コール・ミー・メイビー
「ねえさっき誰と電話してたの?」
「及川はいつ俺の彼女になったんだ」
「彼女!!」
「喜ぶな馬鹿」
朝のHRが始まる少し前、部活の終わった及川は篠岡の背中におぶさるようにくっついていた。
「中学の時の後輩」
「えーーー! 啓ちゃんの中学時代とか俺全然しらない! 教えて!」
「めんどくさい山田に聞け」
「山田ちゃん全然啓ちゃんの昔話してくれないんだよ!! なんでだと思う!?」
「しらねーよ」
山田は篠岡と及川を見てケラケラ笑っていたが及川はそんなことにも気づかずに「ねーねー」と篠岡の頬をツンツン人差し指で付いている。いい加減にしないと先生来るぞという周りの声もスルーされ、及川はずっしりと全体重を篠岡の背中に乗せ始めた。
「及川どうしたいの? 俺の過去が知りたいの?」
「知りたい!!」
「ここで及川くんに問題です」
「え」
「ここで俺の過去話を聞くと及川くんは一生俺とお電話できません」
「え」
「さあどうします?」
「あ、いや、え」
どうしようどうしようと迷う及川をぽいっと剥がして篠岡は授業の準備を始めた。
「どうしよう! どうしよーー!!」
「俺に聞くなよ!」
「痛い!」
近くに座っていたクラスメイトに助けを求める及川だったが、俺に振るなと言わんばかりに教科書で殴られた及川はようやく黙った。
「啓ちゃんーーーー」
「はぁ、そんなことしねぇよ。さっさと席付け馬鹿。今度暇な時にな」
及川が「やったー!!」と叫んだと同時に教科担当の先生が入室し「及川静かにしろ」と言うまであと3秒の朝のひととき。