瀬見
俺には、最近気になって仕方ないことがある。
「心外だよ!しなやかで美しい筋肉を愛でずになにを愛でると言うんだね!?」
…それが今叫んだマネージャーの事なんだけど、あいかわらず発言がずれてるな。
マネージャーの柏手はなぜか筋肉が好きらしい。その結果か、人体についても詳しいからマネージャーと言うか、トレーナーみたいになってるときもある。そこは別に助かるからいいんだけど、もっと普通に犬とか猫とか好きならいいのに。
そんな若干ずれた柏手だけど、見た目はそれなりにかわいく人懐っこく、更に愛嬌があるからか、男女問わず友達はかなり多いらしい。癖の強いやつが集まってるバレー部ともうまくやってるし、違ってはないだろう。
「あ!もちろんらぶりんの上腕二頭筋も素敵だよ!!」
中でも、白布とは特に仲が良いようにみえる。なにかと一緒にいるし、柏手は事あるごとに白布に話しかけている気がする。
同じ学年だからってこともあるだろうけど、それを抜きにして考えても見かけるたびにいつも一緒にいる。
ちなみに、柏手の声はよく通りよく響くらしく、基本的にどこにいてもなにを話してるのかすぐにわかる。
白布はしつこく話しかけてる柏手に呆れたようにスクイズを傾けているが、あれで嫌ってはいないらしいから珍しいもんだ。どんどん変わる白布の表情と楽しそうにしている柏手を一見すると付き合ってるのかとも思う。
そんな雰囲気が全くないのも見ればわかるから、考えるだけ無駄だけど。
「あ!瀬見さぁーん!」
こんな男ばっかりでむさ苦しい中に女子がひとりいたら、そりゃあみんなかわいがるもんだ。わかりづらい若利はもちろん、天童もひねくれているものの明らかにかわいがってる。
その中にはもちろん俺もいるわけだが、俺が柏手をかわいいと思ってしまうのはこれがあるからなんだろうな。
「お疲れ様です!」
「柏手もお疲れ」
俺を見つけると、昔近所にいた柴犬みたいに脇目も降らず一目散に走ってくる。これがかわいくないわけがない。
「瀬見さん、違うならいいんですけど、もしかして母指球筋の具合が悪いんじゃないですか?」
「どこだそれ?」
「ざっくり言うと親指のこの辺りです。トスのとき一瞬妙な角度で上がったことがあったので、もしかしたら左右でパワーバランスが崩れてるのかなーと思いまして」
柏手は自分の掌の親指の付け根の辺りを示した。
たしかに変な使い方をしたのかいずい感じはあったけど、見てわかるほどだったのか?
つーか、
「ここ、そんな名前がついてたのか…」
なんだ?ぼしきゅーきんだっけ?
さすが柏手は詳しいな。
「あと僧帽筋もほぐした方がいいですよ」
また新しい筋肉が出てきた。
柏手には悪いけど、それがどこかわかんねえ…
「そっか、サンキュー」
「いえ!瀬見さんが怪我をされず健康に部活に勤しめるようサポートするのが私の仕事なので!!」
でもこうして自分の持てる知識全部使ってサポートしてくれるのって、嬉しいもんだな。
「柏手も怪我するなよ」
「もちろんです!」
頭を撫でると目を閉じて受け入れるところなんか犬そのものだ。手が離れそうになると頭がちょっと追いかけてくるしなんなんだこれ?これがかわいくないわけないだろ。
そういえば、若利に言わなきゃいけないことがあったんだった。
柏手の頭から手を離して若利のところへ向かう間、ふと振り替えるとやっぱり柏手は白布の元へ走っていったらしい。
「なぁにー?英太くん気になる感じー?」
「いや、気になるっつーか」
こう、妙な寂しさと言うか、
「なついてくれてた柴犬が他所にもらわれていく感覚?」
「なにそれ」
俺もよくわかんねぇからちゃんと言えないけど、それが1番近い気がする。
