まさかの15時。

太刀川とレポートをやっていたらもう15時だ。

俺のレポートは14時に終わったのに太刀川のレポートを手伝ったり、俺のレポートを修正していたら15時だ。いや、俺のレポートじゃない太刀川のレポート。もう眠くて頭が回んない。

「ありがとうございました」
「メールで提出できるやつで良かったな。ほらさっさと布団敷け。俺今から寝るから、今日の夜間防衛任務の隊員調べて声かけといて。アラーム16時半にかけとくけど起きれる気がしないから起こしに来てって言っといて」
「わかりました……」

静かに返事をした太刀川は荷物を片付け、机を動かし、布団を敷いた。俺は布団に潜り込むと眼鏡を外して就寝だ。16時30分に起きるとして、あと1時間半しか寝れないけど。

電気を消して戸を閉めた太刀川は、今日の夜間防衛任務のメンバーは誰だったかととりあえず同じ隊の出水を見つけて声をかけた。

「えーっとたぶん風間さん達の隊じゃなかったですかね?さっきロビーで菊地原が話してたのを聞きました」
「げーーー」
「また何かしたんですか?」
「またって何だよまたっ」

出水に先程までの流れを説明すると大きな溜め息をつかれた。

「藤宮さんの睡眠時間をとるなんて太刀川さんは本当にひどいですね」

俺でも昼に会いに行こうとは思いませんよ、と、わざとらしく欠伸をして見せる出水に、藤宮に対して急に申し訳なさを感じた。

出水にまた後でと伝えて、風間隊の隊室に足を向けた。隊室に行く途中で引き返して、16時半になったら自分が藤宮さんを起こしに行けばいいんじゃないかとも思った。でもきっと藤宮さんの体調も踏まえて伝えろってことなのだろうと、進まない足を無理矢理動かす。

ノックして開けた風間隊の隊室にはもう全員揃っていて、思い思いの時間を過ごしていた。

「どうした?」
「実は、藤宮さんに今までレポートを手伝ってもらっていまして」

風間に睨まれた太刀川は一瞬息を呑んだが、藤宮が言っていたことを再度思い返しながら伝えた。

「つまり藤宮さんは本調子ではなく、さらに迎えに来いということだな」
「はい。でも藤宮さんは俺が起こしに行きます。俺のせいですし」
「いや、いい。お前は帰れ」
「でも」
「俺が怒る前にさっさと帰れ」

菊地原と歌川と三上は背筋を震わせ、その威圧感に気圧された太刀川はそのまま礼を行って部屋を出た。

本当に風間さんは藤宮さんの事大好きだよなぁ。真面目同士気が合うのだろうか。

「あーあ、うさぎちゃんは本当に愛されてますねー」

太刀川のぼやきは誰にも届かずに地面に落ちた。


夜の鷹
5/34