灰羽

「なー、相合い傘ってよくねぇ?」

休憩の時にふと言われた言葉に、自然と視線が集まった。言った本人はなんとか同意を得ようと頻りに周りを見回してる。

「お前いきなりどうしたんだよ」
「クロさんもそう思いますよね!」
「あー、まぁなァ」

先輩にも怯まず話しかけてるリエーフのメンタルぱねぇ、なんて。強靭なメンタルを持ってるからこそ毎日あんなに蹴り飛ばされてるのか。

「女子って言ったら柏手くらいだし…やってみるか?」
「いえ、結構です」
「ぶひゃひゃ!だよな!」

即断る辺り、私も人の事は言えない。
運動部なのにユルいこの雰囲気は好きだなぁ。

「ちなみになんで嫌なの?」
「絶対に濡れるからです」
「あー、黒尾とだったらなぁ」

身長差がありすぎて傘の意味がなくなりそう。それなら傘なんていらない。
あと、目立つからやだ。

「じゃあ誰なら良いんだよー」

くるりと見回して目についたのはリベロ2人。先輩を指名するのは流石に勇気がいる…という事で

「芝山がいい」
「え、僕?」
「なんで?」
「一緒に入ってもあんまり濡れなさそう」
「ああ、」
「どういうこと?」
「あんまり身長差があったら濡れるってことじゃない?」
「へー…あ、そっか!」

リエーフはようやくわかってくれたらしい。

「じゃあ夜久さんもちょうどいいっスね!」

そして言わなければ良いことにも気付いたらしい。夜久さんのキレのいい回し蹴りが決まった。

「夜久さんすぐ蹴る…」
「それは身長のこと言うからでしょ」
「だって要するにそう言うことだろ?」
「まぁそうだけど…」

それを言っちゃうから蹴られるんだよ。

「ねぇ、リエーフって身長いくつ?」
「194!」

でっか。

「40cmも身長差があるなら絶対やだ」

本当に頭から濡れるに違いない。

「そんなに身長差ある?」
「うん」
「じゃあ柏手さんって154とか?」
「大体それくらい」
「へー!ちっちゃい!」
「夜久さん、蹴ってください」
「え?おお。えっ?」
「いたい!」

リエーフは夜久さんに蹴っていただいた。よく分からない顔をしながらも渾身の一撃を繰り出せるのはすごい。
私だって身長ほしいんだよ。

「リエーフってさ、そのまま妖怪になっちゃいそうだね」
「妖怪?」
「日本には八尺様って言う妖怪がいるんだよ」

妖怪だかなんだか忘れたけど、いたよね?

「どんなやつ?」
「身長が8尺ある女の人」
「8尺ってどんくらい?」
「一般的には1寸3cm、1尺30cmって言われてるらしいよ。だから240cmくらいだね」
「じゃあ一寸法師は3cmってこと?」
「そうじゃない?」
「へー!鳴子は物知りだな」

こうやって今の数値に直すと、案外8尺って小さいのかもしれない。だってバレーのネットとほとんど同じ高さだから。

「えーっと、そうなるとリエーフは6尺と4寸くらいかな…」
「確かにそう聞くと妖怪っぽい!」

…喜んでいただけたようでなによりだよ。

「おーい、練習始めるぞー」
「はーい」

さて、後半戦始めますか。

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