いい加減に反省しなさい


アレンは手術と言う名の修理に相当なトラウマを持ってるらしく、チビコムイを見るとひきつった顔をして焦ったようにイノセンスを発動した。

「おおっ新しい対アクマ武器!」
『アレン!そのまま、』
「ふにゅら?しびれるる」
『は?』

攻撃しようとしたアレンが壊れた。と言うか、何かされた?
アレン救出の為に腕やらコートやら引っ張ってるから、見るまでもなくすぐにわかった。いきなりアレンの筋肉が弛緩したと思えば同時にイノセンスまで元に戻る。
これは、まさか…

「アレンー」
「ウォーカー殿ーーー!!」
『コムイてめえなにしやがった!!』
「吹き矢なんか持ってたぞ!」
「奪え!」

速効性の麻痺毒でも盛ったのか!
アレン救出作業を邪魔すんなっつの!制作者までポンコツかよ!

「手術♪手術♪」
『だぁーかぁーらぁ!ダメだって言ってんだろがこのポンコツ野郎!イノセンスはっ』

今度は完膚なきまでに叩き壊してやる。そう思ったのに、首に軽い衝撃。次いで手が痺れる。

「まだ持ってたぞ!」
「なにやってんスか室長!」
「だってだって、あの2人に攻撃なんてされたらまたコムリンが…っ!!」
「大人になってください室長!!」

くそ、コムイに背を向けた私が悪いのか。麻痺して全然力入んないんけど、これ速効性ありすぎじゃない?使い所間違えてるから!
アレンは絶対に助ける!あとコムイは後で絶対に殴るから覚悟しとけ!

「リ、リーバーしゃん…リナリーをちゅれて逃げてくらしゃい…アリスも…」
『やりゃ!』
「アレン…」
「ぱやく…」
「アレン・ウォーカー収容完了しました」

私が必死にアレンを引っ張ってたのに、アレンはあっさりコムリンに飲み込まれた。

『んあー!!』
「アレンンンンーーー!!」

諦め悪くアレンのコートを引っ張った所で少しも動かない。麻痺した私の力が全然入っていないのか、しっかりコートを噛んでるだけなのかはわからない。

でも諦めたらアレンが修理される。ただでさえ怖がってたのに、それをよくわからないロボがするなんて余計に怖いだろう。今こいつを壊せるのは私しかいないなら、諦めるわけにいかないだろ。

壊す前にまずアレンを助けよう。そう思ってなんとか入り口をこじ開けられないかと奮闘してたら、うっかりアレンに気をとられ過ぎたらしい。

『ひゃあん!』
「アリス!!」

コムリンが左足を掴んでアレンから離そうとしてくる。でもそう簡単にアレンから離れてなるものか。私がアレンから離れたらお前修理始めるだろ?

え、まだ始めてないよね?大丈夫だよね?アレン生きてる?

「エクソシスト、アリス・チカチーロ、手術します」
『いらん』
「…ザコ」
『るっしぇえこんポンコチぎゃあ!』

お前にまで言われたくねぇ!
前回のデータは残ってないはずなのにこいつにも言われるってことは、私を雑魚としてインプットされてるってことだ。ならそれをインプットしたのは誰だ。制作者、それすなわちコムイ!あいつ絶対許さん!

『にゃあー!離しちぇー!や!こら逆しゃまにするにゃっちぇ!』

つーか舌まわんない!力はいんない!これは酷い!
しかも力任せに蹴っ飛ばしたら、掴んだ足をそのまま上に上げて吊られた。要するに逆さ吊りです。

『やぁー!!』

知ってるかい?私の団服って、スカートなんだぜ?
動きづらいから偶然捕まえたタップに理由を聞いたら、アリスの希望だって言ってた。アリスの希望なら私が変えるわけにもいかないかと思ってそのままにしてたんだけどさ、それが見事に裏目に出たよね!
こんなことされたらパンツ見えるっつの!

そこ!見るんじゃないよ科学班!見るな見るな!

『うあーん!』
「ちくしょお、アリスにリナリーもかよ!!」

班長冷静すぎ!イケメンじゃなくて変態みたいだよ!どこにいるんですか!

「エクソシスト、リナリー・リー、手術シマス」
「マッチョは嫌だー!!」
『私もやらぁー!!』
「マッチョは嫌ー!!起きるんだリナリー!!」

やだやだやだあ!雑魚マッチョになんてなりたくないけど、リナリーがなるなんてもっとダメー!捕まってる私になにが出来るかとかわかんないけど、とにかくダメ絶対!!

