迅に案内されるままにリビングに着くと、そこには見知らぬ3人が居た。

「えーっと、はじめまして藤宮司です」
「はじめまして三雲修です」
「雨取千佳です」
「空閑遊真だ。よろしく」

とっても軽い挨拶をしたけれどこの先何を話せばいいのか分からなくて視線を揺らしていると三雲くんが「すみません質問いいですか?」と律儀に聞いてきた。俺なんかに礼儀正しすぎるだろ。いい子に決定。いきなり模擬戦しよーぜ!と言ってくる弾バカと槍バカは見習って欲しい。

「なんだ?」
「藤宮さんって主に夜間防衛をやってる藤宮さんですよね?」
「おー、よく知ってるね」
「ずっと気になっていたんですけど、藤宮さんはおいくつ何ですか?」
「へ?」

予想外の質問に驚いていると、迅がニヤニヤした顔を向けてきた。なんだこいつ。

「メガネくん、何歳に見える?」
「なんでお前が返事してんだよ! 三雲くん考えなくていいよ、俺はふがっ!!」

三雲くんの質問に答えようとしたら迅は後ろから腕を首に回して気道を塞いできやがった。ヤバイこれマジなやつだ。死ぬ。落ちる。

「ほらほらメガネくん。早くしないと藤宮さんが落ちちゃうから」
「えっ、えっと、迅さんが敬語だし、21歳でしょうか?」
「だってさー、藤宮さん」

腕が外れたので落ち着いて息を整えたら、今度は大きく息を吸ってから迅を思いきり殴っておいた。今のはかなり決まってた。いいパンチ。今の感覚を覚えておこう。

「ごめんね三雲くん。俺は24歳、専門は攻撃手だけど射手もできるよ。学生じゃなくてボーダー職員兼戦闘員だから夜間防衛が主な仕事」
「え! そうなんですか!? 僕らとあまり変わらないのに夜間防衛なんてすごいと思っていたので……」
「あ、いえ、好きでやっているので……」

お互いがぺこぺこと頭を下げていると空閑が俺の下から顔を覗かせてきた。ふわふわの白い髪から優しい香りがして心が穏やかになったのに、その下の瞳は鋭く俺を見つめていた。

「藤宮さんっていつからここにいるの?」
「え? よく分かんないけどボーダーに入ったのはずっと昔だよ?」
「へぇ、そっか」

きらりと瞳を光らせた空閑は「嘘はついてないみたいだね」なんて言ってみせた。

「空閑くんのそれはサイドエフェクト?」
「遊真でいいよ」
「遊真は嘘が分かるんだね。辛くなったら俺の所に来いよ。俺は嘘つかないから」
「みたいだね。ま、おれは辛いとか思わないけど」
「そうか?」

迅もそうだけど、本当にサイドエフェクト持ってる人って気丈だと思う。俺なんて小南が居なかったらずっと引きこもってたし、友達なんて居なかっただろうな。今でもこの目は嫌いだ。トリオンが目から涙のように溢れる錯覚がして気持ちが悪くなる。

でもそれを綺麗だと言ってくれた小南には感謝してる。

「あ、そうだ。これあげるね。携帯番号ここに書いてあるからいつでも電話して」

一応職員でもあるため念の為に持っていた名刺がここで役に立った。人に渡したのは2年ぶりかな。


夜の鷹
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