暇を持て余して己の指と指で戯れる。顔を合わせるなり塗ったばかりのネイルに目ざとく気付いて褒めてくれた傑は、かれこれ五分以上、悟と電話を繋いだままだ。ひとりソファーに取り残された私は、窓際でこちらに背を向けて携帯電話に喋り続ける傑をじいと眺めていた。みんなで鍋をするにあたり、ゲームで負けた悟が買い出しに行ったはずだったのだけれども、はじめてのおつかいはまだ早かったのかもしれない。傑は電話越しにああでもないこうでもないと指示を出していた。これなら自分で行ったほうが早かったな、なんて思っていそうな顔。困っているけれど、どこか楽しそうな。
時計をちらりと見上げたことに他意はなかったのに、傑は急かされているとでも思ったのか、申し訳無さそうにひらりと片手を上げた。電話は繋いだままだったけれど、こちらへ戻ってきて二人がけのソファーに並んで腰掛ける。スプリングがギイと音を立てて軋んで、私は自然と傑の肩に頭を預けるかたちになった。
「両方買ってきなよ、足りないより余るほうがマシだろ」
じわりと伝わってくる体温と、鼓膜を震わす優しい声に意識を集中させてみれば、寝不足でもないのに瞼が重くなってくる。微睡みのなかで、ポイントカードがどうだとか、傑がそんな話をしているのが聞こえてきて、悟がようやっとレジにたどり着いたのだと分かった。結局、最初から最後まで電話繋ぎっぱなしだったなぁ。
「メモ書いてあげたのに、なんの意味もなかったね」
終話ボタンを押した携帯電話をソファーにぽいと放り投げると、傑は私の肩を抱いてこちらへもたれかかってきた。それはそれは整った顔が突然近くなると、ぱちりと目も覚めるもので。
「退屈だったでしょ。ごめんね、待たせて」
今からは、君だけの傑だよ、なんてふざけた口調で言われたその台詞を本当はすごく心待ちにしていたなんて、口が裂けても言えないし、そもそも私が一番認めたくないから、私は黙ったまま傑の太腿をぺちんと叩いた。
Fin.