗やテニスの話をしつつお弁当タイムはすぎていきました。
*****
お弁当タイムが終わって一息ついたら少し眠くなってきてしまった。不二さんと距離が近いせいか話しながら自然と不二さんの肩に頭を乗っけてしまう。
(人ってどうして眠くなると頭が重くなるんだろう…)
何でかなぁ、なんて思いつつ不二さんも優しいので「僕の肩にもたれてもいいよ」なんて言ってくれて、ついつい甘えてしまう。そうしているうちに、私はこてんと眠ってしまっていた。
「くすっ、今日は随分甘えたがりなんだね…。(心細かったのかな?そんな君も可愛いけどね……)」
「ふーじっ!」
「英二…!びっくりした、どうしたの?」
「もうすぐアップが始まるから呼びに来たんだ!って……にゃにゃにゃ!?もしかして彼女かにゃ!?」
「彼女…か、残念ながら彼女じゃないんだ。でも今寝てるから少し静かにしてあげてね。」
「そっかー、彼女じゃないんだね。分かった、ちょっと静かに、」
「ん、……ぅんん…ふ、じ…さん…?」
「「あらら、起きちゃった。」」
眠りについてどれだけたったのか、少し騒がしいから不二さんが誰かと話してるのかな〜と思ってるうちに起きてしまった。そしてどこかで聞いたことのある声の気がする。
パチリと目を開けてそちらを見ると、パッチリ猫目と目が合った。
直後、叫ばれる。
「ああーーーーーっっ!!」
「あ、80円の……?」
「や、やっぱり!?あの時の天使ちゃんだにゃ!!あの時はありがとうー!」
「て、天使…ではないですけど、私の方こそ道教えてもらってありがとうございました。」
いつぞやの、スポーツショップで80円が足りない猫さんだった。どこかで見た顔だとは思っていたけれども、まさか青学だったとは驚きである。驚いてるのは不二さんもだった。
「2人は知り合いだったの…?」
「うーーん、知り合いというか…なんて説明したらいいんでしょうね?」
「いやいや待って、天使ちゃんこそ不二と知り合いだったの!?」
段々ややこしくなってきたので、改めて3人で自己紹介をする。猫さんは菊丸英二さんというお名前らしく、青学のレギュラーでアクロバティックプレイヤーとのことだった。
馴れ初めを話すとそんな偶然〜!と2人が2人とも驚いていたけど、そんな偶然で私は何人もの人たちと出会ってきたので馬鹿にできない。
そうこう言いつつ3人で盛り上がってると、後ろからぽん、と頭を撫でられた。そして響く低音ボイス。
「久しぶりだな、一条。」
「乾さん…!お久しぶりです!」
「盛り上がるのはいいが、アップをして欲しいところなのだが。」
「うわわ〜ごめんね乾!美里ちゃんとしゃべるのが楽しくてつい忘れてた!」
「モチベーションが上がったのなら次は忘れずアップに行ってくれ菊丸。」
「ごめんね、乾、僕もすぐ行くから美里ちゃんお願いしてもいいかな?」
「言われなくても一条は俺がエスコートしておこう。変な虫がついても困るしな。」
「助かるよ、乾。」
時間が迫ってきてるのか、乾さんが迎えに来たので不二さんと菊丸さんが慌ただしく準備をし始める。私はというと一緒に片付けて、一歩乾さんの方へ近づいた。
「お弁当楽しかったよ。ちょっとアップしてくるから乾と待っててね。試合また一緒に見よう?」
「はい、私も楽しかったです!肩貸してくださってありがとうございました。待ってますね。」
「不二だけズルいにゃー!俺も一緒に見る!!」
「ふふ、菊丸さんもぜひ一緒に見ましょう?」
「もちろん!」
そう言いつつ2人とも機嫌よくアップへと向かったので、改めて私は乾さんと向き合った。今更だけどもとても背が高い。
「…今更ながらに俺がとても背が高いと思ってる確率、」
「100%、です。」
遮るようにふふっと笑うと、乾さんも少し笑ってくれた。
そして背が高い故に長い腕を少しおって、私の背中をそっと包んでくれる。これはこれでとても安心する。
「じゃあ、コートまで向かおうか一条。」
「お願いしまーす!」
元気よく答えて足を踏み出した。さあ、これが最後の試合観戦になるだろう。
(この時がずっと続けばいいのにと、願ってやまない)
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