黄金川

「柏手さん!」
「黄金うるさい」
「スンマセン!体育館100週しますんで許してください!」
「いいからさっさと練習しろ」

バレー部ではもはや恒例とも言える声が飛んできた。

黄金川くんが柏手さんに声をかけて、柏手さんがそれに返す。
言ってしまえばそれだけなんだけど、黄金川くんもどうして学習しないのかな?二口先輩にも同じ事をさんざん言われてるよね?

「さっきアホみたいに高くあげたの見てたから」
「うっ」
「先輩からさんざん言われてるでしょ。置いてくるだけでいいって」
「はい」
「それでどうしてあんなに吹っ飛ばすのさ」
「スンマセン」

おっきい黄金川くんが小さい柏手さんに怒られてる時、なぜか柏手さんの方が大きく見える。気が強いと少し大きく見えるあの現象かな?怒られてる黄金川くん、すごく落ち込んでるし。

「バカなの?学習できないの?」
「…スンマセン」

柏手さん、いつにも増して口が悪い。

「あんたがはめたボールは誰かが取ってくれてるんだよ。勝手に落ちてきてないんだよ。その人たちにも謝罪の気持ちを持てよ」
「…はい」

も、もうよくないかな?なんで先輩は無視してるんだよ。いくらなんでもあんなに言われてたら黄金川くんがかわいそうだよ。

「わかったらアホみたいに走ってないでトス練」
「はい!」

そう思ったんだけど、

「あんたがちゃんと機能しないと先輩に迷惑なんだからね。そこんとこ肝に命じときな」
「はい!」
「じゃあさっさと戻る」
「はい!」

なんか、大丈夫そう。

黄金川くんのメンタルすごいなぁ。黄金川くんみたいになりたくはないけど、そこは見習いたいな。

「あ!柏手さん!」
「なに」

コートに戻りきる直前、黄金川くんが柏手さんを呼ぶからつい視線がそちらを向いた。
見えたのは、さっきまで怒られてたのが嘘みたいに明るく笑ってる黄金川くん。本当にメンタルすごい。

「今日も送ってくんで待っててください!」

え、今日もって、今までも送ってたの?
なにそれ知らない。

「黄金声うるさいからヤダ」
「暗いのに1人で帰ったら危ないじゃないスか!」
「黄金ほど危ないやつはいない」
「俺は危なくないです!」
「とりあえずうるさい」
「好きな子と一緒に帰りたいじゃないッスか!」
「うるさい練習しろ」
「絶対待っててくださいね!帰ったらダメですよ!」

え、ちょっとまって。今サラッとすごいこと言ったよね?そして右から左に受け流したよね?え?

「黙って練習できたら待つことも考えない」
「よーし!黙る!!」

それがすでにうるさいってことはいいのかな?
着替えのときにでも黄金川くんに聞いてみよう、僕の聞き間違いかもしれないし。


(声出ししなくなって怒られるのは別の機会に)

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