月島
「蛍くん」
「なに?」
「あのね、これ」
俯きながらも遠慮がちに見せてきたチラシは、仙台駅で新しいケーキ屋さんが開くってもの。チラシだけじゃわからないけど、落ち着いてはいるもののどことなくヒラヒラした雰囲気で、女子が好きそうなチラシ。
「行きたいの?」
「うん。ショートケーキあるかわかんないけど」
「別になくてもいいよ」
「でも」
「僕がいいって言ってるんだから気にしないでいいよ」
低い位置にある頭に手を乗せると、ようやく顔をあげてくれた。
「このチラシね、持っていくとサービスあるって、ここにね」
「うん」
「でね、紅茶もね、種類があってね」
一生懸命教えてくれる鳴子のことが、僕は存外嫌いじゃない。
ちょっと発言が幼くなるけど、必死になってる証拠だから僕はまったく気にならない。
「いつオープンなの?」
「えっとね、7日」
土曜か。
「蛍くん部活あるでしょ?だからね、蛍くんのお休みの日に行けたら良いなって」
「でもそのサービスってオープン記念かなんかなんじゃない?」
「そうだけど、別にいいの。蛍くんと行けるならいつでもいい」
「土曜なら合宿最終日でいつもの部活より早く終わるから、夕方からならたぶん行けるよ」
「ホントに?」
「うん」
「えへへぇ」
へにゃりと笑いながら、チラシで口許を隠す鳴子。隠しきれてないその緩みきった顔は嫌いじゃない。
「なに食べたいの」
「チョコもいいけど、チーズケーキも気になってるんだぁ」
「どれくらい種類あるの?」
「そんなに多くないと思うけど、チョコもなかったらどうしよう」
お気に入りがなかったらと考えたとたんに不安そうにするんだから、鳴子は仕方ない。
チラシを見たところであるのかないのかはわからないから余計に不安になるんだろうか。女子全員に言えるけど、こういうところはちょっとめんどくさい。
「ショートケーキもチョコも定番だからないところの方が少ないんじゃない?まだ行ってもないのに心配しないの」
「でも、」
「なかったら他の食べればいいでしょ」
「…うん」
「なかったときのことよりも、どっちもあったときのこと考えた方がいいんじゃない?」
「どっちも?」
「チョコのケーキとチーズケーキ。夕方に2個もケーキ食べたら太るよ?」
マンガとかなら頭の上にビックリマークとか、フラッシュ?とか言うんだっけ?なんかそういう感じの表現がされそうな顔をして固まるんだから面白い。
「そ、そうだよね。どっちかにしないとだよね」
そう言ってまだ両方あるかもわからないのにまた悩みはじめる鳴子を見て、笑ってしまったのは秘密にしておこう。
それと、両方あった場合は片方だけ選ばせて、もう1度一緒に行く口実にしようと思う。
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「蛍くん」
「なに?」
「あのね、これ」
俯きながらも遠慮がちに見せてきたチラシは、仙台駅で新しいケーキ屋さんが開くってもの。チラシだけじゃわからないけど、落ち着いてはいるもののどことなくヒラヒラした雰囲気で、女子が好きそうなチラシ。
「行きたいの?」
「うん。ショートケーキあるかわかんないけど」
「別になくてもいいよ」
「でも」
「僕がいいって言ってるんだから気にしないでいいよ」
低い位置にある頭に手を乗せると、ようやく顔をあげてくれた。
「このチラシね、持っていくとサービスあるって、ここにね」
「うん」
「でね、紅茶もね、種類があってね」
一生懸命教えてくれる鳴子のことが、僕は存外嫌いじゃない。
ちょっと発言が幼くなるけど、必死になってる証拠だから僕はまったく気にならない。
「いつオープンなの?」
「えっとね、7日」
土曜か。
「蛍くん部活あるでしょ?だからね、蛍くんのお休みの日に行けたら良いなって」
「でもそのサービスってオープン記念かなんかなんじゃない?」
「そうだけど、別にいいの。蛍くんと行けるならいつでもいい」
「土曜なら合宿最終日でいつもの部活より早く終わるから、夕方からならたぶん行けるよ」
「ホントに?」
「うん」
「えへへぇ」
へにゃりと笑いながら、チラシで口許を隠す鳴子。隠しきれてないその緩みきった顔は嫌いじゃない。
「なに食べたいの」
「チョコもいいけど、チーズケーキも気になってるんだぁ」
「どれくらい種類あるの?」
「そんなに多くないと思うけど、チョコもなかったらどうしよう」
お気に入りがなかったらと考えたとたんに不安そうにするんだから、鳴子は仕方ない。
チラシを見たところであるのかないのかはわからないから余計に不安になるんだろうか。女子全員に言えるけど、こういうところはちょっとめんどくさい。
「ショートケーキもチョコも定番だからないところの方が少ないんじゃない?まだ行ってもないのに心配しないの」
「でも、」
「なかったら他の食べればいいでしょ」
「…うん」
「なかったときのことよりも、どっちもあったときのこと考えた方がいいんじゃない?」
「どっちも?」
「チョコのケーキとチーズケーキ。夕方に2個もケーキ食べたら太るよ?」
マンガとかなら頭の上にビックリマークとか、フラッシュ?とか言うんだっけ?なんかそういう感じの表現がされそうな顔をして固まるんだから面白い。
「そ、そうだよね。どっちかにしないとだよね」
そう言ってまだ両方あるかもわからないのにまた悩みはじめる鳴子を見て、笑ってしまったのは秘密にしておこう。
それと、両方あった場合は片方だけ選ばせて、もう1度一緒に行く口実にしようと思う。