こいつらのこと、よろしく頼むよ。と言った迅はそれ以上何も言わなかった。

玉狛支部から本部に戻ると時刻はもうすぐ12時。結局荒船に会えなかった。狙撃手はどうかと聞きたかった。鋼はどうしてるのかな。元気かな。

眠気もやってきたし寝るか、と自室の扉を開けた時だった。スマホのバイブレーションが長く激しく続いた。着信か、と画面を見れば《風間 蒼也》と表示されている。蒼也はいいやつだ。俺が昼夜逆転している事を誰よりも一番理解しているから、こんな時間に電話をしてくるなんて今まで一度もありえなかった。

「もしもし?」
「藤宮さん今すぐ本部から離れてください。お願いします」
「えっ、蒼也? ん!? 蒼也!!」

応答するや否や、息継ぎもなく用件を伝えて一方的に通話を切られた。何で?俺、今からここで寝て、また夜勤なんだけど……。

しかし蒼也が意味のないことを言うとは思えなかったので自室から手短に洗面グッズとTシャツとパーカーとジーンズをトートバッグに詰め込んで外へ出た。スマホは電源を切ってバッグの底。

それほど徹底してやらなくてもとも思ったけれど、蒼也はきっとそうして欲しいだろうなと勝手に判断した結果だ。

トートバッグ片手にどこへ向かおうかとも思ったが、玉狛は今新人の相手で忙しそうだし、鈴鳴に行くことにした。久しぶりに来馬に会いたい。

あっ、スマホは電源を切ったし、連絡どうしようかな。鈴鳴も忙しかったらどうしよう。うーん。悩んでいても寝る時間が削られるばかりなのでとりあえず行ってみるか。

鈴鳴に着くと元気な声が聞こえてきた。太一だな。呼び鈴を鳴らすと(こん)が快く出迎えてくれた。そのままリビングに案内されて、来馬隊のメンバー全員に事情を説明すると頭を捻られたが、来馬の部屋を貸してもらえることになった。

来馬の部屋のベッドに潜って目を閉じると太一の叫び声が響いてきた。本当に賑やかでアットホームな隊だ。

ふと時計を見ると14時。俺、ちゃんと起きれるかな。


夜の鷹
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