▼ どうしようもない憂鬱の色
どこか遠いところを見つめた和泉さんを見て、心臓を捕まれたような感覚がした。キュンとしたとかドキッとしたなんてものじゃなくて、冷たいものが背中を這って伝うような、嫌なもの。
勘違い、だと思いたい。
「これなんて似合いそうじゃない?」
「そうですか?」
そう思うことにしてフラりと立ち寄るのは、女の子が好きそうなお店。和泉さんの雰囲気に合いそうなお店を選んで、入り口を少し見たり話したり。どれも興味は持ってもらえないみたいだけど。
「私に気を使って頂かなくとも結構です。モールを選んだと言うことは、及川もなにか欲しいものがあったのではないですか?」
特に必要なものはないんだけど、ここでないって言っても気を使われたと思ってしまうかもしれない。
「じゃあちょっとだけいい?」
なら適当にお店を見た方がいい。
何が欲しいわけでもないから、なんとなく目についたお店に入った。和泉さんもキョロキョロしながらちゃんと後ろをついてきてくれてる。
少しだけカモの親になった気分。
「ねぇねぇ、これなんてどう?」
目についたシャツを和泉さんに見せてみる。
…え、和泉さん黙っちゃったんだけど。センス光りすぎてびっくりしてる?いやー、照れちゃうなー。
「ダサいです」
「ガーン!」
否定だった。イギリス国旗のシャツかっこよくない?ダメなの?
「じゃあこっちは?」
「ないです」
「じゃあこれ」
「イミフです」
俺が選ぶやつ全部否定されるんだけど!
「じゃあどれならいいの?」
「…今選んだ中でどれが1番気に入ったんですか?」
「うーん…」
買う買わないは置いておいて、今1番気に入ってるやつ…
「これかな」
「趣味悪いですね」
「ちょっと!」
別にいいでしょ!イギリスかっこいいじゃないのさ!
「それ、家にある服と合わせられるんですか?」
「こう言うのいくつかあるよ?」
「バカですか」
「バカってなに!?」
なんか今日ひどくない?!なんで!?
いや、慣れてきてくれてるのならそれはそれでいいんだけど、思ってたよりはっきりとものを言う子なのかな。
「柄に柄合わせるなんてかなりセンスがないと難しいですよ」
「いや、流石にそれはしないし、どっちかと言うと俺センスの塊だと思うんだけど」
「未来永劫ジャージと制服以外着ない方がいいと思います」
「なんで!?あとジャージ…?」
「部活着以外はお召しにならない方がよろしいかと存じます」
「それどう言うこと?」
あと高校卒業したら私服だから必然的に無理だよね。
「え、じゃあ今日のこれもなし?」
今日は部活もないしせっかくのデートだから靴下くらいはと思って結構悩んだんだけど、ダメだった?及川さんかっこよくない?
「辛うじてなしです」
「辛うじてなし…!」
「そもそもその靴下どうしたんですか」
「どうもしてないよ?」
「…はぁ」
ため息!結構深いやつ!
「そのシャツは絶対着ないでください」
「えー」
「及川なら元がいいからどんなものでもそれなりに着こなせるんでしょうけど」
「え」
なんかいきなりすごいほめられてる…?
「ちゃんとうまいことやってくださいね」
「うん」
「あと、そのワケわかんない靴下もやめてください」
「はい」
「顔はそれなりにいいんですから、ごちゃごちゃさせずにシンプルにまとめればいいんですよ」
「及川さんかっこいい?」
「周りが言ってるんだからそうじゃないんですか?」
もー!なんなの!?和泉さんツンデレなの!?
「俺も和泉さんの服選んでもいい?」
「まともなのでお願いします」
「任せて!」
よーし。絶対ぎゃふんと言わせてみせる!
「じゃああっちのお店行こう!」
「はい」
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