川西
「川西くん!お疲れさまー」
「え、」
薄暗い雨空に似つかわしくない、明るい女子の声。それが柏手さんとわかるまで一瞬時間がかかって反応が遅れた。
「柏手さんも、お疲れ」
返事が遅れたことに気付かれなかったのか気にしなかったのか、花柄とかそんな分かりやすいものじゃないけど、女子っぽい傘をさした柏手さんが近付いてくる。
「部活?」
「そう。気付いたらこんな時間になってたよ」
傘を傾けながら、見上げてくる。たしか、白鳥沢では数少ない文化部に入ってたはず。なんでこんな時間になったんだろう…まぁいいか。
「川西くんはいつもお疲れさま」
「いや、そうでもないけど」
「授業の時、いつも眠そうだって聞くよ」
それ、誰から聞いたんだろう。そもそもその話を柏手さんが望んで聞いたのか偶然聞いたのかそこのところが知りたい。
そんなに仲がいいわけではないから簡単に聞けないけど。
「そうじゃなくてもいつも眠い」
「あははっよく寝るから背が伸びたのかな」
「どうだろ」
柏手さんも小さいわけではないと思う。俺から見たらめっちゃ小さいけど。
「て言うか、雨降ったね」
「ねー。傘持ってきててよかったよ」
柏手さんが傘を持ってなかったら一緒に入れたのかな、なんて考えた。
「川西くんも持っててよかったね。スポーツマンは体冷やしちゃダメだもんね」
なんで俺は傘を持ってるんだ。なんで柏手さんも傘を持ってるんだ。
「いや、これ、あれだ、白布の」
「そうなの?」
笑いながら聞いてくる柏手さんがかわいい。
「そう」
「おい嘘つくな」
突然の否定に振り替えると、白布がいた。
「嘘じゃない」
「傘なんて2本もいらねぇよ」
「白布くんもお疲れさま。冷える前に早く帰った方がいいんじゃない?」
「それは柏手さんにも言えることじゃない?」
「え、白布知り合い?」
「去年同じクラス」
なんだそれ。
「聞いてない」
「なんで言わなきゃいけないんだよ」
白布は元クラスメイトで、俺は知り合い?
そう思った瞬間、衝動だけで動いてた。
「はあ?!」
「え、か…」
「なんでいきなり傘壊してんだよ!」
「壊れた」
「壊したんだろ!!」
壊れた傘を手に柏手さんを見る。
柏手さんはびっくりした顔で俺を見てる。引かれてるのかはわからない。
「柏手さん」
「へあい!」
「傘が壊れたので、一緒に帰りませんか」
「やめろ」
もちろん柏手さんと一緒に仲良く1つの傘で帰れたわけもなく。傘の壊れた俺は、雨に濡れながら白布に引きずられて帰った。
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「川西くん!お疲れさまー」
「え、」
薄暗い雨空に似つかわしくない、明るい女子の声。それが柏手さんとわかるまで一瞬時間がかかって反応が遅れた。
「柏手さんも、お疲れ」
返事が遅れたことに気付かれなかったのか気にしなかったのか、花柄とかそんな分かりやすいものじゃないけど、女子っぽい傘をさした柏手さんが近付いてくる。
「部活?」
「そう。気付いたらこんな時間になってたよ」
傘を傾けながら、見上げてくる。たしか、白鳥沢では数少ない文化部に入ってたはず。なんでこんな時間になったんだろう…まぁいいか。
「川西くんはいつもお疲れさま」
「いや、そうでもないけど」
「授業の時、いつも眠そうだって聞くよ」
それ、誰から聞いたんだろう。そもそもその話を柏手さんが望んで聞いたのか偶然聞いたのかそこのところが知りたい。
そんなに仲がいいわけではないから簡単に聞けないけど。
「そうじゃなくてもいつも眠い」
「あははっよく寝るから背が伸びたのかな」
「どうだろ」
柏手さんも小さいわけではないと思う。俺から見たらめっちゃ小さいけど。
「て言うか、雨降ったね」
「ねー。傘持ってきててよかったよ」
柏手さんが傘を持ってなかったら一緒に入れたのかな、なんて考えた。
「川西くんも持っててよかったね。スポーツマンは体冷やしちゃダメだもんね」
なんで俺は傘を持ってるんだ。なんで柏手さんも傘を持ってるんだ。
「いや、これ、あれだ、白布の」
「そうなの?」
笑いながら聞いてくる柏手さんがかわいい。
「そう」
「おい嘘つくな」
突然の否定に振り替えると、白布がいた。
「嘘じゃない」
「傘なんて2本もいらねぇよ」
「白布くんもお疲れさま。冷える前に早く帰った方がいいんじゃない?」
「それは柏手さんにも言えることじゃない?」
「え、白布知り合い?」
「去年同じクラス」
なんだそれ。
「聞いてない」
「なんで言わなきゃいけないんだよ」
白布は元クラスメイトで、俺は知り合い?
そう思った瞬間、衝動だけで動いてた。
「はあ?!」
「え、か…」
「なんでいきなり傘壊してんだよ!」
「壊れた」
「壊したんだろ!!」
壊れた傘を手に柏手さんを見る。
柏手さんはびっくりした顔で俺を見てる。引かれてるのかはわからない。
「柏手さん」
「へあい!」
「傘が壊れたので、一緒に帰りませんか」
「やめろ」
もちろん柏手さんと一緒に仲良く1つの傘で帰れたわけもなく。傘の壊れた俺は、雨に濡れながら白布に引きずられて帰った。