「あああ、神田さん!」
「ああ、レベル2のアクマだ」
神田だけに戦わせるわけにいかない。
生憎プライドなんてこれっぽっちも持てないくらい私は体も精神も弱いけど、逃げる事だけはしたらいけない!
ぶっちゃけほとんど初任務状態でレベル2とかちょマジ無理って感じだけど、そんなこと言ってられる状況じゃあない。
ちゃんとしないとと覚悟を決めてイノセンスを発動させると、アクマがきょとりと驚いた様子を見せた。
「あら。あなた、私と同じ武器なのね」
『いや、結構違うよ?こんなのなかなかないよ?』
私のイノセンスを見たアクマは、黒いケープの下から大きな鎌を取り出した。
やっぱり鎌だけじゃん。私のなんてなにかを殺すためのものが3つもついてるんだからな!そんなそこらにほいほいあってたまるか!
そもそもどうやってそこに入ってたんだろう?私だったら間違えて自分に刺しそう。
「東洋系だけど顔立ちも綺麗だし、あなたも私の下で魔女にならない?」
『丁重にご遠慮させていただきまーす』
まさかの勧誘。
エクソシストを勧誘するアクマがどこにいんだよ。これネタにできるかな。
「ゴズ!逃げろ!」
神田の声で思い出した。
そうだ。ここ室内だ!こんなとこであんなもん振り回されたらたまったもんじゃない。そこに私と神田まで交ざったら倒壊間違いなしだね。
「うわあっ!」
転がるように外に出ると、彼女はふわりと宙を舞い鎌を一振り。ゴズさんは大柄な体格に似合わない俊敏な動きでその攻撃をかわした。
『すごっ!』
私なんてバタバタ避けてるだけで、俊敏さも美しさもなにもない。どうやらゴズさんの動きには神田も驚いたらしく、目を丸くしているのを初めて見た。
「おまえ、何かやっていたのか?」
「ええ、フットボールを少々!」
「なるほど……」
なにがなるほどなのかわかんない。フットボールってどんなスポーツなの?そもそもスポーツで合ってる?
「アンジェラ!」
私が余計なことに思考を巡らしかけると、おじいちゃんの叫ぶ声で意識が引き戻された。
雑貨店から離れた私達と違って、おじいちゃんはまだ雑貨店の辺りにいた。
「もうやめてくれ!私が悪かった……頼むから、もう許してくれ。もうやめてくれ……これ以上、人が死ぬのを見たくない……」
今更だけどさ、たぶんおじいちゃんじゃないよね。ソフィアさんだかアンジェラさんだかがお父さんって言ってたし。
魔女は静かに話を聞くと、ゆっくりおじいちゃんに近付いていく。長くなった舌が、耳まで裂けた唇を舐める。その表情は何を思っているのか少しもわからないけど、ゆっくりと静かに鎌が振り上げられた。
「危ない!」
『ゴズさん!行くな!』
振り上げられた鎌を見て走り出したゴズに声をかけたけど、もう聞こえてない。
けれど、ゴズさんが近寄るよりも早く鎌が魔女の手を離れ、おじいちゃんの腹に深く潜り込んだ。噴き出した赤。アリスの嫌いな赤い赤い、おじいちゃんの命の色。それが流れて止まらない。
今受けた鎌が即死に値するのかはよくわからないけど、おじいちゃんはそのまま動かなくなった。刃を抜けば、当然なんだろうけど、糸の切れた人形のようにその場に崩れ落ちた。
「自分が起こした悲劇を見せつけるために生かしておいたけど……もう充分満足したわ」
人間はどう足掻いたところで後悔をしながら生きるものなんだよ。間違えない人間なんてどこにもいない。魔女だって人間だったからすがるべき相手を間違えた。それを責めることも、ましてや笑うことなんて誰もできない。
それなのに笑ったな?自分の父親だった人を殺して見下して嘲笑ったな?