暴れる私を無視して、ポンコツロボコムリンはあろうことかリナリーに攻撃しました…ジーザス…

「キャアアアアーリナリー!!リナリー!!ボクのリナリー!!」
「室長落ちる!!」
「!し、室長あれ!」
「!」
「大砲の先…」

コムリンが攻撃した先、大砲の先を包んでいた煙が消えるとそこにはリナリーが立っていた。

「リナリー!!」
「アリスと…アレンくんの声が聞こえた…2人とも…帰ってきてるの…?」
「エクソシストは手術ー!!」
「どえーっっ」

なにがあってもリナリーを手術したいのかポンコツは銃火器…もう大砲でいいや。大砲に飛びついた。もちろんポンコツの重さが加わって乗り物が傾くと、それに伴い何人か落ちる。

マジ迷惑だなこいつ。

「リナリー!!この中にアレンがいるんだ!」
『リナリーたしゅけちぇー!』

イノセンスを発動したリナリーは、まだ寝ぼけているのかぼんやりしている。ふらりと大砲の先でバランスを取りながら、アレンのコートにぶら下がったリーバー班長の言葉をゆっくり理解していく。
科学班のみんなが落ちるとかなんとか言ってるけど、私はまずこいつの手から逃れたい!薄情でごめん科学班のみんな!今の私は私のパンツが見られないようにする方が大切です!

私はポンコツの手にあたる部分を蹴り飛ばしながらリナリーを見た。
リナリーの視界に私が入ったかはわからない。本当に起きてるのか怪しいくらいぼんやりしてるから。だけどちゃんと意識はあるらしい。俊敏で、それでいて優雅で、見ているものを魅了するような動きでコムリンに踵を落とした。

『きゃわ!』
「っと、大丈夫だったか?」
『リーバー班長…』

リナリーの攻撃に驚いたのか、ポンコツはさっきまでなかなか離してくれなかったのが嘘のように、あっさり私を手離した。もちろん私はそのまま落とされたんだけど、リーバー班長がうまく受け止めて助けてくれました。
…これは、惚れていいやつかな?

『はっ!リナリーは?!』

そんな寝惚けたこと言ってる場合じゃない!本調子じゃないリナリーがあんなの相手にするなんて危なすぎて任せられない!

班長に引っ付いて私もアレンのコートを掴む。正直力が入んないから引っ付くだけでも精一杯。

「大丈夫だ。アリスも知ってるだろ?イノセンスを発動したリナリーを捕らえられるもんか…胡蝶のように天空を舞い、鋼鉄の破壊力で地に墜ちる。それがリナリーの対アクマ武器【黒い靴】…だろ?」

なんか…かっこいい。私もそんな謳い文句欲しい。
私ならどんなのがいいかな。刃物系は神田と被るから…いや、ないな。第一私のセンスで作るものじゃなかった。そもそも、自分で自分の謳い文句作るとかないわ。自惚れか!自信過剰か!!

あと思ったんだけどさ、人1人抱えてぶら下がる班長凄くない?あと人2人分の重さがかかってるコートの丈夫さ凄くない?アレンの首締まってないよね?生きてる?

そんなことを考えてる内に、機械のひしゃげる音がした。

ついに壊れたかと真っ二つにされたコムリンの中を見ると、アレンは包帯でめちゃくちゃに巻かれていた。それにコートはアレンじゃなくて入り口に絡まっていたらしい。
アレンの首が締まってなくてよかった。

「アレン!無事か!?」
「なんとか…」
『よかっちゃー』
「アリス?」
『しらまわんにゃいにょ』

なに言ってるのか伝わってるのかな?
まあ伝わんなくてもいいや。じきに治るだろうし。

「いいぞリナリー!ブッ壊せー!!」

コムリンのターゲットは、攻撃してきたリナリーに限定されたらしい。
歩く事もままならない私は班長に連れられてコムリンから離れる。その間、科学班員からの盛大なぶっ壊せコールに応えるようにふらりとリナリーが動いたが、またしても邪魔が入った。
もちろん原因(コムリン)を作ったバカ(コムイ)だ。

「待つんだリナリー。コムリンは悪くない!悪いのはコーヒーだよ!!」
「ゲ、室長っ」
「いつの間にあんなトコへ」

ほんと、懲りないやつだ。

「罪を憎んで人を憎まず、コーヒーを憎んでコムリンを憎まずだリナリー」
「兄さん…いい加減にちょっと反省してきて」

意外なことにリナリーは怒ってるらしい。迷わずに踵を落として、コムリンごとコムイさんを階下に落とした。

今回はさすがに許しがたいからシメるって決めてたけど…リナリーにあんなことされたらちょっと可哀想かも。お説教は軽くしてあげよう。

『まったく…なんだかな…もう』
「…アリス?」