木下
「…あつ」
どんより曇り空に上がる湿度。体育館はもはや蒸し風呂。暑いなんてものじゃない。よくもこんなところで部活なんてしてるよね。それは私にも言えることなんだけどさ。
「柏手」
「んー?どした」
「大丈夫か?」
「顔色はいつも悪いよ」
「…大丈夫ならいいんだけどさ」
正直あんまりよくはないと思う。頭痛いし視界はほとんど霞んでる。でもこうして動けてるのは、人間多少どうにかなっても大丈夫な証拠だと思う。
あー、でもちょっと危ないかなぁ。
「はーい、ドリンク飲んでくださーい」
「休憩には早くないか?」
「休憩じゃないです、ドリンクタイムです」
潔子さんとやっちゃんとも決めた。
今日は多少無理矢理にでもドリンクを飲ませようって。やっちゃんはまだみんなに強く言えないから、潔子さんがいるうちに少しでもみんなに正面から向かっていけるようになってもらわないと。
「こんなところで動いてるんだから、水分とらないと死にますよ」
ちなみに私はマネージャーじゃない。偶然烏野に通ってて、偶然木下と同じクラスになって、偶然バレー部の人と知り合って、偶然興味をもった。ただそれだけなんだけど、ここまで重なればもはや運命かと思う。
「洗濯は出してください」
「この天気じゃあ乾かなくないか?」
「大丈夫です。乾燥機借ります」
「そんなのあったのか」
「ボトルはどっか適当にまとめておいてください。この辺持っていきますよ?」
「あ、うん、ありがとう」
さて、あとは洗濯回していつもの体育館で仕事をしてる潔子さんとやっちゃんにこっちの状況伝えて、ドリンク補充して、ああ、ワイピンのタオルも替えた方がいいのかな。
「柏手!」
「あえ?木下?」
サーブ練してた木下が追っかけてきた。
手にタオルがあるから、出し忘れて追いかけてきたんだろう。
「預かるよ」
「いや、一緒に持っていく」
「え?」
あっという間もなく洗濯籠が木下の手にさらわれた。
「ちょっと、練習いいの?」
先に行く木下を追いかけて気付いたけど、視界の違和感が少しなくなった。調子がよくなりつつあるんだろうか?
「精度落ちてきたからちょっと休憩」
「それならこんなことしてないでちゃんと休憩しなよ」
「いいんだよ、俺がやりたくてやってるんだから」
正直体調が良くないから助かるけど、
「選手がこんなことするもんじゃないよ」
「柏手だって部員じゃないのに頑張ってるだろ?」
そんなこと言われても、私は別に頑張ってるつもりはない。
「手伝うからにはちゃんとしないとみんなに失礼でしょ?」
「真面目だなー」
「木下は真面目じゃないの?」
「俺はそうでもないかな」
「ふーん」
私が部活をしないように、木下にも真面目じゃないと言うだけの理由があるんだろう。
私からしたら充分真面目なのに。
「これってどこまで持っていくの?」
「部室棟の奥に洗濯機あるとこ、が」
ちょっと、まずい。さすがに視界真っ暗はヤバい。
「柏手!大丈夫か?」
「大丈夫」
たぶん熱中症か貧血。大丈夫、これくらいならよくある。5分もすれば治る。
なんて私が思ってても木下はそうは思わないらしい。
「どうしよう、先輩、清水さん呼んでくる!」
「大丈夫だから、落ち着いて」
「でもなんか、」
「いいから」
吐き気がないから、たぶん大丈夫。
「あ、洗濯置いていいよ」
「なんでそんな冷静なんだよっ」
「よくあるから?」
「部活の時?」
「いや、普段から。たまにある」
そんな頻繁にないけど。でも大丈夫ってことはわかる。
「なんか俺にできることある?」
「もうちょっとでよくなるから、戻ってもいいよ」
「いや戻れねーべ」
それもそうか。木下はへばってる人を見て無視して練習に戻れるようなタイプじゃない。
「ん?なに?」
「いや、背中なでたら楽になるかなって」
吐き気がないから正直撫でてもらわなくても大丈夫だけど、
「ありがと」
なんとなく気分がよくなる気がするから、いいか。
「無理するなよ?」
「うん」
「あとで大地さんに言うからな」
「え、それはやだ」
「ホントに倒れたら大変だろ」
「うーん、でも」
「却下」
