茂庭
茂庭さんは、身長が高いわりに童顔だと思う。ふわふわした天パっぽい髪もそのイメージを強める要因のひとつだと思う。
そんな茂庭さんの身長は、パッと見の印象では165cmくらいのイメージ。だけど、聞いたところによるとその身長は176cmはあるらしい。意外とおっきい。巨人の群れと言っても過言ではないバレー部にいるから、なんとなく小さいイメージになってしまうんだろうか。
「あ、柏手さん。滑津呼んでもらえる?」
「はーい」
部活の連絡でよく女子のクラスに来るけど、今ではすっかり慣れたのか気軽に声をかけてもらえるまでになった。はじめの頃はすごくどもってたし不安オーラがにじみ出てたのに…慣れとはなんとも物悲しい気持ちにさせてくれる。
「舞たーん!しゅしょーさんがお呼びー」
「ありがとー!今いくから待っててー」
「…だそうです」
「ありがとう」
課題を片付けてるだろう舞たんに声をかけると、少しも顔をあげることなく返事だけが飛んでくる。
これもよくあることで、舞たんの手が空くまで暇をもて余す茂庭さんと話すこともいつものこと。
「今日はなにがあったんですか?」
「備品で壊れそうなものとかなくなりそうなもの、あと必要なものがあったらリストアップしてって言われてたんだ」
「それ舞たんがやってましたよね?」
「…部室から見つかってはならないものを滑津が見つけたんだ。だから部室には金輪際なにがあっても入らないって…」
待って、なにが見つかったの?
「それって聞いても大丈夫ですか?」
「いや、柏手さんに教えたら俺が滑津にシメられる」
本当になにが見つかったのさ。
「かまちの溜まりに溜まったプロテインのゴミとかダンベルがかわいく思えたよ」
遠い目をしている茂庭さんから聞き出すことはできそうにない。
答えてくれるかはわかんないけど、今度舞たんに聞いてみよう。それが1番早そう。
「すみません!おまたせしました!」
「こっちこそごめん。最低限に減らしたけど、滑津の判断で削って」
「鎌先さん分かりやすすぎなんですけど」
茂庭さんが渡したリストを見て舞たんの表情が般若になるのかと思ってたけど、そんなことなかった。思った以上に楽しそうな表情。
「舞たん部活楽しい?」
「え?」
つい聞いてしまった。
「いや、今茂庭さんが見つかってはいけないものがーって遠い目してたから、大変なのかなと思って」
それがなにかはわからない。それでも、リストを見て楽しそうに笑うくらいなんだから、きっと楽しいんだろう。
「あー‥それなりに大変だけどね、やっぱり楽しいよ。子供みたいな男子とか筋肉ばかとか、あと理由がないと話しかけられない男子とか?」
「ちょっ!?」
あいにくバレー部事情はわからないので、どれが誰なのか全くわからない。男子の精神年齢は女子のふたつみっつ下と言うくらいだから、工業高の男子ならいつつは下になるんだろうか。ちなみにこれが多大すぎる偏見だという自覚はある。あと、それって同級生?
「じゃ、私まだ課題終わってないし、鎌先センパイのプロテインは全面カットしまーす」
「うん。よろしく」
カットしていいんだ、しゅしょーさん。
「ねぇ茂庭さん、見つかってはいけないものってなんですか?」
「…それは、俺の口からはとてもじゃないけど…言えない」
ダメ元で聞いてみたけど、やっぱり教えてくれない。
「他の人に聞いたら教えてくれるかな」
「え!」
「なんですか?」
「いや、教えてくれるだろうけど、柏手さんは知らない方がいいというかなんというか…」
なんだそれ。
「まぁいいか」
知られたくないことのひとつやふたつあるでしょう。
「茂庭さん、進路はどうするんですか?」
「あー、それは引退してから考えるよ」
「それかなり遅くなるんじゃないですか?」
「わかってるけど、それまでは本気で狙ってるから」
なにを、なんて無粋なことは聞くまい。
部活に全てをかけるとか青春っぽくていいじゃない。私も彼氏作って青春っぽいことしたい。こらそこ、ムリとか言わない。工業女子でも彼氏作ってる子多いんだからね。
「じゃあ、柏手も課題頑張ってな」
「え?あ、はい」
ふわふわした髪を揺らしながら歩く後ろ姿を見送ってたら、金髪の巨人が横から突っ込んできたのが見えた。
茂庭さんがなにを言ってるのかなんてわからないけど、たぶん笑ってるんだろうなーと思う。男子の友情、ちょっと羨ましいや。