がしゃりと重い音をさせて血染ノ乙女を構えた。
「カ、神田さん…アリスさん…斬るんですか?彼女を…」
「当たり前だ。あれはアクマだ。そして俺はエクソシストだ」
『個人的なものも混ぜていいなら、私、アレ嫌い』
私がなにか言ったところで、今更あのアクマやこの村がどうにかなるなんて思わない。だけどあれを壊さないとどうなるかって事はわかってる。
「やめてください!彼女は被害者でもあるんですよ!」
「馬鹿かおまえは」
「馬鹿でもいいです!俺も、これ以上人が死ぬところをみたくないんです!」
『本当、バカだなぁゴズは』
優しいを通り越して、バカみたいなお人好しだ。こんな世界じゃなければその優しさに救われる人がどれ程いただろう。
そして、そこに漬け込む人間がどれ程いるだろう。
「あれは人じゃない。アクマ、だ」
「あんたたちには、人の情ってものがないんですか!」
『いい加減うるっせえんだよ!』
だけどな、ぎゃんぎゃん喚いてウザい!なんの自慢にもならないけど、私決意とか決心とかめちゃくちゃに弱いんだよ!
『てめえはなんか勘違いしてんだろうけどな!情なんかじゃ何ひとつ救えねぇんだよ!』
そんなもんで人が救われるなら、こんな悲劇は1度だって起きねえだろうよ。
「ふんっ魔女の力、見せてやるわ。出てこい!」
神田が走り出したと同時に魔女の声が静かすぎる村に響いて、ざわりと空気が怯えたように揺れた。
「カ、神田さん……」
次の瞬間、恐ろしい程に静かだった村に無数の足音が響き、雑貨店の前に続々と村人が集まってきた。
『マジか……』
「……村人全員、アクマにしてやがったのか」
「そいつらを殺せ!」
アクマ達はずいぶん魔女に忠実なようだ。全員、一般的に武器と言われるようなものを持って集団で襲い掛かってきた。
「おまえらは離れてろ!」
そう言って神田はアクマの群れに突っ込んでいった。
おい、いきなり戦力外通告かよ。
確かに私はまだ弱いし血染ノ乙女だって重いけど、素直に戦力外通告を受け取るわけにいかない。最弱でも私だってエクソシストなんだから。
『神田ばっかいいかっこしてんじゃねぇそ!』
こいつら動きがそこまで俊敏じゃないからまだやりやすい。上から後ろから、鎌とギロチンで確実に首を落としていく。
別に壊せれば首じゃなくてなんだっていいんだけど…ほら、形状的に首の方が格好つくじゃん?
まだ戦い慣れしてない私でもそれなりに壊してるのに、数が多すぎて全然減ってる気がしない。
ここの村人意外と多かったんだな!
「ゴズ!」
『神田?!』
目の前の事に必死な私と違って、逃げるしかできないゴズに神田はずっと気を配っていたんだろう。
神田はゴズさんの下まで走りその体を突き飛ばすと、そのままアクマの振り下ろした斧を正面から受けた。
『ユウ!』
「うわあああ、神田さん!」
「来るな!」
「で、でもそんなに血が!傷口からアクマのウィルスに感染します!」
「俺にはアクマのウィルスはきかない!いいから離れてろ!」
ウィルスがどうとか斧で切るとどうとかやっぱりよくわかんないけど、血の量からして、浅い傷なわけがない。早く手当てして帰らなきゃ、感染云々よりも先に失血死する可能性がある。その為には目の前のアクマを全部倒さなきゃいけなくて…
『だからてめえらは邪魔なんだよ!おとなしく寝てろ!』
とりあえず今の状況がヤバいって事だけは私にもわかる。
早く片付けないと、このまま数にものを言わせて持久戦に持ち込まれたらたまったものじゃない。
「……さすがね、エクソシスト。でも私にかなうかしら?」
「ほざけ」
『…神田?』
神田が動かなくなった。ゴズさんはとりあえず離れたところから神田を繰り返し呼んでる。
神田のやつ、こんな時にいきなりおとなしくなってどうしたんだ?いくらなんでも誰かを守りながら戦うなんてちょっと厳しいんだけど…もしかして、意識が飛んだ?
『…お前、なにしやがった』
イノセンスがギシリと軋んだ。
「さっきから聞いてたけど、あなた顔に似合わず口が悪いのね。そんなんじゃあお嫁に行き遅れるわよ?」
『あんたに言われたくねぇよ』
「あら!私はお嫁になんていかないわ。伯爵様の下でずぅっと魔女であり続けるの」
あんたはお喋りがすぎるね。そんな女もダメなんだよ。
血染ノ乙女、アリスがどんな思いであんたと共にアクマと戦ってきたのか、私にはわかんない。でも、だからこそ私は私の思いで戦う。
アリスの世界を守るために、アリスに恥じる事なくここで生きるために!
