22時。防衛任務は一度交代が入る。風間隊は嵐山と迅と東に仕事を引き継ぎ、帰宅。

「東さんこんばんは」
「おー、まだ夜間防衛しかやってないんだなー」
「隊を持ってないですしね。東隊が調子いいみたいで嬉しいです」
「お前も教えるのうまいんだから新しい隊を作ればいいのに」
「いえいえ、もう自分は夜のボーダーでいますよ」
「ははは、なんだそれ」

東さんは歳が近いからタメ口でいいなんて言うけれど、それはちょっと違うかなと思う。東さんは大人の落ち着きというか、頭の回転も早いし、ランク戦の解説もすごい。戦術をたくさん考えられるのだろう。尊敬という意味での敬語だ。

「司さん久しぶりですね!」
「嵐山も元気そうだなー。最近テレビでもよく見てるよ。頑張ってんな。今度また鍋パしようぜ!」
「おー! みんなに言っときますね!」

軽い雑談も終えて、それぞれ別れて場所に着く。

夜は好きだ。色々なものが見える。いつも真っ暗な室内で小南が撮ってきた写真を見るのがとても楽しかったけれど、あの日、迅と最上さんが初めて見せてくれた夜空が大好きだ。星がキラキラと輝いていて、初めて自分の目で見た嬉しさがあった。

静かで綺麗な星が輝くだけ、特に何も起こらない。それが一番平和だ。

夜間防衛をしていてこれほどまでに嬉しいことはない。

東さんが言っていたけれど、もしも自分が隊を持ったらどうなるのだろう。心の底から楽しめるだろうか。最初からひとりだったし、今まで一度も隊を持ったことがない自分が隊を持つなんて想像ができなかった。

夜間防衛は続けていきたいからできれば全員ボーダー職員がいいな。大学生も多いけれど、やはり学業を大切にして欲しい。いつか近界民がいなくなった世界でも生きていけるように。

そんな日を願っているけれど、ボーダーがなくなったら自分はどこへ行くのだろう。必要とされる場所などあるのだろうか。

色々と考えながら、次の1時の交代までトリオン体ではあり得ない欠伸をしながら、今は三門市を見守るしかなかった。


夜の鷹
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