犬岡

思春期と言うやつは大人が思ってるよりめんどくさい。こちらが意識していなくても、周りが意識していたら合わせなくてはいけないことが多い。その集団心理のなんと面倒なことか。

「犬岡ー!」
「どーかした?」
「教科書忘れた!貸してー!」

まぁ大人になってもたいして変わんないと思うけど。

「えー、なんの教科書?」
「現社」
「あったかなー」

そう言いながらもロッカーを探してくれるのは、きっとほとんど置き勉してるからだろう。
犬岡とは馬が合うのか男子の中でも仲がいい部類になる。今では元々仲よかった共通の友達よりも仲いいんじゃないかな。

「あったー」
「ありがとー」
「今日現社ないからいつでもいいよ」
「忘れる前に返しに来るね」
「鳴子はそれを忘れてそう」
「否めない」

ここで私が気になるのは、なぜか名前を呼ばれるという事で。まさか男子に名前呼ばれるとはそう思わないじゃない?

「鳴子今日帰る?」

でもそう言う性格なんだろうと気にするのはやめた。だって名前は呼ばれるためにあるんだから呼ばれて悪いことはない。

「なんで?」

それに、私は自分の名前が嫌いじゃない。

「今日練習試合あるんだ」

犬岡が私を練習試合に誘うとき、その時はある条件がある。

「あのマネさん達来る?」
「うん」

それは私が敬愛してやまないマネさん達が来るとき!

「じゃあ行く!」
「センパイに言っとくね」
「わかった!」

マネさん達とは、よく練習試合をしてる…なんか白がまぶしい学校。マネさんお2人が美人お姉様方で、私が勝手になついてるだけだ。なついてると言っても、過剰に接触はしない。声をかけて頂けたら引かれない程度に全力でお話させて頂きます。
嫌われてたらどうしようとか考えない。だって走に誘われた時しか会わないもん。音駒だけに猫被ってるから、嫌われてる可能性はたぶん低い。拒否られたらさすがにやめるけど。

「じゃあ放課後にね!」

そういえばジャージあったかな?なかったら見苦しい事になるからなんとかしないと…

「鳴子」
「なに?」
「ちゃんと試合に出たら、その時はちゃんと呼ぶから」
「?うん」

あ、試合に行ったらマネさんに会えたりするのかな。それはさすがにウチの部員に失礼か。
どんなに憧れのお姉様だろうと、ウチが負けるのは納得できない。やるからには勝つのが前提。負けることなんて1mmだって考えない。

だって、勝負ってやつはそう言うもんでしょ?

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