▼ 泣きそうな空


月曜日は和泉さんと一緒に帰ろうと教室に向かうことが習慣になってる俺は、今日も意気揚々と和泉さんのクラスのドアを開く。

「和泉、行くぞ」

そうしたら、岩ちゃんが和泉さんを誘ってどっか行こうとしてるから驚いた。

「え?なに?岩ちゃん和泉さんとこの後何かあるの?俺に秘密でなにするの?ねぇねぇねぇ」
「うるせぇボゲ!」
「いっだあ!」

気になったから素直に聞いたのに、おもいっきり拳骨が落ちてきた。
いつものことだけどすぐ殴るのやめた方がいいと思うんだよね!そんなんだから岩ちゃんはモテないんだよ!

でも今は痛いとか言ってられない。それよりも岩ちゃんが和泉さんと2人で何をするのか調べることの方が大事だよ!

「及川も一緒にする?」
「え?」

まさかの和泉からのお誘いに、岩ちゃんに対する文句や問い詰めるべき言葉なんてものはどっかに飛んでいった。

「だって、和泉さん岩ちゃんとデートするんでしょ?」
「はぁ?お前なに言ってんだよ」
「岩ちゃんが女の子誘うなんて珍しいから」
「私が誘ったの」

和泉さんから誘ったの?岩ちゃんを?確かに同じクラスではあるけど、いつの間にそんなに仲良くなったの?

「岩泉、及川もいた方がいいと思う」
「別に俺はいいけど」
「行く!俺も和泉さんと一緒に行く!」

ちょっとした淋しさを押し隠すように挙手までして宣言したら、岩ちゃんはあきれた顔をしてた。和泉さんはいつもと同じ顔。

「だってよ」
「じゃあ、行こう」

なにをするのかはよくわかんないけど、和泉さんがいいって言ってくれたんだから岩ちゃんがなんと言っても着いていくけどね!

そう意気込んで岩ちゃんと和泉さんに着いて歩いてて気付いたんだけど、これっていつも歩く道なんだよね。昨日も明日も歩く、体育館までの道。

「岩ちゃん、体育館行くの?」
「おう」

そう言えば和泉さんの荷物がいつもより少し多いかも。

「なんで?」
「おまけの及川はとりあえず黙って着いてこい」
「かっこいいのかかっこよくないのかビミョーなセリフありがとう!」

体育館に向かってる理由を秘密にする意味はないと思うんだけど、なんで教えてくれないんだろう。教えてくれてもよくない?

「ねぇ岩ちゃん、自主練するの?」
「俺のじゃねぇよ」
「え?じゃあ和泉さん?」
「そう」

流れで和泉さんに声をかけたんだけど、まさか肯定されるとは思わなかった。

「え?なんで?」
「ちょっとだけやってみたくなったの」
「そうなの?」
「そう」

そっか。だから俺がいてもいいんだ。

「でもなんで岩ちゃんにお願いしたの?」
「1番近くにいたから」
「及川さんよく和泉さんのところ行くよね?俺に言ってくれればよかったのに」
「タイミング悪かっただけ」

それにしてもなんで俺に声をかけてくれなかったんだろう。タイミングなんていつでもあったはずなのに…
今言ったように、俺は誰が見てもしつこいと言われてもおかしくないくらい和泉さんの元を訪ねてる。今回の事を話すタイミングだっていくらでもあったはず。

「まぁいいけど」

もしかしたら和泉さんは気を使ってくれたのかもしれないからね。ほら、いつも俺がルールとか教えてるから申し訳ないと思ったのかも。

体育館に向かって歩きながら、ちょっとボールに触るだけだからボール以外なにもいらないってことになった。和泉さんがどれくらい動けるのかわかんないけど、俺達が和泉さんをおいて本気で練習するわけにもいかないし。

そう纏まったところで体育館について、ボールを手にしたところで和泉さんが制服のままなことに気付いた。

「和泉さん服どうするの?」
「スカートでやるわけにもいかねぇよな」
「ジャージ持ってきてる」

手提げの中からは体育館履きとジャスが出てきた。

「流石、用意がいいね」
「着替えるなら倉庫行くか?」
「大丈夫」

びっくりすることに、和泉さんはそう言うとその場でジャスを履いた。止める暇もないくらい一瞬だったから俺は勿論、岩ちゃんもあっけにとられてた。と言うか、何が起きたのか理解が追い付いてない。
ジャスを履いた和泉さんはと言うと、カーディガンを脱いで畳んでた。うん、行儀が良くていいと思うけどそうじゃない。先にした行動は全然行儀良くないからね。

「おま、女子なんだからもっと恥じらえ!」

岩ちゃんが怒るのも当然だよ。

「別に見られて減るものじゃないし」
「そうじゃねえだろ!」
「見えないように履いてるし」
「そういう問題じゃねえ!次から絶対すんなよ!?」
「…わかった」

怒られてるのに全然わかってなさそう。

「次からは隠れる」
「本当にわかってる?俺達からじゃないからね?男から隠れるんだよ?」
「知らない人の前でこんなことしない」

その発言が気を許してくれてるからだと思うとものすっごくかわいいけど!でも今はそうじゃない!

「誰が相手でも男の前はダメなんだからね?」
「こいつが頭ん中でなに考えてるかわかったもんじゃねぇからやめろ」
「岩ちゃん!勘違いされるようなこと言わないで!」

それじゃあ俺が変態みたいじゃん!やめてよね、もう!

「わかった」
「和泉さんもわからなくていいから!」


  
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