2時間目の前

朝イチの眠くなる時間を乗り越え、落ち着いて迎えた授業間の短い休憩時間。

「ちょっと隣行ってくる」
「いってらっしゃーい」

クラスで仲がいいこにもバレンタインのパウンドケーキを渡して、目指すはお隣鷲尾のクラス。

「鷲尾いるー?」
「いるよー。ちょっと待って」

扉のところにいたのは去年同じクラスだったさゆさゆ。声をかけると、すぐに鷲尾を見つけ出して呼んでくれた。

「やっほー」
「どうした?」

木兎達のテンションのあとだからか、鷲尾がやたら大人に見える。

「毎年恒例のおやつでーす」
「お、今年も悪いな」
「好きで作ってるだけだから気にしないで」

なんだかんだ渡すと嬉しそうにしてくれるから、こっちも作りがいがあるってものだ。

「さっき木兎来てただろ。その前は小見」
「やっぱわかった?」
「あれだけ騒げばな」

とりあえず木兎めっちゃうるさい。デカいしうるさいとかホント迷惑。たまに怖いときあるし。
それに比べたら小見はまだかわいいもんだと思うよ。なんか愛嬌あるしね。

「木葉は比較的静かだったよ」
「あいつ普段は大騒ぎしないからな」

それでもバレンタインってだけで騒ぎだしたりするんだから、やっぱり男子って仕方ないなーと思う。

…あれ?バレンタインで騒がない鷲尾はなんなんだ?男子じゃないのか?

「あ、そう言えば今日は部活顔出すの?」
「そうだな…どうせみんな行くだろうし行くか」

男子って言うか、バレー男子?

「じゃあもう1個食べられるよ」
「でも後輩の分だろ?」
「あれはバレー部の分」
「なるほど」

レギュラーは今までも個別で用意してきた。ほんの少しでも力になれればと思ったから。だからって他のみんなに用意しないのもおかしいから、毎年大量にクッキーを焼いて部室に置いてもらってる。
おっきい箱に適当に入れてみんなで食べてって渡してるだけなのに、みんな嬉しそうにしてくれるから気付いたら毎年作ってた。

「3年間ありがとな」
「いえいえ、鷲尾もお疲れさまでした」

それも今日で最後なんだなーと思うと、なんとなく寂しくなる。

「じゃあまた放課後にね」
「じゃあな」

残る包みはあと3個。

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