▼ 明後日の方角


「岩泉」
「ああ、」

病院から戻ってきた及川が、どっかから和泉を連れてきた。

さっさとアップに出た及川は気付いちゃいねぇだろうが、和泉はかなりの注目を浴びてる。
もともと噂に事欠かない和泉だからそりゃ注目もされるだろうが、トドメと言わんばかりに及川がここに連れてきた。しかもベンチに座らせやがった。

あのボケ、自分がなにしてんのかわかってんのか?

「アレいいの?」
「知らん」
「そんな言い方ねーべ」
「監督がなにも言わねーなら俺らが何言っても意味ねーべや」
「まぁそーだけど」

及川がちゃんと考えての行動なのか、それとも思い付きでした行動したのか。こればっかりは本人にしかわかんねえ。
ギャラリーからものすごい視線を食らってるにも関わらず、まったく気にせず大人しく監督の隣に座ってるくらいだから大丈夫だろうけど…なんかあってからじゃ遅ぇべ。

つーか監督の方がビビってるし。

「初めて近くで見ますけど、本当に綺麗な人なんスね」
「あれ?金田一はあんまり和泉のこと見たことなかったの?」
「はい、遠目で見かけることがあるくらいでした」

なんか知らんが、烏野のやつらも和泉が気になるのかチラチラ視線を感じる。
いきなり制服の女子が現れてベンチに座ったら、俺が烏野だったとしても同じ行動を取るだろう。

「ま、和泉のことは気にしなくていージャン?」
「そうだな。俺らは外野なんて気にしねえでいつも通りやるぞ」

気にしないようにすることもどうかと思うが、そんなもん試合してれば忘れんだろ。

「おら、及川が戻ったときあいつの出番なんてないようにするべ」
「なにそれ面白い」
「よーし、及川いなくても問題ねーって証明するべー」


△ ▽ △


結果だけ言うなら、俺達は烏野に負けた。
及川がアップから戻るまでに試合は終わらず、ラスト2点の時に及川がピンサーに入った。それでも巻き返しは出来ず、影山とチビの5番の、訳のわからん速攻に最後取られた。

ナメてたわけじゃねぇ。点差だって大きく引き離されてたわけじゃなかった。それでも負けたのは、2セット目からあの5番に振り回された結果か。

「なー、岩泉ー」
「なんだ?」
「及川いねーけど」
「ぁあ?」
「あ、及川さんならさっき、和泉さんのこと見送ってくるって言って一緒に出ていきましたよ」
「なんだよー、主将様はサボりかー?」
「見送りついでに烏野に挨拶でもしてるんじゃない?最初いなかったし」
「あーね」

及川にかぎってサボりなんてねーだろ。逆に今日まで練習の制限されてたからオーバーワークの方が心配だろ。

「この後及川抜きでやる?」
「そうしてぇが後で困んだろ」

許可出たのに練習させなかったらうるせえし自主練が終わんなくて体育館閉めらんなくなるしで、いいことなんて何1つねえだろうな。

「じゃー呼んでくる?」
「俺やだ」
「俺も。岩泉は?」
「は?いかねぇよ」
「だよな」

なんで及川なんかのために動かなきゃいけないんだよ。校外ならともかく、今日は校内なんだからほっといてもいいだろ。

「及川なら休憩終わりに合わせて勝手に戻ってくるべ。俺らは練習するぞー」
「おー」
「マジで及川いいわけ?」
「休憩終わっても戻らないなら連れ戻す」
「任せた」

次烏野とやる時はぜってー負けねえ。


  
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