舞台裏




「行かれましたか?彼女たち。」

そう言ってサラリとストレートヘアを揺らした男が顔を出した。苦笑いを携えながらも楽しそうである。

「行きましたよ…何か言いたいことでもあるんですか?」
「いいえ、何も。ただーー貴方様ともあろうお方が大掛かりな仕掛けを打って出たものだなぁと。あとその口調も笑えます。」

そう言われて口調が少女たちと接した時のままだった事に気付き、ひとつため息が出た。そのまま口調をいつも通りに戻すとする。

「その呼び方はやめて欲しいなぁ、好きくないのだよ。」
「じゃあ支配人と呼べばいいですか?"世界の"支配人?」
「それも含みがあるよねぇ。もう君もその口調は良いから戻ったらどうだい。」
「…いつもの口調だと各所から苦情が来るのだがな。望まれるのなら仕方あるまい、なあ、部長?」
「ああそれ良いその響きだよ僕が求めていたものは。ね、副部長殿。」

あー肩こったーと大きく伸びをする。
(まったく、キャラ作るのも大変だ)

「で?これで世界の均衡は戻ったのか?」
「うん、元々彼女たちは逆に魂が入ってしまっていたからね。ちゃんとルール通りに1ヶ月の期間を設けて本来の世界に交わらせたし、そうしたら世界も上手く回ったし万事オッケーなのだよ。ここで大掛かりに入れ換えても誰もなんとも言うまい。」
「それにしてもお気に入りだったんじゃなかったのか?同じ世界に現れるまでしたのに。最後は自殺まで追い込むなんて驚いたぞ。」
「お気に入りだからこそ、だよ。全てを諦めてる彼女を眺めつつ希望を与えたかった。最後は誰にも文句を言わせないやり方で幸せを与えたかったのさ。」
「それはまた、歪んだ愛情表現だな。」
「なんとでも言え、僕はこれで満足なのだ。後は彼女達なら上手くやるだろう。」

やれる事はやり切ったのでもう心残りはない。暫くはここから彼女達が生きていくのを見られれば良いと思う。

「せいぜい楽しく生きるんだぞ、お嬢さん方。」

フフフと笑うと副部長殿もつられて笑みを浮かべた。

今日も世界は平和だ。僕はそっと、呟いた。








―――君に幸あれ




それは、とある世界の神様と天使のお話。



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