『神田を元に戻せ!』
「ああ、レベル2のアクマだ」
神田だけに戦わせるわけにいかない。
生憎プライドなんてこれっぽっちも持てないくらい私は体も精神も弱いけど、逃げる事だけはしたらいけない!
ぶっちゃけほとんど初任務状態でレベル2とかちょマジ無理って感じだけど、そんなこと言ってられる状況じゃあない。
ちゃんとしないとと覚悟を決めてイノセンスを発動させると、アクマがきょとりと驚いた様子を見せた。
「あら。あなた、私と同じ武器なのね」
『いや、結構違うよ?こんなのなかなかないよ?』
私のイノセンスを見たアクマは、黒いケープの下から大きな鎌を取り出した。
やっぱり鎌だけじゃん。私のなんてなにかを殺すためのものが3つもついてるんだからな!そんなそこらにほいほいあってたまるか!
そもそもどうやってそこに入ってたんだろう?私だったら間違えて自分に刺しそう。
「東洋系だけど顔立ちも綺麗だし、あなたも私の下で魔女にならない?」
『丁重にご遠慮させていただきまーす』
まさかの勧誘。
エクソシストを勧誘するアクマがどこにいんだよ。これネタにできるかな。
「ゴズ!逃げろ!」
神田の声で思い出した。
そうだ。ここ室内だ!こんなとこであんなもん振り回されたらたまったもんじゃない。そこに私と神田まで交ざったら倒壊間違いなしだね。
「うわあっ!」
転がるように外に出ると、彼女はふわりと宙を舞い鎌を一振り。ゴズさんは大柄な体格に似合わない俊敏な動きでその攻撃をかわした。
『すごっ!』
私なんてバタバタ避けてるだけで、俊敏さも美しさもなにもない。どうやらゴズさんの動きには神田も驚いたらしく、目を丸くしているのを初めて見た。
「おまえ、何かやっていたのか?」
「ええ、フットボールを少々!」
「なるほど……」
なにがなるほどなのかわかんない。フットボールってどんなスポーツなの?そもそもスポーツで合ってる?
「アンジェラ!」
私が余計なことに思考を巡らしかけると、おじいちゃんの叫ぶ声で意識が引き戻された。
雑貨店から離れた私達と違って、おじいちゃんはまだ雑貨店の辺りにいた。
「もうやめてくれ!私が悪かった……頼むから、もう許してくれ。もうやめてくれ……これ以上、人が死ぬのを見たくない……」
今更だけどさ、たぶんおじいちゃんじゃないよね。ソフィアさんだかアンジェラさんだかがお父さんって言ってたし。
魔女は静かに話を聞くと、ゆっくりおじいちゃんに近付いていく。長くなった舌が、耳まで裂けた唇を舐める。その表情は何を思っているのか少しもわからないけど、ゆっくりと静かに鎌が振り上げられた。
「危ない!」
『ゴズさん!行くな!』
振り上げられた鎌を見て走り出したゴズに声をかけたけど、もう聞こえてない。
けれど、ゴズさんが近寄るよりも早く鎌が魔女の手を離れ、おじいちゃんの腹に深く潜り込んだ。噴き出した赤。アリスの嫌いな赤い赤い、おじいちゃんの命の色。それが流れて止まらない。
今受けた鎌が即死に値するのかはよくわからないけど、おじいちゃんはそのまま動かなくなった。刃を抜けば、当然なんだろうけど、糸の切れた人形のようにその場に崩れ落ちた。
「自分が起こした悲劇を見せつけるために生かしておいたけど……もう充分満足したわ」
人間はどう足掻いたところで後悔をしながら生きるものなんだよ。間違えない人間なんてどこにもいない。魔女だって人間だったからすがるべき相手を間違えた。それを責めることも、ましてや笑うことなんて誰もできない。
それなのに笑ったな?自分の父親だった人を殺して見下して嘲笑ったな?