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「…あつ」
どんより曇り空に上がる湿度。体育館はもはや蒸し風呂。暑いなんてものじゃない。よくもこんなところで部活なんてしてるよね。それは私にも言えることなんだけどさ。
「柏手」
「んー?どした」
「大丈夫か?」
「顔色はいつも悪いよ」
「…大丈夫ならいいんだけどさ」
正直あんまりよくはないと思う。頭痛いし視界はほとんど霞んでる。でもこうして動けてるのは、人間多少どうにかなっても大丈夫な証拠だと思う。
あー、でもちょっと危ないかなぁ。
「はーい、ドリンク飲んでくださーい」
「休憩には早くないか?」
「休憩じゃないです、ドリンクタイムです」
潔子さんとやっちゃんとも決めた。
今日は多少無理矢理にでもドリンクを飲ませようって。やっちゃんはまだみんなに強く言えないから、潔子さんがいるうちに少しでもみんなに正面から向かっていけるようになってもらわないと。
「こんなところで動いてるんだから、水分とらないと死にますよ」
ちなみに私はマネージャーじゃない。偶然烏野に通ってて、偶然木下と同じクラスになって、偶然バレー部の人と知り合って、偶然興味をもった。ただそれだけなんだけど、ここまで重なればもはや運命かと思う。
「洗濯は出してください」
「この天気じゃあ乾かなくないか?」
「大丈夫です。乾燥機借ります」
「そんなのあったのか」
「ボトルはどっか適当にまとめておいてください。この辺持っていきますよ?」
「あ、うん、ありがとう」
さて、あとは洗濯回していつもの体育館で仕事をしてる潔子さんとやっちゃんにこっちの状況伝えて、ドリンク補充して、ああ、ワイピンのタオルも替えた方がいいのかな。
「柏手!」
「あえ?木下?」
サーブ練してた木下が追っかけてきた。
手にタオルがあるから、出し忘れて追いかけてきたんだろう。
「預かるよ」
「いや、一緒に持っていく」
「え?」
あっという間もなく洗濯籠が木下の手にさらわれた。
「ちょっと、練習いいの?」
先に行く木下を追いかけて気付いたけど、視界の違和感が少しなくなった。調子がよくなりつつあるんだろうか?
「精度落ちてきたからちょっと休憩」
「それならこんなことしてないでちゃんと休憩しなよ」
「いいんだよ、俺がやりたくてやってるんだから」
正直体調が良くないから助かるけど、
「選手がこんなことするもんじゃないよ」
「柏手だって部員じゃないのに頑張ってるだろ?」
そんなこと言われても、私は別に頑張ってるつもりはない。
「手伝うからにはちゃんとしないとみんなに失礼でしょ?」
「真面目だなー」
「木下は真面目じゃないの?」
「俺はそうでもないかな」
「ふーん」
私が部活をしないように、木下にも真面目じゃないと言うだけの理由があるんだろう。
私からしたら充分真面目なのに。
「これってどこまで持っていくの?」
「部室棟の奥に洗濯機あるとこ、が」
ちょっと、まずい。さすがに視界真っ暗はヤバい。
「柏手!大丈夫か?」
「大丈夫」
たぶん熱中症か貧血。大丈夫、これくらいならよくある。5分もすれば治る。
なんて私が思ってても木下はそうは思わないらしい。
「どうしよう、先輩、清水さん呼んでくる!」
「大丈夫だから、落ち着いて」
「でもなんか、」
「いいから」
吐き気がないから、たぶん大丈夫。
「あ、洗濯置いていいよ」
「なんでそんな冷静なんだよっ」
「よくあるから?」
「部活の時?」
「いや、普段から。たまにある」
そんな頻繁にないけど。でも大丈夫ってことはわかる。
「なんか俺にできることある?」
「もうちょっとでよくなるから、戻ってもいいよ」
「いや戻れねーべ」
それもそうか。木下はへばってる人を見て無視して練習に戻れるようなタイプじゃない。
「ん?なに?」
「いや、背中なでたら楽になるかなって」
吐き気がないから正直撫でてもらわなくても大丈夫だけど、
「ありがと」
なんとなく気分がよくなる気がするから、いいか。
「無理するなよ?」
「うん」
「あとで大地さんに言うからな」
「え、それはやだ」
「ホントに倒れたら大変だろ」
「うーん、でも」
「却下」