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俺には、最近気になって仕方ないことがある。
「心外だよ!しなやかで美しい筋肉を愛でずになにを愛でると言うんだね!?」
…それが今叫んだマネージャーの事なんだけど、あいかわらず発言がずれてるな。
マネージャーの柏手はなぜか筋肉が好きらしい。その結果か、人体についても詳しいからマネージャーと言うか、トレーナーみたいになってるときもある。そこは別に助かるからいいんだけど、もっと普通に犬とか猫とか好きならいいのに。
そんな若干ずれた柏手だけど、見た目はそれなりにかわいく人懐っこく、更に愛嬌があるからか、男女問わず友達はかなり多いらしい。癖の強いやつが集まってるバレー部ともうまくやってるし、違ってはないだろう。
「あ!もちろんらぶりんの上腕二頭筋も素敵だよ!!」
中でも、白布とは特に仲が良いようにみえる。なにかと一緒にいるし、柏手は事あるごとに白布に話しかけている気がする。
同じ学年だからってこともあるだろうけど、それを抜きにして考えても見かけるたびにいつも一緒にいる。
ちなみに、柏手の声はよく通りよく響くらしく、基本的にどこにいてもなにを話してるのかすぐにわかる。
白布はしつこく話しかけてる柏手に呆れたようにスクイズを傾けているが、あれで嫌ってはいないらしいから珍しいもんだ。どんどん変わる白布の表情と楽しそうにしている柏手を一見すると付き合ってるのかとも思う。
そんな雰囲気が全くないのも見ればわかるから、考えるだけ無駄だけど。
「あ!瀬見さぁーん!」
こんな男ばっかりでむさ苦しい中に女子がひとりいたら、そりゃあみんなかわいがるもんだ。わかりづらい若利はもちろん、天童もひねくれているものの明らかにかわいがってる。
その中にはもちろん俺もいるわけだが、俺が柏手をかわいいと思ってしまうのはこれがあるからなんだろうな。
「お疲れ様です!」
「柏手もお疲れ」
俺を見つけると、昔近所にいた柴犬みたいに脇目も降らず一目散に走ってくる。これがかわいくないわけがない。
「瀬見さん、違うならいいんですけど、もしかして母指球筋の具合が悪いんじゃないですか?」
「どこだそれ?」
「ざっくり言うと親指のこの辺りです。トスのとき一瞬妙な角度で上がったことがあったので、もしかしたら左右でパワーバランスが崩れてるのかなーと思いまして」
柏手は自分の掌の親指の付け根の辺りを示した。
たしかに変な使い方をしたのかいずい感じはあったけど、見てわかるほどだったのか?
つーか、
「ここ、そんな名前がついてたのか…」
なんだ?ぼしきゅーきんだっけ?
さすが柏手は詳しいな。
「あと僧帽筋もほぐした方がいいですよ」
また新しい筋肉が出てきた。
柏手には悪いけど、それがどこかわかんねえ…
「そっか、サンキュー」
「いえ!瀬見さんが怪我をされず健康に部活に勤しめるようサポートするのが私の仕事なので!!」
でもこうして自分の持てる知識全部使ってサポートしてくれるのって、嬉しいもんだな。
「柏手も怪我するなよ」
「もちろんです!」
頭を撫でると目を閉じて受け入れるところなんか犬そのものだ。手が離れそうになると頭がちょっと追いかけてくるしなんなんだこれ?これがかわいくないわけないだろ。
そういえば、若利に言わなきゃいけないことがあったんだった。
柏手の頭から手を離して若利のところへ向かう間、ふと振り替えるとやっぱり柏手は白布の元へ走っていったらしい。
「なぁにー?英太くん気になる感じー?」
「いや、気になるっつーか」
こう、妙な寂しさと言うか、
「なついてくれてた柴犬が他所にもらわれていく感覚?」
「なにそれ」
俺もよくわかんねぇからちゃんと言えないけど、それが1番近い気がする。