がしゃりと重い音をさせて血染ノ乙女を構えた。
「カ、神田さん…アリスさん…斬るんですか?彼女を…」
「当たり前だ。あれはアクマだ。そして俺はエクソシストだ」
『個人的なものも混ぜていいなら、私、アレ嫌い』
私がなにか言ったところで、今更あのアクマやこの村がどうにかなるなんて思わない。だけどあれを壊さないとどうなるかって事はわかってる。
「やめてください!彼女は被害者でもあるんですよ!」
「馬鹿かおまえは」
「馬鹿でもいいです!俺も、これ以上人が死ぬところをみたくないんです!」
『本当、バカだなぁゴズは』
優しいを通り越して、バカみたいなお人好しだ。こんな世界じゃなければその優しさに救われる人がどれ程いただろう。
そして、そこに漬け込む人間がどれ程いるだろう。
「あれは人じゃない。アクマ、だ」
「あんたたちには、人の情ってものがないんですか!」
『いい加減うるっせえんだよ!』
だけどな、ぎゃんぎゃん喚いてウザい!なんの自慢にもならないけど、私決意とか決心とかめちゃくちゃに弱いんだよ!
『てめえはなんか勘違いしてんだろうけどな!情なんかじゃ何ひとつ救えねぇんだよ!』
そんなもんで人が救われるなら、こんな悲劇は1度だって起きねえだろうよ。
「ふんっ魔女の力、見せてやるわ。出てこい!」
神田が走り出したと同時に魔女の声が静かすぎる村に響いて、ざわりと空気が怯えたように揺れた。
「カ、神田さん……」
次の瞬間、恐ろしい程に静かだった村に無数の足音が響き、雑貨店の前に続々と村人が集まってきた。
『マジか……』
「……村人全員、アクマにしてやがったのか」
「そいつらを殺せ!」
アクマ達はずいぶん魔女に忠実なようだ。全員、一般的に武器と言われるようなものを持って集団で襲い掛かってきた。
「おまえらは離れてろ!」
そう言って神田はアクマの群れに突っ込んでいった。
おい、いきなり戦力外通告かよ。
確かに私はまだ弱いし血染ノ乙女だって重いけど、素直に戦力外通告を受け取るわけにいかない。最弱でも私だってエクソシストなんだから。
『神田ばっかいいかっこしてんじゃねぇそ!』
こいつら動きがそこまで俊敏じゃないからまだやりやすい。上から後ろから、鎌とギロチンで確実に首を落としていく。
別に壊せれば首じゃなくてなんだっていいんだけど…ほら、形状的に首の方が格好つくじゃん?
まだ戦い慣れしてない私でもそれなりに壊してるのに、数が多すぎて全然減ってる気がしない。
ここの村人意外と多かったんだな!
「ゴズ!」
『神田?!』
目の前の事に必死な私と違って、逃げるしかできないゴズに神田はずっと気を配っていたんだろう。
神田はゴズさんの下まで走りその体を突き飛ばすと、そのままアクマの振り下ろした斧を正面から受けた。
『ユウ!』
「うわあああ、神田さん!」
「来るな!」
「で、でもそんなに血が!傷口からアクマのウィルスに感染します!」
「俺にはアクマのウィルスはきかない!いいから離れてろ!」
ウィルスがどうとか斧で切るとどうとかやっぱりよくわかんないけど、血の量からして、浅い傷なわけがない。早く手当てして帰らなきゃ、感染云々よりも先に失血死する可能性がある。その為には目の前のアクマを全部倒さなきゃいけなくて…
『だからてめえらは邪魔なんだよ!おとなしく寝てろ!』
とりあえず今の状況がヤバいって事だけは私にもわかる。
早く片付けないと、このまま数にものを言わせて持久戦に持ち込まれたらたまったものじゃない。
「……さすがね、エクソシスト。でも私にかなうかしら?」
「ほざけ」
『…神田?』
神田が動かなくなった。ゴズさんはとりあえず離れたところから神田を繰り返し呼んでる。
神田のやつ、こんな時にいきなりおとなしくなってどうしたんだ?いくらなんでも誰かを守りながら戦うなんてちょっと厳しいんだけど…もしかして、意識が飛んだ?
『…お前、なにしやがった』
イノセンスがギシリと軋んだ。
「さっきから聞いてたけど、あなた顔に似合わず口が悪いのね。そんなんじゃあお嫁に行き遅れるわよ?」
『あんたに言われたくねぇよ』
「あら!私はお嫁になんていかないわ。伯爵様の下でずぅっと魔女であり続けるの」
あんたはお喋りがすぎるね。そんな女もダメなんだよ。
血染ノ乙女、アリスがどんな思いであんたと共にアクマと戦ってきたのか、私にはわかんない。でも、だからこそ私は私の思いで戦う。
アリスの世界を守るために、アリスに恥じる事なくここで生きるために!
『神田を元に戻せ!』