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茂庭さんは、身長が高いわりに童顔だと思う。ふわふわした天パっぽい髪もそのイメージを強める要因のひとつだと思う。
そんな茂庭さんの身長は、パッと見の印象では165cmくらいのイメージ。だけど、聞いたところによるとその身長は176cmはあるらしい。意外とおっきい。巨人の群れと言っても過言ではないバレー部にいるから、なんとなく小さいイメージになってしまうんだろうか。
「あ、柏手さん。滑津呼んでもらえる?」
「はーい」
部活の連絡でよく女子のクラスに来るけど、今ではすっかり慣れたのか気軽に声をかけてもらえるまでになった。はじめの頃はすごくどもってたし不安オーラがにじみ出てたのに…慣れとはなんとも物悲しい気持ちにさせてくれる。
「舞たーん!しゅしょーさんがお呼びー」
「ありがとー!今いくから待っててー」
「…だそうです」
「ありがとう」
課題を片付けてるだろう舞たんに声をかけると、少しも顔をあげることなく返事だけが飛んでくる。
これもよくあることで、舞たんの手が空くまで暇をもて余す茂庭さんと話すこともいつものこと。
「今日はなにがあったんですか?」
「備品で壊れそうなものとかなくなりそうなもの、あと必要なものがあったらリストアップしてって言われてたんだ」
「それ舞たんがやってましたよね?」
「…部室から見つかってはならないものを滑津が見つけたんだ。だから部室には金輪際なにがあっても入らないって…」
待って、なにが見つかったの?
「それって聞いても大丈夫ですか?」
「いや、柏手さんに教えたら俺が滑津にシメられる」
本当になにが見つかったのさ。
「かまちの溜まりに溜まったプロテインのゴミとかダンベルがかわいく思えたよ」
遠い目をしている茂庭さんから聞き出すことはできそうにない。
答えてくれるかはわかんないけど、今度舞たんに聞いてみよう。それが1番早そう。
「すみません!おまたせしました!」
「こっちこそごめん。最低限に減らしたけど、滑津の判断で削って」
「鎌先さん分かりやすすぎなんですけど」
茂庭さんが渡したリストを見て舞たんの表情が般若になるのかと思ってたけど、そんなことなかった。思った以上に楽しそうな表情。
「舞たん部活楽しい?」
「え?」
つい聞いてしまった。
「いや、今茂庭さんが見つかってはいけないものがーって遠い目してたから、大変なのかなと思って」
それがなにかはわからない。それでも、リストを見て楽しそうに笑うくらいなんだから、きっと楽しいんだろう。
「あー‥それなりに大変だけどね、やっぱり楽しいよ。子供みたいな男子とか筋肉ばかとか、あと理由がないと話しかけられない男子とか?」
「ちょっ!?」
あいにくバレー部事情はわからないので、どれが誰なのか全くわからない。男子の精神年齢は女子のふたつみっつ下と言うくらいだから、工業高の男子ならいつつは下になるんだろうか。ちなみにこれが多大すぎる偏見だという自覚はある。あと、それって同級生?
「じゃ、私まだ課題終わってないし、鎌先センパイのプロテインは全面カットしまーす」
「うん。よろしく」
カットしていいんだ、しゅしょーさん。
「ねぇ茂庭さん、見つかってはいけないものってなんですか?」
「…それは、俺の口からはとてもじゃないけど…言えない」
ダメ元で聞いてみたけど、やっぱり教えてくれない。
「他の人に聞いたら教えてくれるかな」
「え!」
「なんですか?」
「いや、教えてくれるだろうけど、柏手さんは知らない方がいいというかなんというか…」
なんだそれ。
「まぁいいか」
知られたくないことのひとつやふたつあるでしょう。
「茂庭さん、進路はどうするんですか?」
「あー、それは引退してから考えるよ」
「それかなり遅くなるんじゃないですか?」
「わかってるけど、それまでは本気で狙ってるから」
なにを、なんて無粋なことは聞くまい。
部活に全てをかけるとか青春っぽくていいじゃない。私も彼氏作って青春っぽいことしたい。こらそこ、ムリとか言わない。工業女子でも彼氏作ってる子多いんだからね。
「じゃあ、柏手も課題頑張ってな」
「え?あ、はい」
ふわふわした髪を揺らしながら歩く後ろ姿を見送ってたら、金髪の巨人が横から突っ込んできたのが見えた。
茂庭さんがなにを言ってるのかなんてわからないけど、たぶん笑ってるんだろうなーと思う。男子の友情、ちょっと羨ましいや。