黒尾

最近困ったことがある。

「なぁイイダロー?」
「よくない」

後輩とぶつかったことで知り合った黒尾が、やたらとマネージャーに誘ってくる。

よくないに決まってるじゃん。もう3年で、今5月!早いところって来月引退だよね?それなのになんで私がマネージャーとして入部しないといけないのか。

「別に入部しなくていいから、手伝ってくれよ」
「やだ。受験勉強しないといけないし」
「柏手の狙ってるとこなら今のままでも余裕だろ?」
「…私黒尾に進路教えてないんだけど」
「偶然聞こえたんですー」

別に進路くらい誰に知られたっていいけど、黒尾に知られてるなんて思わなかったからびっくりした。と言うか、ちょっと気持ち悪いと思った。

「1年とか2年から探しなよ」
「それはそれぞれに任せてる。それが不安だからこうして俺が動いてンだろ」
「だから後輩から探しなって」
「俺が後輩女子に好かれると思うか?」

そう言えば、見た目こそそれなりにかっこいいと言われる部類ではあるけど背が高すぎて怖いかもしれない。
無意識なのかなんなのか知らないけど、視線が合いやすいようにしてくれてるらしくあんまり威圧感は感じない。それでも、黒尾が新入生に話しかけるのは可哀想になる。

「夜久は?」
「え?それは俺をディスってる?それとも夜久をディスってる?」
「黒尾」
「ひでぇ」

今のどの部分に夜久をディスるところがあったのか私は聞きたい。

「で、なんで夜久?」
「夜久って人当たりいいし人懐っこい雰囲気あるから、下級生女子に話しかけてても通報されないかなって」
「それは俺だと通報されるってことか?」
「さすがに通報はされないだろうけど、絵面が酷くなりそう」
「柏手俺のこと嫌い?」
「別に」

噛み殺した笑いが聞こえるけど、何が楽しいのか。黒尾との付き合いが長ければそれもわかったんだろうか。

「なんで私なの?」
「ん?」
「黒尾友達多いじゃん。その中に手伝ってくれる人くらいいるんじゃない?」
「あー…いや、いねぇな」
「薄情な友達だねぇ」

黒尾が飄々としているからか。でも、黒尾の周りにいる女子は、黒尾に頼まれたら毎日じゃなくても手伝ってくれると思うんだけど。

そう思ってた。

「俺はお前に手伝って欲しいんだよ」
「は?」
「俺がバレーやってるのを見て、そのついでにドリンクとか渡してもらいたいわけですよ」

え、手伝いがついで?逆じゃないの?

「柏手じゃなきゃ意味ねーの。わかる?」

…は?

「わかんない」
「ぶっくく…ま、マネージャーは無理でも1回見に来いよ」

ポンと頭をひとつ撫でられて?手を置かれて?黒尾はどこかへ行ってしまった。

マネージャーはしないけど、見に行くくらいならいいかな。なんて、火照り始めた頭で思った。

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