時刻は昼の12時。欠伸をしながら机を部屋の隅に移動させて布団を敷く。スマートフォンのアラームを16時にセットして布団に潜り込む。今日の夜勤は誰と一緒かな、なんて予想しながら瞼を閉じた。
トントン
誰かが扉をを叩く音がする。
せっかくもう少しで寝付けると思ったのに誰だ。
「はーい入っていいからどうぞー」
動くことすら面倒だったので布団に入りながら返事をする。鍵はかけてないから大丈夫だろう。
ドアの開く音がして、訪問者は申し訳なさそうな声を出した。
「司さんレポート手伝ってください」
「太刀川かよ。やだ。何回目だ、殴るぞ」
「殴ってもいいので手伝ってください!」
「きもっ」
太刀川は頼みながら部屋の電気をつける。
「おいバカ急に電気つけんな! 俺の目を潰す気か!」
咄嗟に目を閉じながら怒鳴る俺に、太刀川は軽く謝りながら掛け布団を引き剥がそうとする。全力の抵抗をしたが、寝ている分、力は出せずペロリと剥がされ、そのまま横抱きにされてソファに座らせられた。俺はお姫様かよ。
音を聞く限り敷き布団は部屋の隅に移動させられて、代わりに机を出されたようだ。
太刀川はご丁寧に枕元に置いてあった眼鏡ケースから眼鏡を取り出して俺にかける。俺のサイドエフェクト知ってるなら急に電気をつけるな馬鹿。
「今日の17時までなんです助けてください」
「俺は今から寝るんだよ。」
「そう言わずに! お願いします!」
「くそ、帰る気無しかよ」
もう何度目だろうと思ったが太刀川がここまで来たら帰ることはないので仕方なく太刀川が持ってきた資料に目を通した。今回はこれか。
「で、レポートいくつあるの」
「ふたつ……」
「じゃあ俺が1つやるからお前はお前で1つ終わらせろよ」
「ありがとうございます!」
本棚の横に置いてある俺のノートパソコンを取り出してさっそくレポートを書き始める。大学も違えば教授も知らなかったが、俺の書き方で書いて、後で太刀川が書き換えるのはもはや暗黙の了解である。
「ねむい」
「すんません」
このやり取りはあと20回するだろうな。